第9話:【悪七】

 本当に偶然だった。


 私がこの後、に参加する予定が無ければ、この町の近くに来ることも無かったし、そしたらあの魔女を生かすことも出来なかった。

 今ここで、ケイニーさんに死なれては困る。


 たまたまこの町の近くを走り抜けようとした時、微かに身に覚えのある魔力を感じた。

 配下たちは気付いていなかったけど、私には何か確信めいた自信があったから、いつもみたいに配下を置き去りにして町に急接近。


 そしたら町には私とエデンの幹部ぐらいじゃなければ気が付けないほどの隠蔽能力を持った結界が張られていた。

 きっと今私を追ってきている配下たちは、この結界に気付けずに私を見失うんだろうなぁ、とか思いながら私は結界の中にGo。


 幹部がいれば、彼らはまだ私が戦うことはあまり得意では無いブレイン担当だと思っているから私が結界に入るのを死に物狂いで阻止しようとするんだろうけど、、、


 幹部たちとは現地集合にしといて良かった。


 結界の中に入ると、一見普通の町のように思える。けれど、妙に静かなのと、時々建物が崩れる音が聞こえてくる。

 これはケイニーさんが戦闘中!?かと思い足に魔力を纏って飛んで様子を見に行ったら、戦闘中じゃなくて逃走中だった。


 途中までその逃走中を建物の上でリアル高みの見物してたんだけど、いよいよケイニーさんが魔物に殺されそうになったので介入した。


 初めてだった。

 剣が耐えれないから全力では無かったけれど、剣が崩壊するギリギリまで魔力を流し込んだ、私の中では多分3割?ぐらいの力を込めた横薙ぎ。それを真面に喰らって耐えた敵は初めてだった。


 いつもは剣に魔力を込めるとしても1割ぐらいが丁度良い塩梅だったから、私はきっと相手を観察する能力が落ちたんだと思う。


 戦うと決めたら一撃がモットーだったのに、ちょっと悔しい。

 今まで私が一撃で倒せなかった相手って、それこそエデンの幹部で序列一位の''ポチ''を5年前に助けた時と、二位の''ミケ''を救うために同じく5年前に戦った【魔帝】ぐらいだと思う。

 二人とも私が助けた時には気絶してたから、私が戦ったところを見てないし、あの頃は私も一人じゃなくて従兄の【剣帝】と一緒に常に行動してたから、全部その従兄がやったことにしてたし。


 それでもポチとミケが私なんかに従って慕ってくれるのは、きっと従兄が私を慕っていてからだと思う。



 まぁ、もうその【剣帝】である従兄はいないけれど………



 っと、この話は置いといて、兎に角ケイニーさんを助けるために私はまだ従兄にしか見せたことが無かった魔法を使った。

 別にエデンの皆には隠してるつもりは無いのだけれど、でもやっぱり自分たちが戦います!って言われたら、じゃあ私はその駒たちを使う役目にまわった方が良いよねってだけの話だ。


 それにやっぱり、少しだけ、ここまで秘密にしてきたんだから、もういっそのこと死ぬまで隠し通したいって気持ちが芽生えてきてる。


 兎に角その魔法で魔物を蹴散らし、ケイニーそんの安否を確認。

 ケイニーさんは視線を向ける私に気づくことなく呆けてたから、私はその場を離脱することにした。


 この後は結構、大事な会議があるからね。



◇ ◇ ◇

※三人称視点


 とある薄暗い屋敷の一室。

 かなり広いその部屋では、大きな食卓に七つの席が用意されており、それぞれの席の前には一本の蝋燭ろうそく豪華絢爛ごうかけんらんな料理が置いてある。


 既に七つの席の内、五席は埋まっており、残るはあと二席の人物待ちな状況だった。


 一つの席。

 食卓のテーブルに無作法にも足を乗っけて腕組みをする大男。顔には酷い火傷があり目も鼻も原型を留めず、割と正常な形で残っている口にワインを含むその男は、トキト帝国の隣国に位置する【ゲンマ蛮国】の陰の支配者、

―――【不死身殺し】ガラン・ワーグリー


 一つの席。

 テーブルの上に置かれた蝋燭の火を消しては自身の魔法でつけて。消しては自身の魔法でつけてを繰り返す奇人。短い銀髪に学者のようなモノクルを着けて、顔にはそばかすが目立つその青年は、定まった国に居場所を留めず、様々な国を転々とする【裏魔術師団】のおさ

