通話（スマホ）編

//◯自宅・自室（夜）

//：相手　なし（独り言）

//：位置　（１）

//：演技　弱り果てる

「……」//ため息

「おとんが迎（むか）えに来（き）てくれたさかい、なんしか帰（かえ）ってはこれたけど……服装（ふくそう）のこと難癖（なんくせ）つけられてもうて、踏（ふ）んだり蹴（け）ったりやなぁ」

「いつもやったらモヤモヤしてるときこそ配信（はいしん）すんねんけど、そない気分（きぶん）になられへんな」

//：ＳＥ　スマホ通話着信音

//：演技　警戒

「うわっ。知（し）らん電話番号（でんわばんごう）からや。誰（だれ）やろうか」

//：演技　思い浮かぶ

「交番（こうばん）で電話番号（でんわばんごう）書（か）いたさかい、その関係（かんけい）かもわかれへんな。出（で）てみよ」

//：演技　スマホの画面をタップ

//　以降、スマホに向かって話す（通話）

//：相手　スマホのマイク

//：演技　緊張

「はい」

「……」//あいづち

//：演技　気が抜ける

「なんや、あんたか」

//：演技　不信感を抱く

「電話番号（でんわばんごう）伝（つた）えてへんのに、なんで知（し）ってるん？」

//：演技　苛立つ

「あのヒト、なんで勝手（かって）に伝（つた）えるん……最悪（さいあく）や。用（よう）あれへんさかい電話（でんわ）切（き）るで？」

//：演技　激怒

「うちは一生（いっしょう）あんたに用（よう）あれへん！　もう掛（か）けてけえへんといて！」

//：演技　苛立つ

「うちが怒（おこ）ってる理由（りゆう）わかれへん？　あんたに助（たす）けて言（い）うたやんな？　ほんまに困（こま）ってるときに助（たす）けてくれへんヒトなんて好（す）かん！　裏切（うらぎ）られてるのと同（おな）じやさかい、関（かか）わりとうあれへん」

//：演技　冷たく突き放すように

「今更（いまさら）何（なに）言うても遅（おそ）いわ。言（い）い訳（わけ）なんて聞（き）きたない」

//：演技　感情的に訴える

「一人（ひとり）になった後（あと）、追（お）い回（まわ）されてめっちゃ怖（こわ）い思（おも）いをしてんで？」

//：演技　思い出しておびえる

「見（み）とったんなら助（たす）けてや……ほんまに怖（こわ）かってん。もし交番（こうばん）に着（つ）くまでの間（あいだ）になんかあったら、誰（だれ）がうちを助（たす）けれた？　あのとき、あんたしか頼（たよ）れるヒトおれへんかったのに……あんたはうちを見捨（みす）ててん」

//：演技　怒る

「うちを見捨（みす）てるヒトを好（す）くことは絶対（ぜったい）にあれへん。そんなんするヒトと話（はな）すことあれへんさかい切（き）るで！」

//：演技　スマホの画面（通話終了）をタップ

//：相手　なし（独り言）

//：位置　（１）

//：演技　脱力

「……」//大きいため息

「疲（つか）れたぁ……ほんま散々（さんざん）な一日（いちにち）やわ」

//：ＳＥ　スマホメッセージ着信音

//　以降、スマホの画面を見ながらつぶやく

「『突然（とつぜん）電話（でんわ）してかんにん』って、あいつやな」

「『この記事（きじ）読（よ）んで』？　ＵＲＬ貼（は）るのは親切（しんせつ）やなしに要（い）らんおせっかいや言うたやろ」

「……」//見るか悩む

//：演技　スマホの画面（ＵＲＬ）をタップ

//　以降、記事のため標準語表記

//　イントネーションは関西で

//：演技　見出しを読み上げる。

「『駅（えき）で盗撮（とうさつ）　自称（じしょう）配信業（はいしんぎょう）の男（おとこ）ら三人（さんにん）を逮捕（たいほ）　撮影罪（さつえいざい）適用（てきよう）』」

