第6話 聞き取り調査


 2日目。朝。ドイツ。ミュンヘン。『ホフブロイハウス』。


 一階はビアホール。二階はレストラン。三階はショーフロア。


 といった形の16世紀からある、伝統的な店舗。観光名所の一つ。


 セレーナたちが訪れたのは一階。体育館ほどの広さのビアホール。


 開店して間もなく入ったため、客はまばらで、席は選び放題だった。


 座席は木の長テーブルと長椅子が並び、壁には肖像画が飾られている。


 天井には絵画が描かれ、幻想的で中世時代を感じさせる雰囲気があった。


「情報収集といきましょうか」


 両手を組み、切り出したのはセレーナ。


 テーブルには、大量の黒ビールが置かれている。


「魔術結社『イリーガル』の情報、でしたね」


 向かいに座るジェノは、合の手を入れる。


 ヴォルフが依頼した、報酬一億ユーロの内容。


 それは、ドイツで秘密裏に暗躍するオカルト集団。


 魔術結社『イリーガル』の足取りを掴んで、潰すこと。


 資金洗浄でゴタついたのは、どうやらこいつらの仕業らしい。


「それはいいけどよぉ。こんなビール集めてなにすんだぁ?」


 次に返事をするのは、フランク。


 フラケンシュタインみたいな見た目の男。


 ジェノの隣に座る、シュトラウスファミリーの組員。


 見たら分かるでしょ。なんて無礼で無粋なことは、言わない。


「ここは相席が基本。お客にビールを振る舞い、結社についてお尋ねください」


 やるからには、徹底的にやる。


 簡潔に、分かりやすく、趣旨を伝えた。


「……お前、頭いいなぁ。それなら、おでに任せろ」


「俺も行ってきます。タイムリミットはどれぐらいにしますか?」


 二人は両手一杯にジョッキを持ち、準備は万端。


 物分かりのいいジェノは、次の段取りを尋ねてくる。

 

 初めて出会ったあの頃に比べたら、格段に成長していた。


「リミットは二時間。キリのいいところで、再びここへお集まりください」


 これなら、なんの心置きもなく任せられる。


 さすがは、リーチェ様の弟子といったところね。


「了解! いってきます!」


「……あいつらの尻尾、掴んでやるどぉ!」


 そうして、始まった。魔術結社『イリーガル』の聞き取り調査が。

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