○13章 融合する新旧エンタメ ~スマホが全部悪いで済めば楽は楽~

 ライトノベル創世記は何をもってしてライトノベルとするのかが議論として盛り上がった。そしてまた、何をもってしてライトノベルとするのかの見解が一致しない時代がはじまる。そんな2013年以降の荒波に船を漕ぎ出そう。


◆右手に現代ラブコメを、左手に異世界転生を◆


・2013~14年の小説戦線

「エロマンガ先生/伏見つかさ」「安達としまむら/入間人間」

「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?/聴猫芝居」

「この素晴らしい世界に祝福を!/暁なつめ」「グランクレスト戦記/水野良」

「空戦魔導士候補生の教官/諸星悠」「甘城ブリリアントパーク/賀東招二」

「再生のパラダイムシフト/武葉コウ」「バーガント反英雄譚/八街歩」

「幼女戦記/カルロ・ゼン」「魔技科の剣士と召喚魔王/三原みつき」

「ニートだけどハロワにいったら異世界につれてかれた/桂かすが」

「盾の勇者の成り上がり/アネコユサギ」「マギクラフト・マイスター/秋ぎつね」

「百錬の覇王と聖約の戦乙女/鷹山誠一」「高1ですが異世界で城主はじめました/鏡裕之」

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ」

「落第騎士の英雄譚/海空りく」「最弱無敗の神装機竜/春日歩」

「銃皇無尽のファフニール/ツカサ」「ランス・アンド・マスクス/子安秀明」

「異世界チート魔術師/内田健」「ナイツ&マジック/天酒之瓢」

「ネクストライフ/相野仁」「灰と幻想のグリムガル/十文字青」

「異世界転生騒動記/高見梁川」「月が導く異世界道中/あずみ圭」

「フリーライフ 異世界何でも屋奮闘記/気がつけば毛玉」「魔導師は平凡を望む/広瀬煉」

「誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~/徒然花」

「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない/鴨志田一」「絶対ナル孤独者/川原礫」

「ゼロから始める魔法の書/虎走かける」「ガーリー・エアフォース/夏海公司」

「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。/時雨沢恵一」「魔装学園H×H/久慈マサムネ」

「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?/枯野瑛」

「ロクでなし魔術講師と禁忌教典/羊太郎」「S.I.R.E.N.-次世代新生物統合研究特区-/細音啓」 

「金色の文字使い-勇者四人に巻き込まれたユニークチート-/十本スイ」

「Only Sense Online -オンリーセンス・オンライン-/アロハ座長」

「軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?/明鏡シスイ」

「デスマーチからはじまる異世界狂想曲/愛七ひろ」「辺境の老騎士/支援BIS」

「世界の終わりの世界録/細音啓」「女騎士さん、ジャスコ行こうよ/伊藤ヒロ」

「Re:ゼロから始める異世界生活/長月達平」「さて、異世界を攻略しようか。/おかざき登」

「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~/理不尽な孫の手」「八男って、それはないでしょう!/ Y.A」

「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術/むらさきゆきや」「居酒屋ぼったくり/秋川滝美」

「僕の文芸部にビッチがいるなんてありえない。/赤福大和」

「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-/志倉千代丸」「異世界魔法は遅れてる!/樋辻臥命」

「宝くじで40億当たったんだけど異世界に移住する/すずの木くろ」

「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~/美紅」「転生したらスライムだった件/伏瀬」

「賢者の弟子を名乗る賢者/りゅうせんひろつぐ」「居酒屋ぼったくり/秋川滝美」

「とあるおっさんのVRMMO活動記/椎名ほわほわ」「THE NEW GATE/風波しのぎ」

「二度目の人生を異世界で/まいん」「異世界居酒屋「のぶ」/蝉川夏」


・2015~16年の小説戦線

「ゲーマーズ!/葵せきな」「暗黒騎士を脱がさないで/木村心一」

「蜘蛛ですが、なにか?/馬場翁」「LV999の村人/星月子猫」

「アルバート家の令嬢は没落をご所望です/さき」「公爵令嬢の嗜み/澪亜」

「妹さえいればいい。/平坂読」「七星のスバル/田尾典丈」

「ようこそ実力至上主義の教室へ/衣笠彰梧」「エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~/東龍乃助」

