ヴァイスハイト戦記~エルヴィンの章~その2

 Side エルヴィン・シュターゼス 


 アルベドの隊長とのやり取りから少しばかりの時間が経過した。 


 それからも小競り合いは続き、小さな被害は出しつつも犠牲者はゼロ。


 我が軍は全体的に見てもニホン軍を直実に追い詰めていく。

 パワーローダーだけでなく、陸上戦艦や戦闘機、戦闘ヘリ、戦車なども投入され、まさに敵無しと言った感じで戦いは進んでいった。

 

 特に陸上戦艦は凄い戦果を挙げていた。

 ヴァイスハイト王国の大発明の一つと言って良い。

 これで敵軍の部隊を次々と各個撃破していき、ウチ漏らした敵もパワーローダーなどで駆逐していく。


 そんな作業的な戦いが続いた。


 そんな自分達に友軍が苦戦している地域があると言う。


 そこはイスズ市と言う名前の地方都市で特に重要拠点があるワケではないが近辺を通りかかった我が軍の部隊は次々と撃破されて言っているのだという。


 そこに陸上戦艦もろとも殴り込むように急行することになった。


 これがフリスト隊にとって悪夢の始まりだとも知らずに――




 それは真夜中に起きた。


『クソ!? 何がどうなってる!?』


『敵のパワーローダー部隊の奇襲だ!!』


『旧型だが我が軍のクリーガーまでも使用してるぞ!?』


 夜間による陸上戦艦への少数戦力での奇襲。

 敵は市街地のあちこちに潜んでいてパワーローダーの機動性を活かした単純な作戦だった。


 当然僕達はすぐに格納庫に集まり、パワーローダーを身に纏ったがその時には手遅れだった。


 ブリッジは破壊され、内部に潜入されて次々と重要区画が破壊された。

 

 自分達がパワーローダーで出動した時にはもう全てが終わっていた。

 

 陸上戦艦はただの巨大で頑丈な構造物と化し、僕達は遭難したような気分になった。


 これが地獄の始まりだった。

 


『クソ、またか!?』


『敵はどこにいるんだ!?』


 そこから連日のように襲撃を受けた。


 狙撃。

 強襲。

 ロケット砲。


 自分達が知る戦場とはかけ離れた戦いを強いられた。

 教本で見たゲリラ戦通りだ。


 こうして仕掛けられるとここまで苦しい戦いになるのか。


『クソが!! こうなったらこっちから仕掛けてやる!!』 

  

『待て!!』


 同期の一人がそう言って見えない敵を探すようにして突撃した。

 アルベド隊長が静止するが無視する。


 ――それが彼を見た最後だった。


『ぐああああ!?』


 敵の狙撃を受けて足を止める。


『助けなきゃ!?』


『待て、これは――』


 仲間が慌てて救出しにいったところを、再びアルベド隊長が静止ししょうとしたが構わず仲間達は助けにいき――そして一カ所に集まったところをロケット砲か何かで纏めて吹き飛ばされた。


 アルベド隊長は『クソッ!! ヒヨッ子が・・・・・・バカ野郎――』とつぶやく。


『なんだよ・・・・・・なんだよこれええええええええええええええええ!!』


 僕はただただショックだった。


 仲間達の唐突な死。


 まだ見ぬイスズ市のニホン兵への復讐を誓った。

 


【敗走】


  Side エルヴィン・シュターゼス 


 少しの間、僕たちフリスト隊にとってこの動かなくなった陸上戦艦を中心とした場所が自分の最前線、日本戦線と化した。


 今まで自分達は攻める側だった。

 

 今度は守る側になった。

 

 敵の攻撃は悔しいが見事と言う他なく、敵の度重なる奇襲でどんどんと消耗としていき、僕達は友軍を守りながら味方に合流するべく、イスズ市から後退。


 つまり――イスズ市の敵に敗北を認めた瞬間だった。 


 その間にも敵のニホン兵の攻撃が続いた。

 敵の主力パワーローダー、零戦二型や砲撃型のパワーローダー富嶽までもが参戦してきた。 

 

 戦いはパワーローダー対パワーローダーの様相を呈してきた。


 味方部隊の撤退を支援するために殿をフリスト隊も苦しい戦いを強いられることになる。


『実力はこちらが上だけど――』


『エルヴィン! 怯むな!』


『隊長!?』


『数は彼方が上だが戦争は数で決する物じゃない! それを思い知らせてやれ!』


『りょ、了解!!』


 敵軍は見事なもので戦車や戦闘ヘリ、歩兵との連携を重視しながら此方を着実に追い立てる。


 それでも――


『死ぬわけにはいかないんだ!!』


『ひぃ!?』


 対装甲目標用の大剣を相手のパワーローダーの頭部に叩き付ける。

 続いて死んだ敵のパワーローダーを盾にして他の敵に銃撃を行う。


 そうだ。

 死ぬわけにはいかない。

 皆頑張って戦ってるんだ。

 

 だから戦い続けよう。



 Side エルヴィン・シュターゼス


 あれから何度も襲撃を受けた。


 正直心も折れかけた。


 ある時、戦いの乱戦の中で道に迷って――敵の勢力圏内を幽霊のようにうろついていた。


 ボロボロになった廃墟に身を隠しながらの逃避行。


 何時しか僕はイスズ市に舞い戻っていた。 


 復讐とかじゃなく、行く宛がそこしか考えられないぐらいに消耗していたのだ。


 ただのデカい鉄屑と化した我が軍の陸上戦艦。

 

 早朝の光に映し出されるその姿は何故だか遺跡を見ているような神秘的な物を感じさせた。


「あなた――味方なの?」


 少しの時間見上げているとセンサーに反応を検知。


 敵のパワーローダーが現れた。


 それも三機。


 必死に抵抗しようかと思ったが、僕は捕縛用の網か何かに絡め取られて呆気なく捕まり、捕虜になった。



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