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  • 第ニ話、が付いてます。

    「また、増やしたのか」

     ギルマスがギルドの会議室で初対面のノアを顔を見て呆れながらソルトに話す。

    「はあ、それは話の流れで……」

    「まあな、俺もゴルドにある程度は聞いた。でも、コレが本当にそうなのか? まあ、お前の変わり様を見れば本物としか言えないか」

    「俺も信じられないんですけどね」

    「そうか。じゃあ、面倒だとは思うが、一通り話してもらえないか」

    「ゴルドさんに聞いたんでしょ?」

    「聞いた。確かに聞いた。だが、聞いただけじゃ分からない話もあるだろ。それに本人に聞くのが一番だ。って、訳でソルトと新しいお嬢さん以外は帰っていいぞ」

    「え~ちょっと待ってよ。私達だって聞きたいことがあるんだし、いいでしょ」

     レイがギルマスに不満を漏らす。


    「ちょっと、レイ。聞きたいことって何? 私達にも関係あること?」

    「あるわよ! 大ありよ!」

     エリスがレイに確認すると、ソルト達に関係することをノアから聞きそびれているという。


    「何かあったか?」

    「あったかじゃないでしょ! ノアが言ってた『アイツ』のことを聞いてないじゃない!」

    「『アイツ』って?」

     ソルトがレイに聞き返す。

    「あ~ソルトまで忘れている! ノアが言ったでしょ! 『アイツに頼まれた』って」

    「そう言えば、そんなことを言ってた! しかし、レイもよく覚えてたな」

    「ふふん、少しは見直してもいいのよ?」

    「そこまではないけど、ノア教えてくれるか?」

    「もう!」

     ソルトにそう言われて剥れるレイを放って、ノアに話すように促す。

    「アイツのことって……ソルトはそんなに気になるの?」

    「ああ、気になる。なんでノアにそんなことを頼んだのか……な」

    「もう、そんなに気にする仲じゃないわよ。会ったのもその時の一回だけだし」

    「ん?」

    「え?」

     ソルトとノアの会話が中々噛み合わないのに痺れを切らしたレイが割り込む。

    「ノア、いいから。その『アイツ』って奴のこと教えてよ。ほら、何か特徴とかあるでしょ。例えば、耳が尖っているとか、色が黒いとか、尻尾が生えているとか、何かあるでしょ?」

