第48話

ダンジョンに入った私たちは、その異様な雰囲気に、身を寄せ合いながら進んでいた。


「薄暗くて気味が悪いですわ」


「そうですね。それに風がとても冷たいです」


ジェシカとアシュリーの言う通り、現実のダンジョンってかなり不気味ね。


その瞬間、どこからか滴り落ちた水滴が地面を叩いた。


ピチャ。


「ヒィッ!!」


その音に驚いたソフィアが飛び上がり、怯えた表情で私の袖をギュッと握り、私の背後に身を寄せた。


え!? ソ、ソフィアが私の袖を握ってる!?

そ、それに、顔が近くて直視できない...!!

どどど、どうしよう!?


「大丈夫ですよソフィアさん。ただの水滴です。それに、何かあっても私達にはリリー様がついてるんですから! ね、リリー...様...?」


「あわわわわ」


「だ、大丈夫ですかリリー様!? 物凄く震えてますよ!?」


「だだだ大丈夫よアシュリー。ししし心配しないで!」


ソフィアが私の隣...ソフィアが私の隣...


「も、もしかして、リリー様が一番怖がっていますの?」


「そ、そんな事ないわよ! さ、早く進みましょう。この授業はダンジョンを早く出た順に評価されるんだから」


すると、緊張でガクガクする私を見て、ソフィアの目が真剣になった。


「リリー様も怖いはずなのに、私は...。そうですね! 早くこのダンジョンをクリアしましょう!」


そう言ってソフィアが一歩前に踏み出したその時――


「きゃっ!!」


ソフィアが地面に躓き転んでしまった。


「ソフィア大丈夫!?」


「いたたた...私は大丈夫ですリリー様――」


カチッ。


ソフィアが地面に手を付き立ち上がろうとしたその時、彼女の手元の地面が少し沈んだ。


「へ?」


「「「「「「わああああああ!」」」」」」


すると、ダンジョンの奥の方から、武器を持ったスケルトンが大量に走ってきた。


えええええ!? なんかめっちゃ物騒な集団が走ってきたんですけど!?!?


ってソフィアは!?


私がソフィアの方を見ると、彼女は腰を抜かしていた。


ソフィアが危ない! 魔法でスケルトンを倒さなきゃッ!!


「リリー様! ワタクシとアシュリー様でソフィア様に防御魔法を展開致しますわ。ですので、リリー様は攻撃魔法をお願い致しますわ!!」


「わかったわ!」


二人が防御魔法を展開してくれるなら、私の魔法がソフィアに影響すること絶対にないわね。


私は安心して魔法を唱える。


「インフェルノフレア!!」


すると、私の手の平から放たれた炎が渦を巻き、激しい光と共にスケルトンの群れを呑み込んだ。


暫くしてその炎が消えると、スケルトン達の姿はなく、紫色の小さな魔石だけが落ちていた。


「す、凄い魔法...」


ソフィアがそう小さく呟く。


「大丈夫? ソフィア」


私がそう聞くと、放心状態だったソフィアの目に意識が戻る。


「は、はい! ありがとうございます。リリー様」


そして、彼女は満面の笑みでお礼を言った。


ソ、ソフィアの笑顔。破壊力がヤバイわ!!

写真魔法に今すぐ収めたいわね。


「流石リリー様の魔法ですわ」


「すっごくカッコよかったです!!」


「二人の防御魔法のお陰よ。さぁ、この調子でどんどん進みましょう!」


「はい!」


ソフィアが元気な返事をして勢い良く立ち上がる、しかし、先程まで腰を抜かしていたソフィアは、立ち上がって直ぐによろついてしまい、倒れないために壁へと手を着いた。


すると――


カチッ。


「へ?」


「「「「「「わああああああ!」」」」」」


今度は壁が少し沈み、またスケルトンの集団がやってきた。


そ、そうだった!! ソフィアは天然でドジっ子だったああああ!!


てか、ゲームでもこのダンジョンの敵との遭遇が多すぎると思っていたのよね。


その原因って、ソフィアが沢山トラップを踏んでいたからなのね...


その後、何度もソフィアがトラップを作動させて戦闘を繰り返した私たちがダンジョンを出た時には、外は既に暗くなっており、もちろん順位はクラスで一番最後だった。


「お主ら遅すぎるのじゃあああ! 他の者は皆とっくに帰って、妾だけ一人ずっと待っておったのじゃぞ!」


「「「「す、すみません。キロ先生」」」」


「まぁ、無事で良かったのじゃ」


そう言って、キロ先生は馬車の待機所まで私たちを送ってくれた。

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