第2話
「
「
幼い頃から付き合いの長い二人。部屋に入るのも、入られるのも、お互いにもう何度目か分からない。それでも
「
「読むよりも、書くことの方が中心だから。読みたきゃ借りるし」
「ふーん。そんなもんかねぇ」
床にも関わらず、ごろーんと寝転ぶ
「いーなー。広い部屋もらえて」
「間取りを見る限りじゃ、
「まじ?」
「私の部屋は、隣がバルコニーになってるから、そのぶん狭いんだよ」
「羨ましいなぁ」
「そんなことないよ。布団を干す度に、家族に通り道にされるし」
「あー、だからいつも奇麗にしてるのかー」
ごろごろと床で転がる
「――世界ってのは、きっと余白でできてるんだよ」
*****
「余白ねぇ……。それって、作家・
持ってきた天体望遠鏡をバルコニーにセットする
「団子が食べたいなー」
「そう言うと思った。ほら、どうぞ」
「分かってるじゃーん。流石は私の……私の……うーん?」
「何?」
「私のアルタイル!!」
「うわ、恥っず」
目を逆三角にして不快感を示した
よく「動物に例えると?」なんてことがあるが、
とはいえ、「星に例える」となると少し難しい。
「空っぽな場所があるんじゃない。本来、宇宙は空っぽなんだよ」
なにも、それは宇宙規模のことではない。話を聞きながら、団子を空に放り投げては口でキャッチする
「けど同時に、余白は可能性に満ちた空間。確定していないからこそ、何でも描くことができる。星と星の間には何もない。けれど、線を引いたから、星座を描くことができた」
もし未来の色が、何も描かれていないキャンバスと同じ白だとすれば、きっと過去の色も同じ白なのだろう。未来と過去は同じ色をしている。人は、未来と同様に過去を描く。歴史家や歴史小説家が描く過去は、実際に存在したものではなく、存在したはずのものを再構築した物語。それは、一種の仮想現実だ。未来はもっと真っ白で、星座になる前の星々を描くことだってできる。
「それこそが
未だなお、世界は甚だしくも白いままだ。だからこそ、人は自由に世界を描き、構築することができる。確かに、創造はエネルギーを使う苦しいことかもしれない。ありていに言えば、生みの苦しみというやつだ。けれども、人間が本来備えた創造性を、自ら放棄した世界とは何だろうか。思考を、創意工夫を、創造における過程を、放棄した世界とは何だろうか。苦しみのない世界とは何だろうか――それを人は「彼岸」と呼ぶのではないだろうか。
「世界は本質的に
*****
「昔っから、
「……まぁ、そんな感じ……です」
「いいよ、いいよ。
ほら、覗いてみ? 望遠鏡のセッティングが終わった
アンドロメダ銀河だ。
天の川銀河から最も近い距離にある銀河。数多くの星を束ねては、渦を巻くその姿は、宇宙の神秘そのもの。
「行ってみたいって思うよね!!」
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