第3話 私の友達はやばい

私の友達Tはけっこうやばいやつだ。

前映画を一緒に見に行ったとき、私が夢中で映画を見ているのに対して、友達Tは隣の人のポップコーンを凝視していた。隣の人はポップコーンが欲しいんだと思ったのか、ポップコーンを一つ分けてくださった。なんていいやつなんだ、隣の人。だが横に彼女のような人がいた。(別に狙おうと思ったわけでもない)

そしてお前はなんてやつなんだ、T。

映画が終わって劇場から出たときに、さすがに怒らねばと思い私はこういう。

「ポップコーンほしいからって隣の人に迷惑かけちゃだめでしょ。圧かけすぎだから」

「…え?」

心当たりがないとでもいうつもりか、T。だが私は見たぞ!となりのおにーさんにポップコーンを渡されたとこを!

「ポップコーンめっちゃ見つめてたじゃん!わざとだろ!」

少し考えるそぶりをし、Tはあぁ、といった。

「あの人さ、生命線が長かったの」

「……………は?」

「だから、生命線が長かったの!」

いや、わからんて。

「え、その生命線が見たくて………?」

何をいまさら、というようにTはうなずく。

「じ、じゃあ見てたのってポップコーンではなく手…?」

「だからそういってるじゃん」

Tははなをふんっと鳴らした。

Tよ、お前はなんてやつなんだ。(デジャヴ)



こんなエピソードはほかにもあった。

まえ、Tと二人で温泉に行った時のことだ。

浴場内に、石鹸の欠片が散らばっていた。

たぶん誰かが落としてしまったんだろう。落とすのは仕方ないとして、片付けろよ。

その様子をTが見ていたので、まさかこいつが…と思い、聞いてみた。

「これやったの、T?」

「違う」

まぁ、そうだろうな。こっちも試しに聞いただけだし。適当に相槌を打って終わらそうと思った。その時だった。

「私はちゃんと片づけたから」

ふいに言われた言葉が、私を唖然、とさせた。じゃあ落としてはいるのかよ。

「は…?え、T、おめー前にも落としたってことか!(小声)」

「え、まえにもっていうか、一回だけだけど…ここのおんせんの石鹸、異常に滑るんだよね。だから今回の人も落としたんだと思うよ。

でも私は片付けたから、その点ではこの人より上だね、えっへん」

なにをいばってるんだ。落としたのはおまえもじゃろがい。

「ていうか、片付けた後どうしたの」

「え?普通にシャワーして…あ、シャンプーして…」

本当にあきれる。Tは真の天然なのだ。いや、ただのあほかもしれない。

「違う違う違う。ゴミをどこに捨てたのかって」

「使える部分は使ったけどねー。余ったのはそこら辺にあったゴミ箱だよ。」

「使ったのかよ」

「うん」

でもそんなに滑る石鹸も気になる。今度触ってみようかな、いやだめだ。また被害が増えてしまう!

他の石鹸を滑らせたものたちも、こういう好奇心で触ってみたんだろうか。

この現象を、私は「好奇心の連鎖」と名付けた。(普通過ぎ?)

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