―――【魔界の謀反者】バーウェル


 一つの席。

 常に空席の【新たな魔帝】であるという情報しか無い年齢性別名前不詳の今もいない誰か。


 一つの席。

 豪華絢爛な料理のサラダにしか手を付けず、テーブルに置かれたドレッシングなど一切使わずにサラダの、素の野菜の美味しさを味わう一見真面な人物。ただ異常なまでに整った顔の持ち主であり、胸は絶壁のAAAな齢150を超える美女は、【エルフの森】代表、

―――【エルフの真祖返り】名前不詳


 一つの席。

 今度は対照的に豪華絢爛な料理の内、肉しか食べない粗野が目立つ人物。ただこちらも異常なまでの美貌の持ち主であり、先とは真逆で豊満な胸も併せ持つ美女は、南国【ローバ諸国】の暗殺ギルドマスター、

―――【ダークエルフの先祖返り】名前不詳


 一つの席。

 食卓の料理には手を付けず、この場で唯一他人に関心を持ち、しかし目にはハイライトが消え感情が欠落したかのような眼の持ち主。駆け出しの冒険者が着けるような貧相なアーマープレートに、椅子の足に立てかけた剣には錆がある。特に眼以外で特徴の無いその男性は、

―――【とある世界の元勇者】エリク


 彼らは何も喋ること無く、ただ来るであろう一人を待っていた。

 どうして空席が二つあるのに一人しか待っていないのかと言えば、それは以上で説明したとおり、一度もこの会議に参加したことが無く、性別年齢名前不詳の謎が多い人物で、今ここにいる全員がその人物は今日も来ないと確信しているからである。



 そして、最後の待ち人である彼女は現れた。



「おっせぇぞ!最弱が俺らを待たせるとか何考えてんだてめぇは!!」


 大男ガランが遅れて入ってきた女性に怒鳴り散らす。

 それに対して一喝受けたその紫の外套を着て目元に泣き笑いピエロの目隠し仮面を着けた人物は笑って答えた。


「それはすみません。なにせ私はここに揃うご歴々の中で最弱ですから」

「はんっ!ほんとだよ。その連れて歩いてるペット達がいなきゃ何も出来ないゴミ風情が、僕の時間を無駄にするな」


 遅れて来た女性の皮肉の籠った言い訳に、追い討ちをかける如く罵倒するのはモノクル青年のバーウェル。

 彼の言葉に反応したのは、しかし言われた本人では無かった。


 カチャリ、

 と剣に手をかけ、今にもバーウェルに切りかかろうとする紫の外套を着た人物。


 それを女性が静止する。


「やめなさい、ポチ。事実なんだから仕方ありません」


「ま、まぁまぁ!一応、これで全員が揃ったんだし、時間も有限なんだから早速会議を始めようじゃないか。イヴちゃん、ほら、席について」


 仲介役を担うように声をあげたのは先程まで無表情でハイライトが消えた目をしていたエリク。

 今は不気味なほどに爽やかな笑顔で女性に接していた。


 そう、最後の一人に来た女性。

 それこそが昼間は素の姿であるメイド服を着たアイリスその人であり、今はエデンという帝国の闇を担う者たちの集まりである組織のリーダーを務める人物。

―――【剣帝の代役】イヴ


 本来ならばエデンの元総督でありアイリスの従兄でもある【剣帝】アダムがこの最後の一席に座るはずだったのだが、彼はもういない。

 だから周りの人物は代役の彼女をあまり歓迎はしていないのだ。


 それでも代役は代役。

 実際はここにいる全員がイヴを弱いと判断し、あまり頼りにはしていないのだが、そんな中で会議は始まる。

 進行役はエリクのようだ。


「みんな、集まってくれてありがとう。それじゃあ、始めようか。我ら【悪七】の会議を」



━━━━━━━━━━━━━━━

い、いきなり沢山の情報を出してしまってごめんなさい(´•̥ᯅ•̥`)

ただ、次回からは百合百合も含め難しい情報は避ける予定ではあります。


意味不明な箇所や、ここはこうした方が良いんじゃない?などのアドバイスがありましたら、ぜひぜひコメントして頂けると嬉しいです。


もう一つ。

来週の日曜日と月曜日、それから火曜日の更新なのですが、私情により執筆時間が取れず、もしかしたら出来ないかもしれません。

確実に更新出来るのは水曜日からなのですが、出来るだけ更新出来るように頑張ります。


これからも、面白いと思ってくださったら♡やフォロー、☆付けなど、応援よろしくお願いします(>人<;)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る