第10話 6 バディとの友情

6 バディとの友情


 実は「バディとの友情」といっても、バディの仮面を剥がせばラブストーリーです。逆にいえば、ラブストーリーとはセックスの可能性がプラスされた「バディとの友情」ということです。


サブジャンル

 ペット愛:『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬』『名犬ラッシー 家路』『フリー・ウィリー』『ベートーベン』『黒馬物語』

 職業愛:『リーサル・ウェポン』『明日に向かって撃て!』『デッドフォール』『ラッシュアワー』

 ロマンティック・コメディ愛:『恋人たちの予感』『プリティ・ウーマン』『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』『ノッティングヒルの恋人』

 叙事詩愛:『タイタニック』『風と共に去りぬ』『トゥルーライズ』『ラスト・オブ・モヒカン』

 禁断の愛:『ブロークバック・マウンテン』『ロリータ』『招かれざる客』『ロミオとジュリエット』『青い珊瑚礁』『愛と青春の旅だち」「ダーティ・ダンシング』『美女と野獣』




【不完全な主人公】

 「バディとの友情」は肉体的、道徳的、精神的に何かが欠けている「不完全な主人公」の物語です。

 彼は完全になるために他者を必要とし、その人と接することで変わらなくてはなりません。

 他者が得られなければ比喩的に「死ぬ」しかないのです。


 相棒とは離れているより一緒にいるのがいいということをじょじょに理解していく「完成」についての物語なのです。

 多くのロマンスにおいてたいていは女性のほうが真の愛を知っていて、男性はまるでわかっていない。大きく成長しなくてはならないのも男生のほうです。




【片割れ】

 このジャンルでは、主人公の人生をいちばん大きく変えるのは他者です。

 「不完全な主人公」を揺さぶって停滞から完成へと変化をもたらす、あるいは三手打ち(三角関係の物語)、四手打ち(二組のカップルの物語)の場合は主人公(たち)が必要とする資質をそなえている、触媒として「片割れ」が存在します。


 「片割れ」はユニークでしばしば奇妙であることが多い。

 主人公が変化するきっかけを与えるバディ自身は変化したとしてもほんのわずかです。

 きっかけとなる「片割れ」が「不完全な主人公」の人生に影響を与え、去っていくパターンは、「バディとの友情」のなかでかなりの割合を占めます。


 「不完全な主人公」と「片割れ」双方が変わって成長するなら、その映画は両手打ちと呼ばれ、ふたりそれぞれにセット・アップがあり、それぞれの問題に枚数を割き、それぞれの結末があることになります。




【複雑な事情】

 「複雑な事情」は誤解でも、個人的あるいは道徳的視点でも、歴史的大事件でも、上から目線の社会批判でもいい。

 「複雑な事情」のエッセンスはつまるところ対立です。

 自分に必要な「その人」を見つけたことに気づいていない二人の間に起こります。


 「バディとの友情」を書くときには、必ず問題のカップルをスターティング・ラインからずっと遡ったところへ連れていってください。

 二人をできるかぎり引き離したところから始めて、できるかぎり多くの対立を盛り込むのです。

 ふたりが出会った瞬間から互いに憎み合わないことには、どこへも行きつけません。


 最初「バディ」はお互いを嫌っているが、旅をしていくうちに相手の存在が必要で、ふたり揃って初めて1つの完成した存在になることがわかってきます。

 そう気づいても、こいつがいなきゃダメだなんて思いたくもないと、新たな葛藤が生まれるのです。


 そしてどんな手を使ってでも、恋人たちを離れ離れにしておかなくてはならないのです。

 あまりにも違う道徳観から恋に落ちるには個々の中核を成す信念が変わらなくてはなりません。皮肉なことに、こうした事情こそが実はふたりを結びつけているのです。


 やがて結末が近くなると〝すべてを失って〟の瞬間がやってきます。

 連れ添ってきたバディと喧嘩になり、一時的に別れます。ただしこれは本当の別れではありません。

 お互いなくして生きていけないこと、お互いエゴを捨てて仲良くするしかないことを最終確認するためのきっかけなのです。

 そして最後の幕が下りるとき、二人は覚悟を決めるのです。


 「複雑な事情」にもう一人別の人物がかかわってくることもあります。

 このような三手打ちには三角関係の多くがそうであるように、間違った相手の下を去って正しい相手の下へ向かう物語があります。

 さらには二組のカップルを解剖する四手打ちなんてものまであるが、たいていの「バディとの友情」ものでは特別な他者がすべてです。




「小説の書き方」コラム

825.構成篇:ジャンル2:愛情・友情

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889417588/episodes/1177354054891932653


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【参考図書・引用図書】

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』菊池淳子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 『SAVE THE CATの法則』を使いたおす!』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2200円)

▼ブレイク・スナイダー氏『SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術』廣木明子訳・フィルムアート社(税別2000円)

▼ジェシカ・ブロディ氏『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』島内哲朗訳・フィルムアート社(税別2500円)

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