    「そうね、そう言われてみれば……それに羽が生えてたわね」

    「おい! それって……魔族じゃないのか?」

     ギルマスがノアに聞き返すとノアが答える。

    「うん、そう言ってたわ」

    「何! それは本当か!」

    「へぇ、魔族っているんだね」

    「ソルト、何を言ってるんだ? 相手は魔族だぞ」

     ギルマスにそう言われるが、ソルトとしては会ったこともないし、見たこともない。だから、ソルトはギルマスに自分の考えを話す。

    「でも、俺はほら、異世界人だからね。『魔族だから悪い』って言われてもね」

    「そう言うが、現に地脈に魔素を注入させて、魔の森を危険な状態にしてたんだぞ。危険視するには十分だろう」

    「そうだよね。でもさ、それも理由があってやったことかも知れないし。だから俺としては一度会ってみないことには分からないよ」

    「私も!」

    「しかしだな……」

     ギルマスがソルト達の考えが理解出来ずに説き伏せようとするが、ゴルドに止められる。

    「ギルマス、ソルト達のことは放っておこう。それで、ノア。そいつにはどこで会える? 名前は?」

    「さあ、名前は言ってたかも知れないけど、忘れたわ」

    「さあって……お前もよくそれで加担する気になったな」

    「そうね。私も不思議に思うわ。それにあの頃はいつ死んでも構わないって思っていたしね。でも、そんな私をソルトが救ってくれたのよ! やっぱり、これは運命なのよ!」

    「運命ね……まあ、中の中まで見せるなんて、確かにそうないでしょうけど、それで運命って言うのもちょっとね」

    「ちょっと、レイ! 止めなさい!」

     ノアの顔が急激に赤くなり俯くが、すぐに顔を上げると、レイを睨み付ける。

    「なんとでも言えばいい。もう私とソルトを妨げることは出来ないんだから。そうでしょ、ソルト!」

    「え、そうなの。まあ、離れられないってのは合ってはいるけど、ちょっとニュアンスが違うかな」

    「何よ! 何も違わないじゃない!」

    「ノア、落ち着け。第二夫人としての振る舞いじゃないぞ」

     ノアがサクラに注意されるが、サクラの言葉に受け入れられないことがある。

    「第二夫人? どうして、私が第二なの?」

    「それは私が第一夫人だからだ。契約は私が最初だからな」

    「なら、私は「はい、落ち着こうね」……ぷはっ、エリス!」

    「焦らないって約束したでしょ。こういうのはタイミングも重要なのよ」

    「そうです! 私の計画でもあるんですから!」

     ノアとサクラに対抗して何かを口走ろうとしたレイをエリスとリリスでレイの口を押さえて止める。


     ソルトの耳にも色々と不穏な言葉が入ってくるが、今は気にしなくてもいいだろうと判断し、ノアに話を続けさせる。

    「どうやったら、その魔族に会えるかな?」

    「さあ?」

    「さあ……か。まあ、そうだよね。じゃあ、ググってみるか」

    「ググって分かるの?」

    「多分、分かるんじゃないかな。じゃあ……」

    『はい、分かりましたよ。場所はココです』

    「ありがと。場所は分かりました。地図はありますか?」

     ソルトがそう言うとギルマスが棚から地図を取り出し、広げる。


    「魔族の場所はココです」

    「ここは……」

    「ギルマス、ここって……」

     ソルトが指差した場所をギルマスとゴルドが確認する。互いに指した場所がどこなのかを理解しているようだ。ちなみにその場所は魔の森を抜けた先にある魔族領のなかだった。

    「まあ、そうなるだろうな」

    「ここに行かないと分からないか」

    「じゃあ、行きましょうか」

    「「え?」」

     場所が分かり、そこが魔族領だとギルマス達の口から教えられると、ソルトは飄々とそこへ行くと言う。

    「お前、正気か?」

    「だって、そこにいるんでしょ。それなら、そこに言って本人を探して、どうしてこんなことをしたのか聞きたいじゃないですか」

    「ソルトには危機感って言葉はないのか?」

    「多少はあると思いますけど、今はとりあえず知りたいことを知りたいと思う好奇心を大事にしたいと思ってますよ」

    「だけどな~」

     ゴルドが頭を掻きながら何かを言いたそうにしているので、ソルトが聞いてみる。

    「ねえ、魔族と直接何かあったの?」

    「そう言われても……」

    「ないんですね?」

    「ああ、ない」

     ギルマスとゴルドが顔を見合わせると、そう答える。


    「今まではどうなんです? ほら、魔王の侵攻とか?」