//：演技　無意識に口から溢れる

「あのヒトら逮捕（たいほ）されたんやな」

//：演技　スマホの画面（動画）をタップ

//　記事の動画を再生

//：ＳＥ　動画：走る足音（男）

//　少し間（動画閲覧）

「……」//驚く

//：演技　我に返る

「この動画（どうが）、誰（だれ）が撮（と）ったんやろ？」

//　記事の読み上げ　ここから

「提供（ていきょう）された動画（どうが）には、執拗（しつよう）に追（お）い回（まわ）す様子（ようす）の一部始終（いちぶしじゅう）が収（おさ）められていた。撮影者（さつえいしゃ）の男性（だんせい）によると、帰宅（きたく）するため彼女（かのじょ）と別（わか）れた直後（ちょくご）、複数人（ふくすうにん）で追（お）い回（まわ）し始（はじ）めたため、危険（きけん）を感（かん）じスマホのカメラで撮影（さつえい）しながら追跡（ついせき）したという」

「……」//考える

//：演技　確信

「『撮影者（さつえいしゃ）の男性（だんせい）』って、あいつのことやんなぁ」

//　記事の読み上げ　再開

「逮捕（たいほ）された男（おとこ）らは、その様子（ようす）を生配信（なまはいしん）していたという。男性（だんせい）から連絡（れんらく）を受（う）けた警察（けいさつ）は、男（おとこ）らの容疑（ようぎ）が固（かた）まったとして現行犯（げんこうはん）逮捕（たいほ）しました」

「撮影罪（さつえいざい）に詳（くわ）しい弁護士（べんごし）によると、当該映像（とうがいえいぞう）が撮影罪（さつえいざい）によりできたものと知（し）りながら記録（きろく）する行為（こうい）は、三年以下（さんねんいか）の懲役（ちょうえき）または三〇〇万円以下（さんびゃくまんえんいか）の罰金（ばっきん）が課（か）せられるという」

「警察（けいさつ）は、容疑者（ようぎしゃ）が動画（どうが）を第三者（だいさんしゃ）に提供（ていきょう）した疑（うたが）いもあるとみて詳（くわ）しく調（しら）べています」

「男性（だんせい）は、当該映像（とうがいえいぞう）を元（もと）にした動画（どうが）や画像（がぞう）を確認（かくにん）次第（しだい）、法的措置（ほうてきそち）も含（ふく）め厳格（げんかく）に対応（たいおう）すると、厳（きび）しい姿勢（しせい）で対処（たいしょ）することを明（あき）らかにした」

//　記事の読み上げ　ここまで

「……」//後悔

//：演技　スマホの画面（発信）をタップ

//：ＳＥ　スマホ通話発信音

//：演技　うしろめたい

「記事（きじ）読（よ）んだ」

「うちが知（し）れへんとこで助（たす）けてくれとったんやな……酷（ひど）いこと言うてかんにんな！」

//　少し間

//：演技　懇願

「ケジメつけたいさかい、罪滅（つみほろ）ぼしさしてほしい！」

「……」//あいづち

//：演技　元気なく

「そら嫌（いや）や。謝（あやま）るのはうちの自己満足（じこまんぞく）やさかい、あんたが望（のぞ）む罪滅（つみほろ）ぼしをせなあかん」

「……」//あいづち

//：演技　おだやかに（なげやりではない）

「してほしいこと思（おも）いついたら言（い）うて。違法（いほう）なことはでけへんけど……うちにできることやったらなんでもするし。ちゃんとしとかな気（き）ぃ済（す）めへん」

