7 士官学校受験生

 木造の校舎の中を歩き、ユキナガは生徒たちの自学自習室となっている部屋に姿を見せた。


 そこには2人が並んで座れる大きさの机が合計で8台ほど並んでおり、異なる机の2つの座席にはそれぞれ男子生徒と女子生徒が着席していた。


 男子生徒はやや小柄な背丈に細身の体型で、女子生徒は高めの身長に鍛えられた身体つきが特徴的だった。


 彼らは学校帰りらしいが制服は着ておらず、私服の高等学校に通っているのかこの世界に制服という文化がないのかは判断しかねた。


「やあ、君たちはこの塾の生徒だね? 私は今日からこの塾の顧問を務めるユキナガだ。よろしく!」

「こんにちは! 顧問というと、私たちの授業を担当される訳ではないのですか?」


 ユキナガの呼びかけに元気よく答えて質問を投げかけた女子生徒に対し、男子生徒は教科書を開きながらおどおどとしていた。


「私が君たち相手に授業をすることもあるかも知れないが、基本的には授業よりも受験技法の指導を担当することになる。早速だが、君たちの名前と志望校を聞いてもいいかな?」

「もちろんです。私の名前はジェシカと言いまして、父はミサリー騎士団で分隊長を務めています。父のような騎士になるため、女ですが士官学校を目指して勉強しています。志望校はミサリー士官学校です」


 終始真面目な様子で答えた女子生徒は鍛えられた身体つきにたがわず騎士を目指しているらしく、志望校は士官学校らしい。


「僕はカンラといって、交易を専門とする商店の次男です。実家は兄が継ぐので、僕は士官学校から官僚になろうと思ってます。志望校はカッソー士官学校です」


 カンラと名乗った男子生徒は同じく士官学校志望者でも将来の目標は官僚らしく、体力はなさそうだが問題ないようだった。



 士官学校の入試科目についてはリナイからあらかじめ簡単に説明されていて、必須となる現代国語、亜人語、数術に加えて歴史学、地理学、政治学から1科目を選択し、騎士学科の受験生には学科試験に加えて体力を測定する実技試験が課されるという。


 高等学校の生徒が学ぶ科目には上記の他に古語や思想学、理論魔術があり、魔術学院の入試では現代国語、古語、亜人語、数術に加えて理論魔術が必須となっているとのことだった。

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