【第二部開始】飽食の宝箱

ほむひ

第1話 裏切

 「っはっはぁ、っぐ、あ゛あ゛、っっっっざっけんじゃねー、ぞ。あいつら、俺をはめやがって。」


 ・・ザワ、、、ザワザワ、、ギギギギ、バチン

 俺の背後からは木々が不規則に揺れ動く音。

 そして、それらが圧力に負け、やがてなぎ倒される音が聞こえる。

 それでも、その音からは大分距離があるようで、、、どうやら向こうさんは俺を見失ったようだ。


 そう思った途端、足から急に力が抜ける。

 半ば倒れこむようになりながら、近くの木の洞に頭から突っ込む。

 その拍子に、泥やら草やらが、乾いた口の中に飛び込んできて、むせ返してしまう。


 「っごほっ、がはっ、がはっ、げほげほげほ、、、っっはぁ、っぺ、、はぁはぁはぁ」


 肺が痛くなるほど、咳込み、むせ戻し。

 そして何とか息を吸い込む。

 青臭さと、泥臭さがない交ぜになったようなにおいが鼻腔をつき、思わずもう一度むせそうになるのを何とかこらえつつ、呼吸を整える。


 「はぁはぁ、お゛、お゛ぼえてい゛やがれ、あ゛いつら゛。」


 そう恨み言を声に出したつもりだったが、果たしてそれは声と言えるのものになっていたかどうか。

 それでも、声に出したことで自分にほんの少しだけ活力が戻ってきた気がする。


 「な゛、な゛んにせよ、ごんな゛どごどにいだんじゃ、ぐわれぢまう。」

 

 そう自分に言い聞かせて、幹を伝い、何とか立ち上がる。

 力の抜けた足だが、それでもなんと歩くことくらいはできそうだ。


「ちっぐしょぅめ゛」

 

 その言葉だけを頼りに、俺は背後に聞こえる破壊の音から、逃げるように森の外を目指すのだった。



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 この世界は終わってる。


 昔は人間様が世界の中心だった時代もあったそうだが、そんな昔のことは俺は知らん。

 今は、なんとか隠れ潜み、数少ない村々で融通しあって細々と生活するのだやっとの状況だ。


 なんでそんなことになってるのかって?

 知るかよ。

 でも原因だけははっきりしていやがる。

 そう


 それもこれもぜぇんぶ、あの宝箱っていうバケモンの所為だってことがな。


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