ゾン日

「今日はゾン日です。人々はゾンビになります。よって死んでも生き返ります。」


 時の宰相、トキノサ・イショー氏が朝の定例会見で言った。


 まじかよ!!生き返るってよ!!まじかよ!!すげえぜおい!!すんげえ日だ!!


 沸き立つ人々。小学生の太郎くんもその一人。


「太郎、ご飯よー。」


 太郎くんの母である、太郎マザーさんがいった。興奮している太郎くんが返事をする。


「ママ!!すごいんだよ!!今日は人が死んでも甦るんだよ!!ゾン日だから!!人々はみなゾンビになっているから!!死んでも甦るんだよ!!すごいんだよ!!」


「へえ、すごいわねえ。じゃあ、ご飯食べましょう。」


 太郎マザーさんは自分の分のお盆に白米とお味噌汁とお魚を乗っけてテーブルの上に置いた。


「今から太郎の分も持ってくるからね。」


 太郎マザーさんはそういって再び立ち上がる。その隙に、、、


 太郎氏は胸ポケットから白い粉の入った袋を取り出し、太郎マザー用の味噌汁に入れた。みなさん御察しの通り毒である。今日死んだ人は甦るのだ。だから今日は人を殺しても問題ない。ということで太郎氏は手始めに太郎マザーを殺すことにしたのだ。


「お待たせー。はい、頂きますー。」


 あがあ、、


 太郎マザーさんは泡を吹いて倒れた。サボテンみたいな格好で床に横たわる。太郎マザー死んじゃったぜ。太郎氏は思った。そこに太郎ファザー氏がやってくる。倒れてるマザーを見て駆け寄る。脈をとる。


「何これ、何これ、マザー死んでるじゃん。やばいじゃん。救急車呼ばなきゃじゃん。何やってんの、太郎、呼ばなきゃじゃん。」


「大丈夫。今日はゾン日だから。みんなゾンビになっているから。死んでもみんな、蘇るから。」


「まじかよ!すげえなそりゃ。おりゃあ!!」


 ドゴオッ!!


 太郎ファザーさんは太郎氏をぶっ飛ばした。即死、太郎氏は動かなくなった。


「まあ大丈夫、すぐに蘇るからな。」


 太郎ファザー氏は安心して太郎氏用の味噌汁をすすった。


 夜になって、朝になった。


 コケコッコー


 鶏が鳴いている(朝だから。)。


 しかし、二人は蘇らない。太郎ファザー氏は不安になってきた。そして不安を抱えているのは太郎ファザー氏だけではなかった。同じように蘇ると信じて殺人を犯した人々が大量にいたのだ。


 人々は怒った。


「蘇るっていうから殺したのに、蘇らないじゃないですか。どうしてですか、どうしてですか、孫を、孫を返してください。」


「そうよそうよ。うちのたかしを返して。殺しちゃったじゃないのよー!!」


 トキノサ・イショーに怒りをぶちまける人々。しかし、トキノサ・イショーを訴える前に火葬をするべきだ。


 火葬屋は儲かった。それはそれは儲かった。


「うっひっひー。商売繁盛、商売繁盛。ボーボーボー、ボーボーボー。うっひっひっひっひー。」


 火葬屋があまりにも楽しそうなので火葬屋がビジネスのためトキノサ・イショーを騙したのではないか。と人々は考えた。


 火葬屋、ざけんな!消えろ!この世から、消えろ!!


 怒った人々に火葬屋はみんな殺されてしまった。殺されてしまったので火葬ができなくなった。よって土葬した。ドッソドッソと穴を掘り、ドッソドッソと埋め立てた。


 ジジジジジ


 その時、全てのテレビ画面がトキノサ・イショーを映し出した。そう、トキノサ・イショーの緊急弁明記者会見が始まったのだ。


「みなさん、すみませんでした。夢のお告げを信じて言ったのですが、どうやら勘違いだったようです。しかしですねみなさん、人が死ぬのはいつでしょうか。それはですね、人が人を忘れた時、なのですよ。だから、みんな生きている。本当は今でも生きているのです。」


 うぅ、うぅ


 太郎も太郎マザーも、まだ生きている、私の中で生きているのだ。


 人々は胸に手を当て、感動し涙を流すのでした。


 イイハナシダナ-


 完


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