3 鐘(前編)

 ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、……。

 六月五日午後ごご七時十九分。

 砂糖さとう銀行ぎんこうシアン支店してん附属校ふぞくこうで、開校かいこう以来いらいかねはじめてった。

 こえていると、まったく聞こえていない子がいる。


 鐘のの鳴るほうあしうごく。

 わたしは暗闇くらやみなか、附属校からした。


 ソーレたち、砂糖銀行いん水色みずいろとびらきわまでやってていた。

 そこへセラフ課長かちょうがわたしにこうげた。

「シロップに鑑定かんていしてしい魔術まじゅつ遺産いさんがある。

 地下ちか遺産課のおくの、遺体いたい安置所あんちじょに来てちょうだい」



 しろかぎ自分じぶん鍵穴かぎあな開錠かいじょうして、金網かなあみこうがわのオフィスに「勝手かって移動いどう」する。

(わたしだけ床面ゆかめんに鍵穴が出現しゅつげんするのは何故なぜだろう?)

 とりあえず、地下遺産課でのわたしの仕事しごとは、「鉱山こうざん小鳥ことり」とおなじ。

「魔術遺産のヤバイにおいをけてピーチクパーチク鳴け」ってことだ。


 遺体安置所へつうじる廊下ろうかひと出入でいりがはげしい。

 どうやら、遺体安置所近ちかくのいくつかのドアが転移てんい魔術でつながっているらしい。

 ルームプレートはおそらく、戦争せんそう名残なごり五鳩ごばと連合軍れんごうぐんかクレメント統領国とうりょうこく仕様しよう暗号あんごう表示ひょうじ

 あっ、また、ルームプレートがわった。

 <遺体の転移が完了かんりょうしました。とびらひらいてください>と自動じどうアナウンスまでながれる。あやまった転移事故じこきにくい設計せっけいになっている。

 実際じっさい、遺体だけを転移させているようだ。

 いくつかのドアが開いて、遺体収納袋しゅうのうぶくろごと一体いっったい一体はこび出されていく。

 一つ、ちいさくはないが、何故か違和感いわかんのある収納袋の「ひらたい感じ」が気になった。


「シロップ。

 戦時中じちゅうがっ校で軍訓練くんれんけていなかったんだって?

 空襲くうしゅう被災ひさい免除めんじょされていたのか?

 それなのに、魔術のセンスが良過よすぎるんじゃないか?」

 ソーレはあれから、「もとてき国の子」というよりは「地下遺産課のしん入り」として、やたらフレンドリーにはなしかけて来る。

ちち義肢ぎし職人しょくにんだったので、学校が父のお手伝つだいをするようにって。

 義肢職人見習みならいがそだっていなくて、子どもの手もりたがっていたんです。

 いろいろな魔術でんだ兵士へいしました」とアピールするのもいやだけれど、正直しょうじきにソーレに言うしかない。

 ついでに、「魔術遺産の被がいさい実験じっけんもしていた」とつけくわえておく。

「ということは、よりい義肢りのために、爆散ばくさんする兵士をなまで見たかったのか?」

 うなづくしかい。

 ソーレと話しているあいだに、遺体安置所のけ入れ準備じゅんびととのったようだ。

 遺体と、「鉱山の小鳥」の受け入れだ。

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