【完全初見】ダンジョンマスターがダンジョン配信に便乗してみた 〜唯一、俺のダンジョンを配信していた陰キャぼっちの女の子と共に俺のダンジョンを人気にしてダンジョンに来る人を増やそうと思います〜
六花
#1 唯一の配信者の配信を観た結果
ひとり暮らしを始めて3年目。俺は親からの仕送りとダンジョンマスターとしての収入で細々と生活をしていた。
ダンジョンマスターの収入はダンジョンへ侵入してきた者から追い剥ぎした物品を売った金がほとんど。
不動産の人に優良ダンジョンだと勧められて住みはしたものの1ヶ月にダンジョンを訪れる者は5人にも満たない。
訪れる者が1人も居ないなんて月もざらにある。
今月はダンジョンの収入が無かったから仕送りのお金で今日も近くのスーパーへ買い物へ行く。
近頃のダンジョン物件は2つの世界に繋がっているものが多い。そのダンジョンの多くは俺が元々住んでいる世界と地球という所に繋がっている。不動産の人いわく、両世界公認の異世界交流を踏まえた上での利便性と需要供給を考慮した結果らしい。
因みに俺のダンジョンは日本の東海県にあるちょっぴり田舎な地域だ。
田舎の方ではあるが確かに実家に居る時より生活は便利になったし、飲食物も安全に美味しくて手軽で安い物が手に入り易くなった。
だから、今日も地球の方のスーパーで夕飯の買い物をするのだ。
今日も今日とて買った物は鶏むね肉だけ。日持ちする野菜や米、日用品は月に1度の仕送りの日に実家からお金と一緒に送って貰えるけど肉や魚などの生物や足の早い野菜は自分で調達するしかない。
惣菜を買えれば楽なのだが、ウチにそんな余裕はない。別に料理を作るのは嫌いじゃないからいいんだけど、たまには楽をしたいわけで……。
買った鶏肉が入ったエコバッグを片手にトボトボと家路に着こうと歩いていると前を歩く学生っぽい女の子のグループの会話が耳に入ってきた。
「これ面白いんだけど知ってる?」
「ただの配信サイトでしょ? それくらい知ってるよー」
「違う違う。あたしが言ってるのは配信内容だよ。最近、どの配信者もこの配信ばかりやってるんだよ」
「へぇー。そんなにいい配信ネタがあるんだー。その配信ネタって何なの?」
「ダンジョン配信」
「ダンジョン配信? ダンジョンってここ数年で世界中の色んな所に現れたってアレ?」
「そうそう」
「何か危なくない? ダンジョンは無法地帯扱いなんでしょ? ダンジョン関係で何か起こっても法律適応外ってニュースでみたよ」
「そこが面白いんだって! 法律適応外だから何をやってもいい! そりゃあ、グロとかもたまにあるけど、ゲームみたいな事をリアルにやってるのがいいんじゃん!」
「そんなもんかなぁ。ま、帰ったら観てみるよ」
「そうしなよ! 絶対ハマるから!」
彼女達の話を耳にして思わず足が止まり、体の奥底から嫌な予感が湧き上がってきた。
「ダンジョン配信? 法律適応外? 何をやってもいい……だと?」
春真っ只中だからある程度保冷もせずに生肉を持ち歩いても大丈夫だけど、なるべく早く冷蔵庫へ放り込みたい気持ちよりダンジョン配信の話を聞いて早急に調べなければいけない気持ちが勝った。
調べるといっても俺はパソコンやタブレット、携帯電話などのハイテク機器は生憎持ち合わせていない。
無駄な出費になるけど背に腹はかえられないからネカフェに行く事にした。
ネカフェに入ってすぐに慣れない手つきでダンジョン配信と検索。検索に引っかかった動画は有名配信サイトの物がほとんど。その中から再生数の多いライブ配信のアーカイブを幾つか観てみた。
見たアーカイブの配信内容はダンジョンでのお宝探索や魔物との戦いが実況形式で行われているものが多く、上手くいく事もあれば失敗して仲間を失っていたりと内容の幅が広い。
映像的にセンシティブなものはモザイク処理かカットされている。
無法地帯扱いのダンジョンでも配信サイトで配信するとなればそこら辺は配慮されているようだ。
次々にアーカイブを観ていってある事に気付く。
それはどちらの世界の者であれ、配信者は有名若しくは面白いダンジョンへ集まるという事。
同じダンジョンでも目的や行く人が違えば面白味が変わる。
それがある意味配信映えになっていて視聴者や再生数が増えていると考えられた。
俺たちダンジョンマスターは基本的にダンジョンに訪れた者から追い剥ぎして生計を立ている。それを踏まえて考えるとこのライブ配信などでよく取り扱われているダンジョンのマスターは高給取りに違いない。
正直言って羨ましい。
ダンジョンマスターからすれば何であろうがダンジョンに入ってくる奴は不法侵入者。増してや目的がお宝探索や討伐目的なら強盗や殺人鬼だ。
だが、上手くあしらえばそれらは鴨が葱を背負って来ているのと同じ。こちらの利益となるわけだ。
このダンジョン配信が流行っているなら乗らない手はない。
もしかしたら俺のダンジョンも気付かない内に流行の波に乗りかけているのではないかと検索してみたら何十本ものアーカイブがあった。
「は? これだけ?」
アーカイブを再生する前に数字を見て俺は別の意味で驚いた。
チャンネル名は陰キャップch。キャップ型の帽子を深く被った中高生くらいの女の子がチャンネル主。チャンネル開設歴は3年と長いのに登録者数は僅か1人。アーカイブのどれもがライブ配信と思えないくらい短く、再生数も50すら超えていない。
しかも何十本もの配信は全部この陰キャップchだった。
何でこのチャンネルは俺のダンジョンに固執しているのかわからないけど、俺のダンジョンへ配信の撮影をしに来ているのはコイツだけ。
「とりあえず、観てみるとするか」
どのような内容かチェックする為、初配信ののアーカイブから順番に再生していって最新のアーカイブまで観た後、俺はそこはかとなくイライラした。
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