朝。ベッドに横たわったまま、彼の背中に手を伸ばす。私の指が届く前に、振り向いた彼が私の手を握った。おはようの代わりに「目、腫れすぎじゃね?」なんて、腹が立つったらまったくもう。

 彼の手から伝わるぬくもりが、体じゅうに広がっていく。思わず強く握り締めると、無言でそれに応えてくれた。

 窓から差し込む光が眩しい。

 彼の顔が、よく……見えない。


 涙の理由を聞かないでいてくれてありがとう。落ち着いたら、ちゃんと話すから。だから、もう少しだけ待っててね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る