「耳が聞こえない男の子」
私の学校に転校生がやってきた。
「じゃあ自己紹介してくれ。」
男の子は何を言われているのかわからない様子だった。
「あ、ああ、そうだったな。」
先生はそう言って紙とペンを持ってなにか書いてそれを男の子に見せた。
男の子は理解したのか彼が持ってきたカバンの中からスケッチブックを出してきた。
そこにはこう書いてあった。
『初めまして。僕は
『僕は生まれつき耳が聞こえません。』
『補聴器を使っても全く聞こえません。』
『かなりの重症だそうです。』
『でも、耳以外は正常なので普通に接してくれると嬉しいです。』
『迷惑をかけてしまうかもしれませんがよろしくお願いします。』
「上溝くんは耳が聞こえない。だから、授業も黒板に書いたものしか知識が入らない。だがそれでも、上溝くんは私達と同じ人間だ。仲良くしてやってくれよ。」
私はそうだよね、と思っているとクラスの男子が先生に言った。
「手話使わないと毎回筆談で会話するんですかー?」
「そうなることも可能性としては十分にあるよ。」
「なんで障害者の学校に行かないの?」
「なんで俺たちが上溝くんに気を使わないといけないの?」
「耳が聞こえないなんて変だよ」
「一旦黙りなさい。」
先生が怒った。と、同時に上溝くんは聞こえない耳を塞いでしゃがみこんでしまった。
「ごめんな、上溝くん。大丈夫か?」
聞こえないとわかっていてもやっぱり声をかけてしまう。その時上溝くんは言った。
「まただよ…!僕は障害者、耳が聞こえない、皆とは違う。そんなこと…今までに何回も言われたよ…!聞こえなくても雰囲気でわかるんだ、その場にいればなんとなく内容がわかっちゃうんだ…!!今僕が言っている内容が本当に自分の言いたいことを言えてるのかすらもわからない…皆僕に言うんだ。なんで障害者がいる学校に行かないのって…僕だって皆と一緒に学校生活を楽しみたいだけなんだ!!なのに…障害者だからといって変な人扱い…。この学校なら受け入れてくれると思ってたのに…なのに…なんで君たちは…」
教室は上溝くんの泣き声で響いていた。わかってるよ、あの男子の疑問も悪気があって言ったわけじゃない。素直な質問だった。だけど、それは上溝くんを最も傷つけさせる言葉だった。上溝くんに慰めの言葉は今はいらない。ただただみんなと仲良くなりたい。ただそれだけなのに、障害者だから変だとか言われる。人は一人ひとり違う。皆が同じなわけじゃない。それを無理に受け入れろとは言わないけれど、少しは理解ができる世の中になって欲しいよね。私は上溝くんが来て、改めてそう思った。
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