「賢者の孫/吉岡剛」「りゅうおうのおしごと!/白鳥士郎」

「超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!/海空りく」

「中古でも恋がしたい!/田尾典丈」「精霊幻想記/北山結莉」

「異世界はスマートフォンとともに。/冬原パトラ」

「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。/CHIROLU」

「ウォルテニア戦記/保利亮太」「英雄教室/新木伸」

「ひきこもり姫と腹黒王子/秋杜フユ」「後宮詞華伝/はるおかりの」

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン/暁佳奈」「無属性魔法の救世主/武藤健太」

「異世界食堂/犬塚惇平」「ありふれた職業で世界最強/白米良」

「骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中/秤猿鬼」「境界迷宮と異界の魔術師/小野崎えいじ」

「ワールド・ティーチャー -異世界式教育エージェント-/ネコ光一」

「異世界召喚は二度目です/岸本和葉」「必勝ダンジョン運営方法/雪だるま」

「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…/山口悟」

「魔法使いの婚約者/中村朱里」「異世界転移したのでチートを生かして魔法剣士やることにする/進行諸島」

「田中~年齢イコール彼女いない歴の魔法使い~/ぶんころり」「さようなら竜生、こんにちは人生/永島ひろあき」

「転生したらドラゴンの卵だった ~最強以外目指さねぇ~/猫子」「おかしな転生/古流望」

「本好きの下剋上/香月美夜」「異世界チート開拓記/ファースト」

「魔王の始め方/笑うヤカン」「リビティウム皇国のブタクサ姫/佐崎一路」

「くま クマ 熊 ベアー/くまなの」「俺を好きなのはお前だけかよ/駱駝」

「エクスタス・オンライン/久慈マサムネ」「アサシンズプライド/天城ケイ」

「非オタの彼女が俺の持ってるエロゲに興味津々なんだが……/滝沢慧」

「俺が好きなのは妹だけど妹じゃない/恵比須清司」「没落予定なので、鍛冶職人を目指/CK」

「誰にでもできる影から助ける魔王討伐/槻影」

「弱キャラ友崎くん/屋久ユウキ」「友人キャラは大変ですか?/伊達康」

「月とライカと吸血姫/牧野圭祐」「14歳とイラストレーター/むらさきゆきや」

「今日から俺はロリのヒモ!/暁雪」「異世界拷問姫/綾里けいし」

「アラフォー賢者の異世界生活日記/寿安清」「異世界薬局/高山理図」

「治癒魔法の間違った使い方 ~戦場を駆ける回復要員~/くろかた」

「ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも」「29とJK ~業務命令で女子高生と付き合うハメになった~/裕時悠示」

「魔女の旅々/白石定規」「魔王様の街づくり!?最強のダンジョンは近代都市?/月夜涙」

「剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?/年中麦茶太郎」

「<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-/海道左近」

「モンスター娘のお医者さん/折口良乃」「一華後宮料理帖/三川みり」

「悪役令嬢は隣国の王太子に溺愛される/ぷにちゃん」「転生少女の履歴書/唐澤和希」

「傭兵団の料理番/川井昂」「現実主義勇者の王国再建記/どぜう丸」

「絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで/鬼影スパナ」

「最果てのパラディン/柳野かなた」「黒の召喚士/迷井豆腐」

「とんでもスキルで異世界放浪メシ/江口連」

「Lv2からチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ/鬼ノ城ミヤ」

「転生したら剣でした/棚架ユウ」「聖者無双~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~/ブロッコリーライオン」

