第5話 元貴族の冒険者、初めての依頼を受注する

 受付女性が持ってきた依頼・・・、

 それは『宿屋の掃除』に『牧場の見回り』、

 そして、

『児童保護施設での雑用』だった。


 クリスが依頼書を一枚一枚確認していると、

 横からユキも顔を近づけてきた。


(読めている・・・わけじゃないよね)

 だって白狼ワンコだし・・・


「特にクリスさんにおすすめなのは、

『児童保護施設での雑用』ですね」

 と、受付女性が補足を入れた。


「児童保護・・・、

 孤児院の事ですか?」

 聞きなれない言葉だったので、

 クリスは質問してみる。


「はい、身寄りのない子供たちを養う施設という意味では一緒ですね」


「どう違うんですか?」


「厳密には教会などが寄付によって無償で行っているのが『孤児院』、

 貴族や商人の方々が人材育成などの目的で運営しているのが『児童保護施設』というわけです」


「・・・」

 選択肢のない子供たちを自分の利益のために・・・、

 などと不快に思うほどクリスは単純ではなかった。


 施設にも寄るだろうが、

 それで子供たちが生きていけるのならいいじゃないか。


 かつて屋敷で、

 父に追い出された奴隷たちを思い出しながらクリスは思った・・・。


「分かりました。

 具体的な内容は・・・、

 施設内の見回りに掃除や買い物、

 空いた時間で子供たちの面倒を見たり・・・と。

 要は孤児院のシスターのような役回りですね」

 依頼書を見ながらそう判断した。


「そうですね。

 ちなみに、依頼主は冒険者さんの人となり次第では、

 住み込みでのお仕事を希望されています」


「え・・・?」

 クリスはびっくりして、

 受付女性を見た。


 住み込みでの仕事・・・。

 それは家を追い出され、持ち合わせも乏しいクリスにとって

 破格の条件であった。


 もしかして彼女は、

 それを察してこの依頼を自分に・・・?


「ありがとうございます・・・!」

 思わず感謝の言葉が口から出た。


「あら、何のことでしょうか。

 私はクリスさんが掃除や洗濯が得意と言われていたので、

 それに適したご依頼を紹介しただけですよ」

 受付女性は微笑んだまま、そう答えた。


「はい・・・」

 そんなわけがない・・・。


 改めて見れば、

 他の二つの依頼も寝床と食事が保証されたものだった。


(すごいな・・・)

 これがプロの仕事ぶりなんだ・・・。


「では、

 この『児童保護施設での雑用』のご依頼を受注という事でよろしいですか?」


「はい、

 よろしくお願いします」

 クリスがそう言うと、

 受付女性は手早く必要書類を作成し、

 そのうちの一枚をつつと共にカウンターに置いた。


「では、受注書を。

 こちらをご依頼主の方にお渡しください」


「はい、

 ありがとうございます」

 クリスは受注書を筒に入れると、

 バッグの中にしまいこんだ。


 そして、


「行こう、ユキ!」


「ウォフ!」


 クリスとユキのは受付を後に・・・


「あ、ちょっと待ってください」

 ・・・しようとしたところを受付女性に呼び止められた。


「え、何でしょう?」


「何でしょうじゃありません。

 とも、その恰好のまま行かれるつもりですか?」


 言われてクリスは、自分の服とユキを見た。


 どちらも相当な土汚れだった。


(そういえば、

 河原での戦いの時地面に倒れこんで、

 水浴びもせずにそのままだった・・・。)


 確かにこの恰好で依頼主に会ったら、

 門前払いになるのは目に見えている。


(でもどうしよう・・・。)


 大衆浴場に入る余裕もないし、

 それ以前に白狼のユキを連れてそんな風呂施設を利用できるわけもない。


(こうなったら、

 表にある噴水に飛び込んで・・・)

 などと危ない選択をしかけているクリスに、

 受付女性は言った。


「ギルドの裏に井戸がありますので、

 そこで汚れを落としてきてください」


「ありがとうございます!」

 思わず拝むように礼を言ってくるクリスに、

 受付女性は苦笑を浮かべた。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 井戸だけでなくギルドの裏は、

 簡単な訓練用の広場として使われている。


 昼前のこの時間、

 稽古やリハビリにいそしむ冒険者たちの姿がちらほらと見える。


 そんな中、

 井戸の前でわずか数十分で水浴びと洗濯・乾燥を終わらせたクリスとユキ・・・。


 自覚はなくても十年前から『研磨けんま』のスキルで続けた洗濯技術である。


 ちなみに、乾燥はユキに服をくわえてもらい、

 ブンブンと高速で振ってもらう事で短縮できた。


 そのまま広場をあとにする奇妙なコンビ・・・。


「何だありゃ・・・」

 広場にいた冒険者たちは、

 それを唖然として見送った。


【つづく】



 _______________


 読んで頂き本当にありがとうございます!

 そして・・・、


『何かコメントをいただけませんか!?』


 下にございますコメント欄にて、

 皆さまの閃いたコメントをお贈りください・・・!

 一言だけで良いのです!

『い』とか、『ろ』とか、『ッ!』とか・・・。


 それをヒントに物語を構築していきますので。


 この作品は皆さまのコメントだけが頼りです!


 それなくしてこの物語は成り立たないのです!


 どうかよろしくお願い申し上げます・・・!


 ・・・というお願いも先日しておりました。


 おかげさまでそれにもコメントを頂き、

 本当にありがとうございました!


 基本、最新話でコメントによるアイデアをお願いしておりますので、

 どうぞよろしくお願いします!















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