マイブルーヘヴン

九頭見灯火

誓い

 キャロルが、死んだ。

 ナタリアの腕のなかで、彼女は息を引き取った。キャロルを寝かせた台のそばに、ナタリアは跪いて祈りを捧げる。

 合わせた両手のむこう。

 神様が、もしいてくれたならば、と。

 ナタリアは家を飛び出し、走る。

 農園を見渡せる丘の、ブランコの下。

 ナタリアは、かつてふたりだったときの記憶を呼び覚まして、埋められた木箱を掘り出した。

 土で汚れた木箱のなか。

 一枚の洋紙がふたりの誓いを思い出させてくれる。

 その健やかなるときも、めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?

 ふたりは誓ったのだ。

 イエス、と。

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