第22-3話
「久しぶりだね、莉緒ちゃん」
そう言って入ってきたのは【
職人クラスの保護を掲げて、職人クラスに属した女子生徒たちのパーティーを作り上げた、ある意味勇者の子。
その後ろからは
【
【
【
【
の4人が入っている。
そして最後に寮長の愛が入ってきて扉を閉めた。
「それで?彼女たちに用件って何?」
既に臨戦態勢の様子ね・・・・正直面倒な気しかしない・・
「ちょっと待ってね?」
そう言いながら私は防音の結界を張る。
がっくんほど優秀な物ではないけど、それでもこの小さな空間の会話を外に漏らさないようにする程度のことは私にもできる。
「これは・・・?一体?」
流石は愛だ。大手ギルドにも属し、彼女たちを保護するだけの実力は伊達ではないようだ。
陰陽師としての力を疑似的にしか持たない彼女にも私が何かをしたことを理解できたようだ。
「心配しないで頂戴。これは防音の結界よ」
「防音の結界?そんなものを扱う職業なんて聞いたことないけど?」
「それはそうよ・・そんな職業ないもの」
「どういうこと?」
「わかりやすく言うとね、私は生まれながらにして特殊な家の存在だってことよ」
「「「「「「!?」」」」」」
「おとぎ話にしか聞こえないだろうけど一応説明しておくわ。
私は陰陽師の家に連なる家の娘よ。
この学園には家が国からの依頼を受けて、家の指示で――任務で来ているわ。
尤も、本来の依頼は私が行うわけじゃ無いんだけどね?
でも私はその本来の任務を行う人のバックアップメンバーというところよ。
先行して私が入学して、情報収集などを担当していたのよ」
「・・・・前々から何か秘密を抱えていたとは思っていたけれど、とんでもない話を持ち出してきたわね」
「あら?信じてくれるのかしら?」
「逆に去年の段階で目を付けられる頃にはハイランカーの仲間入りとまで言われた存在の裏話を聞かされて納得できる話だと思えるものよ」
「そう・・・なら余計な説明を省けるだけ良いと思うべきかしらね・・」
「それで?その陰陽師の人が彼女たちに何の用かしら?」
「今年の新入生の中にその任務を本格的に請け負う人が入学してきてる。
ああ、別に年齢は詐称してないから本物の15歳よ?
けど実力は私よりも遥かに上。
今の段階でもおそらく学園で10本の指に入るでしょうけど・・・
アレをやれば簡単にトップに躍り出るであろう人よ」
「その人がなんなの?」
「簡単に言えばその人はギルドを作り上げて、より円滑に事を運ぼうとしてる。
そのバックアップメンバーとして桃花ちゃん達の力を必要としているってことよ」
「どういうことかしら?」
「「「「「!?」」」」」
愛は疑問、当人たちは驚愕しているようね。
「その人は早速、最初に組まされたメンバーを自分のパーティーとして考えて動き始めた。
そしてメンバーとなった人たちも全ての事情を把握したうえで協力する姿勢を見せているわ。
確かにダンジョンに潜ってステータスを上げていく・・・それだけでも強くなるでしょうね。
でも同時に装備もしっかりと整えて挑みたいと考えているのよ」
「なるほどね・・・それでその人に職人クラスを紹介しようって魂胆なわけね。
でもその人は信用できるの?」
「逆に訊くけど、本来は目的の為なら利用する程度の考えで接して、いいように使うのが私たちにとって一番楽なやり方。
そのやり方を放棄して、たとえ面倒でも事情の全てを話して協力してほしいって頼み込むやり方が信用できない・・・と?」
「わかったわ・・・私の方はそれで納得してあげるわ。条件も2つあるけどね。
でもこれは彼女たち自身の問題よ。
条件の1つに直接かかわるけど、それは彼女達自身が容認すれば・・・の話よ」
「勿論よ。無理に引きずり込むつもりは無いわ。それで桃花ちゃん達はどうかしら?」
「私は別に・・・桃ちゃんが良いなら」
と紫苑さんが言ってくる。
他のメンバーも同じようなことを言っていた。
そして当の桃花ちゃんが言ってくる
「私としては、私たちの力を必要と考えてくれるだけでうれしいと言えば嬉しいよ?