    「大昔にはあったらしいが、最近というか、ここ何百年は聞かないな」

    「それで、魔族が悪いって思い込んでいるの?」

    「ああ、そうだな」

    「もしかして、魔族に対するネガティブ・キャンペーンとかあるのかな?」

    「なんだ、そのねがてぃぶ・きゃんぺーんってのは?」

    「ああ、要は個人とか、団体が『アイツは悪い奴だ!』って追い込んでいるのかってこと」

    「なんだ、そのことか。それなら、発信元は教会だな」

    「ああ、そうだな。教会の連中が『魔族は悪い』『魔族は怖い』『魔族は信じられない』って感じでな」

    「え~教会は信じないとか言ってるくせにそういうのは信じちゃうんだ」

    「言うなよ。子供の頃からそうやって刷り込まれたのは中々消えないんだって」

    「じゃあ、会ってみれば分かるね」

     ソルトがにこやかにそんなことをゴルドに言う。

    「やっぱり、俺も行く流れか。もう、人も増えたし俺が面倒見る必要はないと思ったんだけどな~」

    「じゃあ、ノアの登録と装備を揃えてから、訓練とか済ませてからだから……一月後くらいでいいかな」

    「ああ、分かったよ。もう、ソルトの気が済むまで付き合ってやるよ」

    「うん、ありがとうね。ゴルドさん」





    第2話 話は聞かせてもらいました

     ノアの冒険者登録を済ませた後にリリスに金貨を入れた革袋を渡してノアの服や下着などの日用品からベッドに装備品などの一通り買い揃えるように頼む。

     サクラ、カスミは用心棒として、ショコラとコスモにはそれと荷物持ちを頼む。

    「あ、木工屋でボードの注文も忘れずにね」

    「はい! お任せ下さい。では、行きますよ!」


     リリスに引っ張られ、お買い物へと出掛けるリリス達を見送りソルト達が屋敷に戻った時、ソルトが何気なく庭で遊ぶ子供達を見る。

    「なあ、なんとなくだけど子供達の数ってさあ、こんなに多かったかな? 見た感じだけでも三十人はいるよね?」

    「え? エリス、言ってないの?」

    「え? 私はレイが言っているものとばかり思っていたけど?」

    「え? 二人とも知っていたの?」

    「うん」

    「ええ」

    「え~どういうことなの」

    「まあ、詳しい話は中に入ってからにしない?」

    「そうね。ソルト、ほら」

     子供達が増えた原因を話すからとレイ達に言われるままにソルトが屋敷に入ると、獣人の数も増えていることにも気付く。

    「えっと、どゆことかな?」

    「何、レイ達はソルト君に話してなかったの?」

    「ティア! 君は何か知っているのか?」

    「知っているも何も私が呼んだから」

    「え?」

     ティアの言うことが理解出来ずに固まるソルトにレイが補足する。

    「ほら、ティア達も難民だったでしょ。で、同じ様に難民になった獣人達がティア達を頼って来た訳よ」

    「なら、俺に一言言ってくれても……」

    「言おうと思ってもソルト君て、いつもいないじゃない。だから、レイ達に相談して許可をもらったのよ。ダメだった?」

    「いや、それはいい。困ってるのを放り出すのは無理だし」

    「ほらね、ソルトならこう言うと思ったのよ。ね、私の言ったとおりでしょ!」

     得意げに話すレイを呼んだソルトは自分の横に座らせると頭を撫でる。

    「えへへ……い、痛いよ? ソルト?」

     ソルトはレイのこめかみを両手でグリグリと挟み込む。

    「屋敷を不在しがちな俺も悪いと思うが、何も報告しないお前も悪いよな!」

    「だ、だから言ったじゃない!」

    「今な! 『ホウ・レン・ソウ』は大事だと習わなかったか?」

    「そ、そんなこと言われても……うう、ごめんなさい」

     レイが謝って、ソルトのグリグリから解放される。

    「獣人の難民については分かった。じゃあ、子供達が増えたのも同じなのか?」

    「子供達は違うわよ」

     ソルトの問いにエリスが答える。

    「違うって、どういうこと?」

    「そうね、これはソルトの責任とも言えるわね」

    「え?」

     エリスの言葉にソルトがドキッとする。

    「俺の責任?」

    「ええ、そうよ。ほら、『聖魔法』を使える人を増やすって計画があったでしょ?」

    「ん? ああ、そう言えばそんなことをギルマス達と計画したね……って。もしかして?」

    「そうよ、あの子達は教会の孤児院から逃げたり、放り出された子供達を守備隊の人が保護したらしいのよ。それでギルマスに相談したら、ここに保護した子供達がいるから、ソルトに任せろって、ギルマスが言ったらしいのよ」