「即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。/藤孝剛志」

「私、能力は平均値でって言ったよね!/FUNA」「戦国小町苦労譚 夾竹桃」

「ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない/裏地ろくろ」


・ボカロ小説

「脳漿炸裂ガール/れるりり:原作・吉田恵里香:著」「千本桜/黒うさP:原作・一斗まる:著」

「終焉ノ栞/スズム:著」「イカサマライフゲイム/KEMUVOXX:原作・一歳椿:著」

「セツナトリップ/Last Note.:原作・さつきやまい:著」「告白予行練習/HoneyWorks:原作・藤谷燈子:著」

「厨病激発ボーイ/れるりり:原作・藤並みなと:著」「恋愛裁判 僕は有罪?/40mP:原作・西本紘奈:著」

「桜ノ雨 僕らはひとりじゃない/halyosy:原作・藤田遼&スタジオ・ハードデラックス:著」

「六兆年と一夜物語/ KEMU VOXX:原作・西本紘奈:著」

「ECHO/Crusher-P:原作・日日日:著」「千年の独奏歌/yanagi:原作・波摘:著」」


 だいぶ多くなってしまったが、タイトルの長さでかさましをされている部分もある。それでも多いか。同時多発的・爆発的に各社が刊行競争を行い、ヒット率も高かったということではあるのだろう。

 まずはWEB小説出身でないものから見ていこう。大きく話題になったヒット作としては、お仕事もの要素も絡めた現代ラブコメである「エロマンガ先生」、SF・ファンタジー要素ありの現代青春もの「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」、ファンタジア大賞出身でハイファンタジー世界での学園ものである「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」あたりだろうか。

 「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。」は、「キノの旅」の著者である時雨沢恵一の新作であり、長い長いというがなんぼなんでも長すぎるだろタイトルとしても話題になった。

 逆に「女騎士さん、ジャスコ行こうよ」はシンプルなタイトルの中に誰もが知っている現実の固有名詞を組み込むことで興味を引かせるという方向性での勝負をしており、この時代のタイトル考察もなかなか奥が深い。


 古参ライトノベル・ファンタジーファンが注目したのはやはり「グランクレスト戦記」だろう。「ロードス島戦記」を完結させていた水野良の新作ということで話題となった。

 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は未来のアニメ化&劇場版公開時に大きな話題を呼ぶ作品となり、将棋ものである「りゅうおうのおしごと!」は藤井聡太棋士が登場したことで、現実の将棋界と並べて話題に挙がることにもなる。

 現代を舞台にした作品とハイファンタジー的世界の作品はどちらも出ているが、異世界召喚・転生作品は急増している。

 新文芸(ライト文芸)で流行がはじまっていたお仕事もの要素を取り込んだ作品も多く、「フルメタ」作者の新作である「甘城ブリリアントパーク」はその枠になるだろう。


 ガガガ文庫、GA文庫、MF文庫J、講談社ラノベ文庫あたりが引き続き強い。「落第騎士の英雄譚」「最弱無敗の神装機竜」「銃皇無尽のファフニール」「僕の文芸部にビッチがいるなんてありえない。」「妹さえいればいい。」「ようこそ実力至上主義の教室へ」「月とライカと吸血姫」「14歳とイラストレーター」などはライトノベルらしいライトノベルとして人気になった作品と言えるだろう。また、13年創刊のオーバーラップ文庫からは「灰と幻想のグリムガル」や「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-」が人気作となった。

 かなりの古参だったスーパーダッシュ文庫は14年に刊行停止になったが、同年にダッシュエックス文庫としてリブート創刊しており、こちらからは「モンスター娘のお医者さん」などのヒット作が出た。


 WEB出身作品からはこの時代の特筆枠は後述するとして、一強と呼ぶにも圧倒的なほどに小説家になろう出身作品だらけとなる。老舗ライトノベル・レーベルからの書籍化も増え、「金色の文字使い-勇者四人に巻き込まれたユニークチート-」「Only Sense Online -オンリーセンス・オンライン-」「軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?」はファンタジア文庫発、「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」は富士見書房がWEB小説用として立ち上げた単行本シリーズとして人気作となった(※67)。

