#2 奴隷を買いに行く

 ある程度、貨幣の勉強が済んだので、奴隷商館に向かう。


 小綺麗な館だ。


 とりあえず入ってみる。


 中に入ると綺麗なお姉さんが案内してくれた。


 彼女の首には首輪の印があったので、彼女も奴隷のようだ。


 案内された部屋は高級感があって、若干焦る。


 キョロキョロしていると小太りだが清潔感のあるおじさんが部屋に入ってきた。


「いらっしゃいませ。

 私はこの商館を担っております、マルロスと申します。

 どのような奴隷をお探しで?」


「護衛ができて、スタイルの良い美人を探しています。

 それと夜の相手もしてくれる」


 俺は戦闘ができないので、護衛もできる子が良い。


 治癒の力は神様から貰ったもので珍しいはずだから、狙われることも考えておかないと。


「わかりました。

 予算はどれくらいでしょうか?」


 最初は少なめに提示しておこう。


「小金貨8枚です」


「わかりました。

 ではこちらへどうぞ」


 そう言って部屋に通された。


 そこは夢のような部屋だった。


 その部屋には美人しかいなく、どの子もスタイルが良かった。


 その中である子に目が留まった。


 いや、吸い寄せられてしまった。


 憂いを帯びた大きな黒い宝石のような瞳でこちらをチラリと見られた時、目が離せなくなってしまった。


 瞳と同じように艶やかな黒い髪。


 その黒さを際立たせる、透き通った白い肌。


 服の上からでもわかるその豊満な胸。


「この子で」


 口からその言葉が出るのを止める事が出来なかった。


「レイラですか……」


 マルロスさんは困った表情をする。


「なにか問題が?」


「レイラは美貌がとても素晴らしいのですが、少々問題を抱えていまして……奇病を患っているのです。

 命に関わるものではないのですが……。

 皆、一目惚れするのですが、彼女の病を気味悪がって諦めるのです」


 奇病?


 俺なら病を治せるかも知れない。


「それはどんな病なのですか?」


「……レイラ、見せて差し上げなさい」


 彼女は嫌そうに目をそらしたまま動き出した。


 だがその動きは悪魔にでも取り憑かれたようにカクカクと不気味に動いた。


 彼女はこれでわかったでしょうと言わんばかりに直ぐに動きを止め、視線を下に落とした。

 

「彼女は何故か、身体をうまく動かすことが出来ないのです。

 元は実力のある冒険者だったようですが、病で働くことが出来ず借金で奴隷になったようです。

 私どもに出来る治療を試してみたのですが……。

 皆、一度は彼女を検討するのですが、悪魔に取り憑かれているなどと怯えるのです。

 しかし、この美貌なので商品として存在してるのです」


 確かにこの美貌で売れ残ってるのは不自然だが、この奇っ怪な病を知ってしまうと近くに置きたく無くなるのはわかる。

 

 だが、俺なら彼女を治せるはずだ。


「この子にします」


「?!

 いいのですか?!」


 マルロスさんがびっくりしている。


「この子はいくらですか?」


「この子は容姿的には大金貨何枚でもおかしくないですが、奇病を患っているということで大金貨1枚です。

 本当にレイラでよろしいのですね?」


 高いな……でも、これでも割り引かれてるのか、仕方がない。


「大丈夫だ。

 ちゃんと愛してあげられると思う」


「そうですか……では、特別に小金貨8枚に割り引きましょう。

 あなたはレイラを幸せにしてあげられると感じました

 どうか彼女をよろしくお願いします」


 最後の言葉は商人の言葉というより、世話をしてきた1人としての言葉だった。


「ありがとうございます!

 ではそれでお願いします!」







 最初の部屋に戻り、奴隷の説明を受ける。


 奴隷の首の文様はただの印ではなかった。


 大昔からある隷属魔法の一種で主人の力量によって様々な便利なことが出来るらしい。


 主人の力量次第だがほとんどの主人は首の印に触れると相手を拘束できると。


 ちょっとやってみたいがマルロスさん曰く痛がるのでしないようにと注意を受けた。


 そして隷属の首印は今のところ一度刻まれると消すことが出来ない。


 今のところというのはまだ分かってないことが多いからだそうだ。







 説明後、金銭の契約を完了し、レイラを受け取りに行く。


「ヨシユキ様、今から主人をヨシユキ様に変更します。

 こちらへ」


 レイラの後ろに立たされる。


「彼女の隷属の首印に触れて下さい。

 後はこちらでやります」


 レイラの首に左手を添える。


 マルロスさんは道具を取り出して彼女の首に触れた。


「終わりました。

 これでレイラの主人はヨシユキ様になりました」


 俺の左手首にレイラの首の文様と同じ文様が刻まれた。


「手続きは以上です。

 お買い上げ誠にありがとうございました」


「レイラ、俺はヨシユキ。

 これからよろしくね」


 彼女の手を取るが、視線が合わない。


「……よろしくお願いします、ご主人様」


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