    「ギルマス……」

     ソルトの怒りの方向がギルマスに向かうが、結果的には屋敷に連れて来てくれたのでヨシとする。

    「ダメなの?」

    「いや、ダメじゃないよ。保護して正解だよ。俺からも礼を言うよ。ありがとう」

    「そんな、礼だなんて……」

    「ちょっと、おかしいじゃない! 私にはあんなことして……エリスには何もお咎め無しなの!」

     ソルトから罰を受けないエリスに対し、レイが憤慨する。

    「ああ、もう怒る気がないからね。それで、部屋は足りているの?」

    「そこはギリギリね」

     ティアが言うには、小さい子供達はいくつかの部屋を複数人で使っているが、大人組は同姓同士で詰め込む形になっていると説明を受ける。

    「じゃあ、家が必要だな。回りの土地が空いてれば一番いいけどね」

    「あら? それも聞いてないの?」

     ソルトがそんなことを呟くと、エリスがまた不穏な言葉を口にする。

    「エリス、『聞いてない』って何?」

    「ほら、商業ギルドの詐欺があったでしょ」

    「ああ、あったね」

    「あの後にね、正式な賠償として、この屋敷の周りを気持ちよく提供してくれたのよ」

    「回りの土地?」

    「そうよ、だから家なら何軒でも建てられるわよ」

    「ちょっと待って! それって何時の話?」

    「あの騒動の後は確かだけど、何時だったかな」

     ソルトはハァとため息を吐く。

    「エリス、商業ギルドでどうなっているか確認してきてもらえるかな」

    「いいわよ。じゃ、レイ行くわよ」

    「え? なんで私まで……」

    「いいから、行くの!」

    「は~い」


     新顔の獣人達がソルトの方を見ながら、どこかオロオロしているのを見てソルトが「安心して下さい」とだけ伝えて、ティアにも何か不満があったら聞いといてとお願いする。

    「なんか知らないところで話が進んでいるな~」

    「でも、大きな問題にはなってないんでしょ」

    「ティア。そう言うけど、住む部屋がないのは問題でしょ。だから、ティアは子供達の人数とか、獣人達の家族構成とか纏めといてね」

    「え~私が?」

    「ティアモ同罪みたいなもんでしょ。じゃ、よろしくね」

     そう言い残すと、ソルトは自室へと入る。


    「ふぅ~大変なことになったな~」

    『そうでもなそうでしたけど?』

    「そうかな?」

    『そうですよ。それで、ソルトさん。変わったことはありませんか? あれから、体の不調とかありませんか?』

    「ん~特には何も感じないけど……まだ、話してはくれないの?」

    『何をですか?』

    「ほら、前に時機が来たら話すって言ってたじゃない。まだ、その時機じゃないのかな? 俺的には大分、変わったと思うんだけど……」

    『……』

     こんな体になった原因とか知っているのかもとルーに聞いてみるが反応が薄い。

    「やっぱり、話せない?」

    『すみません。私も出来るのであれば全てをお話したいと思っているのですが……その、禁じられている項目に触れた場合に抑制が掛かるようで話せなくなります』

    「そうなんだ。じゃあさ、俺の体が変わった時に聞こえた声なんだけど、アレはルーなの?」

    『アレは私じゃありません。でも、誰かも分かりません』

    「ふ~ん、じゃあ俺の体が変わった理由というか、原因は?」

    『それは『龍の血』による影響です』

    「違うよね」

    『……』

    「エリスの話じゃそんなことはないみたいだけど?」

    『分かりました。お話します。実は……』


     ルーからの説明を聞いたソルトがソファに座ったまま放心する。

    「……どういうことなんだ? そんなことがあり得るのか? でも、もう片足は膝上まで突っ込んでいる状態だもんな~でも、なんで俺なんだろう」

    「お話は終わりました?」

    「え?」

     ソルトが声がした方を見るとシーナが横に座っていた。

    「えっと、いつからここに?」

    「そうですね……『大変なことになったな』からでしょうか」

    「最初っから……いたんだね。気付かなかった」

    「まあ、この身長差ですから。私、無視されたと思って哀しくなりました」

    「あ、ごめん」

    「別にいいです。元々、忘れられるくらいに存在感が薄いのも分かっています」

    「いや、だからアレは忘れた訳じゃなくて、倒れていたって説明はしたよね?」

    「でも、私は何度も念話で呼び続けましたよ。それなのにソルトさんは……」

     シーナがソルトに愚痴りながら感極まって来たようで、次第に鼻声になり、目尻に水滴が溜まっていく様子が分かる。

    「え~ちょっと、待ってよ。どういうこと?」

     シーナの突然の涙にオロオロするばかりのソルトがどうにかしようと立ち上がった瞬間に部屋の扉が『バン』と開かれる。

    「ソルト、いる~? って、アンタ、シーナに何しているの!」

    「え?」

     突然入って来たレイに言われ、少し冷静になったソルトが自分とシーナの立ち位置を見て「あ!」と一瞬で理解する。どう見てもソファに座っているシーナをソルトが襲っている図式だなと。

    作者からの返信

    ご指摘ありがとうございます。

    確かに第二話がくっ付いていたので、削除しました。