この町で、絶え絶えながらも息をする

『よく女子がつけてるのは甘い香りの香水。でも彼女から香ってくるのはタバコの匂い。

人より少しだけ嗅覚が優れている佐々井は、隣の席の遠田から時折タバコの独特な匂いが放たれていることに気がつく。
それをきっかけに、タバコを吸っているのだろうか、でもなぜあんな優等生が、どうして? と徐々に彼女のことを目で追っていくようになる。

「息がしづらいね、この町は」

朝早くの教室でポソリとつぶやく彼女の瞳には、一体何が映っているのか――。』

主人公の少年、佐々井は、5月の席替えで隣同士になったことをきっかけに、優等生の遠野さんを気になり始める。

そのきっかけというのが、優等生であるはずの遠野さんから煙草の匂いがする、というもの。

あるとき、佐々井は遠野さんに匂いに敏感であることを気づかれる。
それから、佐々井が遠野さんの匂いに気づいていることも。

遠野さんはこの町は息がしづらいと語る。
遠野さんにとって煙草の匂いは町の閉塞感の象徴だった。