第8話
グリザイユの世界。
それは僕がハマっていたゲームの一つだ。
内容を軽く言うと、ただの凡人である主人公と何故か主人公にだけ見える過去の英雄である勇者の亡霊が二人で協力してこの世界の闇に立ち向かっていくというストーリーである。
阿保みたいに増えていくストーリーに比例するように阿保みたいに増えていく敵。
犯罪組織から、領土欲丸出しの帝国に、復活した魔法……果てには現代地球からやってきた侵略者等。
その敵の種類は本当に雑多である。
「……あー、マジかァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア」
自分がやっていたゲームに転生したことは素直に喜ばしいことと言えるかもしれない。
触れることも、会話することも出来なかった二次元の嫁に出会えるわけだし……いや、やっぱりなしだわ。
普通は世界を揺るがすほどの難敵なんていないのだ……割と現実世界の方でも核だのコロナなど食糧不足に水不足、第三次世界大戦の危機などまぁまぁ、世界破滅クラスの厄ネタが転がっていたような気もするが、この世界はその比じゃない。
確実に物語の締めとして主人公が倒すのにふさわしく、何度もリテイクしなければ勝てない難敵がいるわけで、そしてゲームの世界を盛り上げるために数多くの困難と敵がいるわけだ。
はたから見る分に良いが、実際にその世界を生きるとなると最悪だ。
定期的に地球が消えるド〇ゴンボールの世界だとか海賊がうじゃうじゃいるワ〇ピースの世界に転生とか誰でも嫌だろう?
「というか……うちの国ってば帝国やん。領土欲むき出しにして戦禍を広げ、最終的に主人公の手によって滅ぼされてちゃう帝国やん。ロニアとか帝国編のラスボスとして登場する天才王子やん。よく考えてみればめちゃくちゃロニアにもお姉さまの名前にも既視感あったやん……いや、でもこれは気づけんやん」
僕は一人でぶつぶつと不満を口にしながら項垂れる。
ゲームの世界に転生したってだけでも結構な萎え要素なのに、更に加えて僕が転生したのはゲームの中に出てくる悪役……ぶち殺されることが確定しているキャラである。
なんたる罰ゲームか。
「……マジかぁー、マジ……すぅー、マジかァァァァァァアアアアアアアアアア」
七年間の拘束期間を終え、ようやく僕の異世界生活が始まる!そう思った矢先……僕は早速ドデカい壁にぶち当たり、目の前が真っ暗になるのだった。
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