 ファンタジア文庫からこれまで見てきたWEBサイトとはまた少し違う場所出身の「ゲーマーズ!」が出てきてはいる。「生徒会の一存」作者の新作だが、違う場所とやらの詳細は後述する。


※67 富士見書房はファンタジア文庫などのブランドは残しつつもKADOKAWAになっていたりする。電撃のメディアワークスも含めて非常に複雑な角川周りの企業変遷物語は掘り下げずに、富士見からは~といった表現を続けるのでご理解を


 アルファポリスやヒーロー文庫は紹介済だが、WEB小説出身の受け皿としてのレーベルを各社が整えだした時代でもある。角川関連は『KADOKAWAの新文芸(※68)』に統合されていくことになるが、ほぼほぼ全ての出版社がライトノベル・レーベルとは別のノベルズや単行本レーベルを発足させていた。新興出版社であるTOブックスは「魔術士オーフェンはぐれ旅」の新装版および続編を展開するなどライトノベル側のレーベルとしての動きをみせたが、同時にWEB小説の展開にも力を入れている。

 ライトノベル前夜に冒険ゲームブックシリーズを展開していた双葉社は14年にモンスター文庫を創設した。漫画で「ヤマノススメ」などのヒット作を持っていたアース・スター エンターテイメントも14年にアース・スターノベルを創刊させて参戦してきている。


 この時代のWEB小説出身組のヒット作は多く、○○が人気を~などのピックアップがまあなかなか難しい。なので、いわゆるなろう系でイメージする王道スタイルとは異なるアプローチで人気が出たものを挙げておくとしようか。「辺境の老騎士」は、ライトノベル創世記あたりの本格的なハイファンタジーものの気風があるという評価を獲得し、「最果てのパラディン」は、転生して第二の人生という形ではなく前世の記憶を持つ主人公というアプローチを採用することで独自の作風を構築している。

 「ナイツ&マジック」は異世界転生先が巨大ロボット概念のある世界であり、なろう系転生ものでありつつも80~90年代におけるファンタジー色が強いロボものの風を感じる作品として注目された。

 「幼女戦記」はArcadia出身のヒット作だ。現実の世界大戦をモチーフにした世界に転生した幼女が戦線に身を投じていくダークファンタジーとして話題作となった。

 「本好きの下剋上」も少女に転生する作品だが、こちらは中世ヨーロッパモチーフ世界に現代の感覚としての書籍を生み出そうという物語だ。高い専門性がある内容への評価もみられる。

 「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」は悪役令嬢ものというムーブメントにおける代表作として認知される作品だ。悪役令嬢というのは少女が主人公となる乙女ゲームにおける性格の悪い当て馬的ライバル役で、男性向けラブコメでもそういう枠の男子ライバルは定番存在なので、そのイメージで大丈夫だろう。

 「ゴブリンスレイヤー」はWEB出身でもやる夫スレという匿名掲示板文化出身だ。やる夫スレというのは様々なオリジナルキャラクターや版権キャラクターをアスキーアート化したものに会話や物語を乗せて楽しむというネット文化(※69)であり、「まおゆう」に近い出自とも言える。TRPGものとして生まれたことも判明しており、TRPG文化・ネット文化・WEBから商業小説へという文化の交差点が生み出したものとしても興味深い作品となる。


 稀有な現象を巻き起こした作品としては「ゾンビのあふれた世界で俺だけが襲われない」を挙げておきたい。初出はノクターンノベルズというR-18が許容された小説家になろうの姉妹サイトであり、15年にゲーム化されていたが、16年にノクスノベルズとして刊行された。この時点では大ヒット作となったわけではなかったが、コミカライズがきっかけで令和のインターネット界隈での大ブームを巻き起こすことになる。