「……」//あいづち

「罪滅（つみほろ）ぼしも自己満足（じこまんぞく）や言（い）われたらそうなんやけど……どないするかは、あんたに委（ゆだ）ねるわ」

「……」//あいづち

「ほんまになんでもええ。うちが全面的（ぜんめんてき）に悪（わる）いさかい、なんでも受（う）け入（い）れる」

「……」//あいづち

「困（こま）ってるときに助（たす）けてくれたヒトをどう思（おも）うか？」

//：演技　恥じらう

「そんなん、好（す）きに決（き）まってるやん」

//：演技　ぼそっと

「うちのヒーローやし」

//：演技　困る

「んー……恋愛感情（れんあいかんじょう）とはちゃう。せやけど、あんたが望（のぞ）むんやったら、付（つ）き合（お）うたってもええで？」

//：演技　ツンツン

「うちが望（のぞ）んでるわけちゃう。罪滅（つみほろ）ぼしやなかったら断（ことわ）るし。あんたをそういう目（め）で見（み）たことあれへんさかい、急（きゅう）にそういう目（め）では見（み）られへん」

//：演技　困る。ぶつぶつと

「付（つ）き合（お）うた後（あと）どないなるか？　そんなんはあんた次第（しだい）としか言（い）われへん」

//：演技　ぼそっと

「未来（みらい）がどないなるかなんてわかれへんし」

//：演技　不安

「自分（じぶん）で言うのもあれやけど、うち独占欲（どくせんよく）強（つよ）いし、嫉妬深（しっとぶか）いし、わがままやし……ほんまじゃまくさいさかいやめといた方（ほう）がええ思（おも）うで？」

//：演技　ぼそっと

「付（つ）き合（お）うたことあれへんさかい、何（なに）したらええかわかれへん」

「……」//あいづち

//：演技　不服

「そら、アクセサリーとしてやったらええかもわかれへんけど……」

//：演技　ぼそっと

「うちが構（かま）うてほしなるし、もんもんとしてまうさかい嫌（いや）や」

//：演技　恥じらう

「そんなん言（い）われても、うちが離（はな）れとうのうなんねん！　くっついとったくなる」

//：演技　苛立つ

「さっきから何言（なにい）うてるん？　好（す）きになるつもりがあれへんのに、こんなん言（い）うわけあれへんやろ！　どないするかをあんたが決（き）めてええ言（い）うてるだけや」

//：演技　不安

「話（はなし）がかみ合（お）うてへんな」

「もし遊（あそ）びやとしても罪滅（つみほろ）ぼしとして受（う）け入（い）れるさかい、それやったら期待（きたい）させんとはっきり言（い）うてほしい。どないしてもうちのこと許（ゆる）されへんさかい裏切（うらぎ）って壊（こわ）したいって言（い）うんやったら、そらしゃあない思（おも）て受（う）け入（い）れるし」

//：演技　嬉しそうに

「わかった。信（しん）じる。本気（ほんき）にさせたんやさかい、どうなっても知（し）れへんで？」

//：演技　ぼそっと

「うちめっちゃ嫉妬深（しっとぶか）いし」

「せやけど、疑（うたが）ったりはせえへんさかい、扱（あつか）いやすい思（おも）う。しゅきぴのことは何（なに）があっても一〇〇（ひゃく）パーセント信（しん）じるし」

//：演技　ぼそっと

「もし裏切（うらぎ）ったら何（なに）があっても信（しん）じへんくなるし、ブッ転（ころ）がす」

「……」//あいづち

//：演技　淡々と迷いなく

「うちは裏切（うらぎ）ることあれへんよ？　もしもなんてあれへん」

「……」//あいづち

//：演技　可愛らしく

「そら、うち自身（じしん）のことやさかい、言（い）い切（き）れて当然（とうぜん）やろ」

「……」//あいづち

「真意（しんい）？　一度（いちど）しか言（い）えへんで」

//：演技　ニコニコ

「うちは一貫（いっかん）して、うちの期待（きたい）を裏切（うらぎ）らんといてとしか言（い）うてへんやろ？　裏切（うらぎ）りっちゅうのはな、味方（みかた）に対（たい）してする行為（こうい）。裏切者（うらぎりもん）に対（たい）してするのは制裁（せいさい）や。あんたが裏切（うらぎ）れへんかぎり平和（へいわ）に過（す）ごせるっちゅうこと」