補足(一)

 これは七・八を除き、すべてわが精神病院の某患者がつむぎだした一種奇怪な物語で、そこに作家の朔之氏が手を入れたものである。なお、権利問題等においてしかるべき手順を踏み、ようやく出版にいたったことをここに記す。この場において某患者について簡潔に説明する必要性を、感じているのもあって、左記にもおおまかに某患者の略歴を記す。


 某患者は少年時より創作に親しみ、かねてより学生時代は成績優秀であった。すでにお察しの読者もいると思われるが、某患者は世界的有名な大作家である。

 某患者がこの病院に、入院するきっかけとなったのは、突如として某患者に総合失調症の疑いがかけられたからである。原因は不明であるが、症状が著しいため入院することとなった。


 そしてこの物語は、某患者がつくったもので、内容としては面白い点がいくつもある。登場人物がその例で、佐山と云う友人は某患者におらず、おそらくモデルが私である可能性が高いことや、三井は某患者の友人であり著名な詩人だが、女ではなく男であることがあげられる。また作者と主人公の境遇が異なる点も含まれる。

 なお、某患者は原稿を書き了えるや自殺した。死因は首を絞めたことによる窒息であり、目撃者によれば、笑いながら首を突然絞めたとのこと。

 某患者は、怪奇小説を好んで執筆していたようだが、この死はまさしく怪奇小説の一部のようであった。

      B精神病院院長・佐山祐平記す

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