※68 KADOKAWAが15年に発表した概念で、WEB発作品の自社事業に対する取り組み方を具体化したもの。なろう系だけでなくボカロ小説やゲームノベライズも含む。一般的に新文芸というとこれを指すが、本記事では非KADOKAWA作品との関係性や、ボカロ小説などは別物として切り分けたいこと、その他諸々から全く異なる使い方を採用している。ややこしくて本当に申し訳ない


※69 2ちゃんねるがその発信中心地だったが、それ以外の場所で発表するケースも多い。アスキーアートには著作権があるという考え方、共有財産としてオープンかつフリーであるべきという考え方、版権を無断で採用した場合の問題などそこらへんは23年時点でも整備されているとは言えず、グレーでアンダーグラウンドな文化ではある。なお、2ちゃんねるは5ちゃんねると名称が変わっている


 最後にボカロ小説を確認しておこう。PHP、メディアワークス、ファンタジア文庫、MF文庫J、角川ビーンズ文庫などが参戦している。

 特徴としてはボカロ楽曲製作者が執筆するのではなく、原案ないし原作者の位置にして別の者が執筆するケースがメインになっている。

 角川ビーンズ文庫はかなり力を入れて展開しており、そういったところからもボカロ小説というムーブメントのターゲット層が伺える。一方で、「セツナトリップ」はファンタジア文庫刊行であり、男性向けライトノベルも取り込みを模索していた。ライトノベル作家としてキャリア豊富な日日日による作品などもそういったアプローチの1つだろう。


◆出版社が向き合い続けることになる、WEB小説サイトというビジネス◆


 大手出版社のWEB小説事業挑戦として、ファンタジアbeyondを紹介しておきたい。富士見書房が14年に既存の公式サイト内に新設という形でオープンさせたWEB小説サイトだが投稿型ではない。プロ作家や編集部が抱えるセミプロの作品を無料で読めるサイトというコンセプトであり、ジャンプ+やサンデーうぇぶりなどのライトノベル版というイメージが近いだろうか。

 書籍刊行第一弾として「ゲーマーズ!」を輩出した他、ファンタジア文庫に移籍していた「織田信奈の野望」や「神様がいない日曜日」の外伝、「召喚教師リアルバウトハイスクール」の新作、WEB小説出身作家の書き下ろし掲載などなかなかにバラエティ豊かだったが、短命に終わっている。大成功したとは言えなかった部分はあっただろう。だが、KADOKAWAのWEB投稿サイト事業であるカクヨムに与えた影響が小さくないという話はある。というのも、カクヨムの初代編集長とファンタジアbeyondの仕掛け人だった編集者は同一人物であることが判明しているからだ。


 カクヨムは15年にプレオープン、16年より正式オープンとなったKADOKAWAが運営するWEB小説投稿サイトだ。ただちに小説家になろうのシェアを奪い一強を崩したかというとなかなか難しいところなのだが、23年現在まで一定以上の存在感を示し続ける場所となる。企業がWEB投稿作品に対しても専門の賞を設けて既存の新人賞文化とWEB小説文化の良い所取りをしようとする動きも出てきてはいたのだが、カクヨムもWEB小説コンテストを主催しており、第一回ファンタジー部門大賞受賞作として「誰にでもできる影から助ける魔王討伐」が刊行されている。

 富士見書房は14年にこの「小説家になろう」がアツイ!というムック書籍を刊行している。宝島社のこのライトノベルがすごい!を非常にわかりやすく模倣しているわけだが、単発刊行で終わっており、シリーズ化には到らなかったようだ。レーベル編集長×なろう出身作家×ライトノベル作家の座談会が掲載されているなど、ライトノベル史における史料価値は高いとの見方はされている。

 富士見書房は時代の最先端にとりあえず殴りこむがそのまま頂点を取ったりはしないムーブが実に良く似合う(失礼表現)。


 また、WEB小説書籍化のパイオニアであるアルファポリスも14年に小説&漫画投稿サイトをオープンした。それにより、自社サイト投稿作出身の書籍化に力を入れて行くことになる。

 

 さて、この時代の特筆枠となる作品だが、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」「この素晴らしい世界に祝福を!」「Re:ゼロから始める異世界生活」「転生したらスライムだった件」となる。


