開示


 ステータスの補足説明をひとしきり終えたアンスリウム王女は俺たちにステータスの開示を求めてきた。

 

 俺はその要求にぐっと警戒心を引き上げるが、それでも王女は続けて言う。


 なんでも、魔王討伐をするにあたっていくら成長チートと強力な固有スキルを持っている勇者でも、それを使いこなせなければ意味が無いと。


 「その力を使いこなす手伝いをさせて欲しいのです。魔法系のスキルならそれに近しい能力を持つ者を。格闘系のスキルなら組み手相手を。補助・生産に関わる能力もまた然りです。皆様それぞれに合った専属教師を付け、訓練をしてその力を制御していただく為に。いきなり、このような申し出に甚く警戒なさる事でしょう。ですがスキルを使いこなせるかどうかで、皆様の生存率は大きく異なります。勝手に召喚した手前、このような事を申すのは憚られますが、私は皆様に無事でいて欲しいのです。大変難しいことを申し上げているのは百も承知です。ですが、どうか、どうか私共を信頼していただけないでしょうか。」


 金髪縦ロールが地面につきそうなほどに深く頭を下げるアンスリウム王女に、暫し俺たちは唖然とした。

 

 少なからず警戒していたはずの柊でさえ、その誠意溢れた光景に少し警戒心を緩める。


 一方、端から柊ほど警戒していなかったクラスメイト達は、今!このタイミングだよな?!と言わんばかりに、我よ我よとアニメで観たような主人公ムーブを繰り出す。


 「へへっ!何言ってんだよアンスリウム様。俺たちもう仲間だろ?」


 「うん。手助けしてくれるの助かる。ありがと、アンスリウム様。」


 「そうだぜ、俺たちはもう魔王という共通の敵を持つ仲間なんだ。信頼なんてとっくにしてるっての。なぁみんな!!!」


 「おぉーーーーーーーーー!!!!」


 聞いているこっちが恥ずかしくなるほどの茶番を繰り広げるクラスメイト達を、こいつら大丈夫か?と心の中で心配するが、一人だけノらないのも変に目立つので、輪を乱さぬように適当に合わせる。 


 「ぉ---」


 果たしてそのみんなに俺はカウントされているのかは知らんがね。

 まぁ、入ってなくてもいいけどね。

 だって、こっちの事情も鑑みずに異世界に召喚したお前らの方がよっぽど魔王だろ?

 割とガチでそんなマジレスを王女サイドにかましそうになったけど、確実に追放されるので我慢しました。


 そして、数時間と経たずに俺よりクラスメイト達と打ち解けるアンスリウム王女に驚嘆していると、王女は涙ぐみながら微笑む。


 「皆さん。。ありがとうございます!ではこれより皆様のステータスを確認させていただきます!」


 王女がパンパンっと2回拍手をするように手を鳴らすと、それを合図に玉座の間に入る時にいた執事のお爺さんが占いに使う水晶のようなものを台座に乗せて持ってきた。


 「それでは勇者様方、この水晶に手をかざしてください。この水晶はステータスを読み取り表示する魔法道具です。どなたからでも構いません。痛みなどは無いのでご安心を。」


 そう言って恭しく礼をした執事さんは即座に部屋の隅に控える。


 うわー、ステータスの開示ってこういう感じでやるんだ。

 信頼できる人にしかとか言ってたのに結局バレちゃうやつかよ。

 でも、ここでやっぱり見せないで良いですかね?とか言ったら空気読めよとか言われるの目に見えてるしな。

 腹括るか。


 少し高い位置にある玉座に座っている陛下が俺たちを見下ろす様に見るなか、王女は水晶を挟んで俺たちと対峙していた。

 

 誰が最初に開示するんだろうと思っていると、ここは私が先陣を切りましょうと王女と水晶の前に出てきたのは担任の長野正文だった。

 またお前かよと内心つっこむも、自ら先人を切ってくれるのならありがたいと思いそのまま成り行きに任せる。


 そして長野が水晶に手をかざすと淡く水色の水晶が光り、ステータス画面が映画館のスクリーンの様にデカデカと空中に映し出される。



【 名 前 】長野正文ながのまさふみ

【 称 号 】異世界人 教師 臆病者

【 種 族 】人

【 年 齢 】32

【 レベル 】1

【 体 力 】100/100

【 魔 力 】150/150

【 精 神 】5

【 スキル 】精神耐性Lv.1 疲労耐性Lv.2

【固有スキル】鑑定▼


 俺は視界全面に映し出される、長野のステータスと自分のステータスを比較してみてみる。

 

【 名 前 】回夜柊かいやしゅう

【 称 号 】異世界人 疎まれるもの

       不撓不屈

【 種 族 】人

【 年 齢 】16

【 レベル 】1

【 体 力 】80/80

【 魔 力 】200/200

【 精 神 】−15

【 スキル 】火耐性Lv.3 精神耐性Lv.4   

       危険察知Lv.2 気配隠蔽Lv.1

【固有スキル】ボックス▼


 んー大まかな能力値的にはどっこいどっこいかな?

 体力は俺の方が低いけど、魔力的には勝ってるし。

 耐性スキルが俺の方が実用的な分ちょっと俺の方が有利かな。

 

 固有スキルは俺の奴は相変わらず意味わからないけど、長野のは鑑定。

 多分想像してる通りのやつだよね、これって使えるのか?

 

 








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