エクストリーム・デイ

シラゴン

第1話

〈この作品は実際の人物・背景を元に、脚色を加えたものです。〉


薄暗い部屋には自分一人しかいない。八月だというのに部屋は震えるほど寒い。

堪らず空調のリモコンを見ると18℃〈冷房〉と書いてある。

舌打ちをして空調を切る。ピィという間の抜けた音がして空調の音が止まる。

のっそりと布団に潜り込み頭からタオルケットを被る。

ふんわりと包み込まれるような感覚に目を瞑りたくなる。

そんな睡魔の誘惑を振り切りPCを開く。俺には見たいものがあるんだ。

愛機のchrome bookを起動しpipedを開く。pipedはyoutubeのコピーサイト。

youtubeでは年齢制限が掛かるような性的な動画さえ見れてしまう。

簡単に過激な誘惑が満たせてしまうという怖いサイトだ。

俺の目当てはエロ動画ではない。そんなものはduck duck goで一発だ。

そんなものはどうでも良く、俺は自殺配信が見たい。

出来ればモザイク無し・タイムラグ無し・コンプライアンス無しが最高。

隠し事無しの自殺配信は試験やプレゼンと似ている。

ゾクゾクした緊張と高揚感。こんな感覚が気持ちよくて怖いもの見たさで見る。

ぐしゃぐしゃで血まみれの死体がゾクゾクして面白いんだ。

別に死体好きの異常性癖者じゃないんだ。過激なものが大好きなだけ。

それこそ電車に乗ってるときにナマで飛び込み自殺なんて見れたら面白いさ。

でもそんなうまくいくわけないだろ?世の中は案外うまくできてるんだよ。

怖いもの見たさでいろんなものを見た。海外サイトから死体の画像も漁った。

でもいまひとつ。俺の退屈は満たされないことにいら立ちを覚えていた。

寝る気持ちよさとは違う。性的興奮の快感とも違う。第三の快楽はきっと

新エンターテインメント「自殺配信」でしか得られない。

数字が出ない焦り、人間関係の気だるさ。そんな不満を「配信者」に抱かせ

そして、飛ばせる。社会への反逆という趣旨で人を殺す。

そんな俺は傍から見れば異常だろうか。犯罪者予備軍だろうか。

舐め回すように死体を見る。そして微笑み呟く。「you can fry」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る