◆なろう系代表作は本格的なファンタジーかという命題◆


 「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ:著」は、13年にGA文庫から刊行されたライトノベルだ。ダンジョン探索が重要な意味をもつ異世界でのファンタジー作品で、ヘスティアを筆頭に現実世界の神話の神々と同名の存在が重要な役割を担う物語だ。

 初出はArcadiaであり、「幼女戦記」と併せて小説家になろう超一強時代に突入する前のArcadia系最後の大物という表現も出来るかもしれない。ただし、この作品自体はGA文庫大賞に応募されており、そちらでの受賞を経ての書籍化となっている。「アクセル・ワールド」に近い経緯と言えるだろう。

 マルチメディア展開においてはスクウェア・エニックスのガンガンがかなり力を入れており、本編以外にも多数のシリーズ展開を行った。なろう系というWEB小説の文脈、ライトノベル・ファンタジーの伝統的な傾向、「ドラゴンクエスト」などのゲーム・ファンタジーの浪漫などをハイブリッドさせた作品という評価をされており、時代の代表作の1つとなる。紐も流行った。


 「この素晴らしい世界に祝福を!/ 暁なつめ:著」は、13年にスニーカー文庫より刊行されたライトノベルだ。初出は小説家になろうとなる。事故で命を落した男子高校生が女神より異世界転生を持ちかけられ……というなろう系の王道といえる作風だが、チート能力で無双するのではなく女神そのものを異世界転生に巻き込むという独自性が話題となった。

 駄女神というブームを生み出し、他の登場キャラクターの魅力とあわせてライトノベル史上でも上位の大ヒット作となる。思わず笑ってしまうギャグ的描写が巧みな作風であり、その意味では「ゴクドーくん漫遊記」「魔法陣グルグル」「ハーメルンのバイオリン弾き」「南国少年パプアくん」などを継承する存在とも言えるかもしれない。

「SAO」を抱える電撃に対するスニーカーの切り札になったとする見方もある。爆裂も流行った。


 「Re:ゼロから始める異世界生活/長月達平:著」は、14年にMF文庫Jより刊行されたライトノベルだ。初出は小説家になろうとなる。異世界に召喚された男子高校生が主人公だが、いわゆる無双系チート能力などは有しておらず襲撃の前にあっさりと命を落してしまう。だが、気がつくと最初に異世界召喚された状況に戻っており……という、異世界召喚にタイム・リープ要素を組み込んだ作品だ。

 繰り返される死とやり直しをテーマにした作品のため直接的な死亡描写も多く、鬼、魔女、信仰と弾圧などの要素と併せてダークファンタジーに分類されることもある。こちらもライトノベル史上屈指の人気作となった。ゲーム化の際には5pb.やスパイク・チュンソフトといったコンシューマゲーム戦線で豊富な実績を持つメーカーが担当したことも話題となった。双子メイドも流行った。


 「転生したらスライムだった件/伏瀬:著」は、14年にGCノベルズから刊行された小説だ。初出は小説家になろうとなる。先にGCノベルズから説明してしまおう、コンピュータ関連書籍やファミコン書籍などを展開し「ゲーム批評」などで知られていたマイクロデザイン社が改名したマイクロマガジン社が14年に創刊したレーベルだ。いわゆるWEB小説ブームにターゲッティングした新規参戦組となる。

 作品紹介に戻るが、現実世界で死亡した男性サラリーマンが異世界に転生するが、人間ではなくスライムに転生していた……という作品だ。とある理由から人間に擬態できるようになるがその姿は女性よりであり、TS(トランスセクシャル)ものの亜種に分類されることもある。

 ライトノベルの異世界召喚・転生ものは一部の例外をのぞけば少年少女が主人公であることがほとんどで、一種の型となっていた。だが、WEB小説界隈では大人が転生するパターン、転生時に性別が変わるパターン、人間以外に転生するパターンなどさまざまなバリエーション展開がはじまっており、そういった作風の異世界転生ものの代表格ともなっていく。