でも事は私だけの話じゃない。みんなの未来がかかってるかもしれない。
つまりこれは一種のビジネスの話だよ」
「そうね。それは分かるわ」
「なら単刀直入に言うけど、その人に協力するとして私達が得られるメリットは何?」
「1つはギルドを作成することによって職人クラスにとってはありがたい固定の拠点が得られるという事。
2つ目は別に装備を作ってもらったりすることだけを考えてるわけじゃ無いわ。彼は皆を強くすることも考えてる。
今までは愛の力しか借りられなかっただろうけど、これからは彼も私もあなた達の手助けを本格的にできるようになるわ。
3つ目は彼らが攻略してるエリアは天国門とは言えど一般的なエリアではないのよ。
それだけに貴重なアイテムとかそういうのが手に入る可能性があるわ」
「なるほどね。かなり美味しい話だけど逆に私達がすべきことは?」
「これは2つあるわ。
1つは言うまでもなく装備類を作り上げてほしいというのが目的。
2つ目は私たちの秘密をある程度守ってほしいというのが要求よ」
「・・・・うん、いいんじゃないかな?
一つ目は本来の目的通りの物だし、二つ目に関してもそれだけ特殊な立場なら秘密を守るのは当然だね。
それに各生徒が自分のステータスを秘密にしてる以上、それの延長線上だと思えば大した問題じゃない」
「それで・・・引き受けてくれるかしら?」
「うん。それだったらいいよ?それでいつ会えるのかな?」
「うーん、たぶん言えば明日にでも―「ちょっと待って!」―会えると・・何よ?」
「桃花ちゃん、そんなに簡単に決めて良いの!?」
「大丈夫だと私は思うな。莉緒ちゃんの事情を聞けば秘密にしたまま私たちを利用したほうが楽なのは確かだし。
なのに莉緒ちゃんたちは私たちを仲間にしようとしている。
ならその誠実さに応えても大丈夫じゃないかな?」
「・・・・・はぁ~、分かったわ。桃花ちゃんがそういうなら私も頷くわ」
「いつもありがとね、愛ちゃん」
「べ、別にいいのよ!私は私の為にやってるだけだし!」
思わずつぶやいてしまった。
「―――ツンデレ・・・―――」
「何か言った!?」
「別に~何も~」
「こんのぉ~~~」
「まぁまぁ・・・落ち着いて愛ちゃん」
話がある程度纏まったところで気になったことを聞いてみることにした。
「それで愛、条件の2つ目は何かしら?」
「ああ、それね。桃花ちゃんが断ればこの条件は無かったんだけど・・・
話は簡単で私もギルドに入れることよ」
「はぁ!?」
「何をそんなに驚いているのかしら?」
「驚くにきまってるでしょ。今のあなたが所属しているギルドのランクはBなのよ。
ハッキリ言って一流の一歩手前まで来ているのよ。
その所属を投げ出すっていうの!?」
「別に私としては少人数でも攻略が進めばいいと思ってただけなのに、周りがワイワイ騒いでいつの間にかなぁなぁでギルドに入れさせられてただけだしね。
それに私の考えとギルドの考えが最近は何かと対立してて色々面倒なのよね」
「そっちが本当の目的なんじゃないの?」
「なんですって?もう一回行ってみなさい、この女狐が」
「猪が吠えても怖くないわよ?せめて狼くらいにはなりなさい?」
「まぁまぁ二人とも落ち着いて?」
桃花ちゃんによる制止で口喧嘩は終わる。
ああ、愛がギルドに入ったらこれが日常になるんだろうな・・・
そんなことを思いながら私は日程調整を考えた。
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