 その人気と反響は凄まじく、さまざまなマルチメディア展開を含めた総合的なカウントにおいて、ライトノベルおよびライトノベルと親和性が高い作品群の中で23年現在最も売れた作品とされている。また、TRPGからの影響が強いことが作者から明言されてもいる。スライムになって服を溶かす行為も流行った……は嘘です、はい。


 私は12年までをなろう系を含むWEB出身小説の初期伝道期、13年以降をなろう系黄金期と呼んで差し支えないと考えている。そして、なろう系黄金期とはライトノベルにおいてなろう系が完全に主役になった時代であると言い換えても問題ないだろう。その上で本格的なファンタジーとして組み込むか否かという視点が本記事のメインテーマとなる。

 「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」は本格的なハイファンタジー作品であるし、「Re:ゼロから始める異世界生活」はループものやダークファンタジーの名作として評価される傾向もある。「この素晴らしい世界に祝福を!」に「転生したらスライムだった件」はここまで見てきた異世界召喚・転生もののいずれかを本格的なファンタジーとしてありとしていたなら、こちらをなしとする理由を明確に説明できなければならない。


 なろう系黄金期を絶対的なものとしたファンタジーの代表作たち。それを本格的なファンタジーから除外する層にとっては、それぞれの理由があるだろう。作風、文体、レーベルの格、小説としてのクオリティ、自分が愛した時代の作品と別物すぎる、なんか気に入らない、テンプレ模倣がお腹一杯、そもそもライトノベル全部本格から除外派……。本当に色々あるだろう。本記事ではよく聞こえてくるクオリティ面についてちょっとだけ自分語りをしておきたい。


 私は縁があって、某レーベルの新人賞を一次選考から最終選考まで選考員として参加したことがある。ソースの開示はしないので与太話処理で構わないのだが、一次選考で残念ながら落選した作品はやはりどうしてもクオリティ面で『厳しい』ものが大半だった。光るものがあれば二次選考に進むわけだが、最終選考までに落される作品はやはりクオリティ面での落選作が多い。だからこそ新人賞の受賞作はクオリティ保証としての価値が出てくるわけで、これは賞という構造上の不可避案件だろう。

 WEB小説投稿サイトはアマチュアが誰でも自由に投稿できる構造だ。従来のライトノベルに変換した場合は、新人賞に応募された一次選考落選作から大賞受賞作までが全て自由に閲覧できるサイトという考え方も出来る。

 そういったサイトが本当にあったとして、そこに掲載された全作品をクオリティ面で評価することは厳しいと思う。妙な槍玉に挙げられてしまう作品が多く出てくるだろう。

 小説家になろう投稿作とライトノベルとして出版された人気作を比較する行為というのは、そういった意味でフェアではなく、投稿作品全体のクオリティ評価をするのならば、その対比となるべきは新人賞の落選作から受賞作まで全て閲覧できるサイトとなる必要がある、これが私の基本的な考え方だ。


 ライトノベルのヒット作と、WEB小説出身書籍化ヒット作同士でクオリティ比較をしているという人もいるだろう。これは大いにやっていいと思う。商業作品というものはそういうものだ。

 ただ、ライトノベルの歴史的名作とWEB小説出身で書籍化したが歴史的ヒットまで行かなかった作品での比較となるとまた少し話が難しくなる。商業作品として刊行されたライトノベルにもクオリティ面で高い評価を得られずに消えていった作品は無数にあるからだ。ライトノベルの歴史もけっこうな長さになった。本記事のタイトル羅列リストがどんどんと増えていくのを見て、厳選が出来ていない、必要以上に拾いすぎなどと感じた人もいるだろう。ついつい多め・広めにピックしてしまう性格はある。が、それでも相当数の商業刊行作品を削ってもいる。

 なんにせよ、今も有名な歴史的名作は他より圧倒的に優れているからそうなっているわけで、そこに勝たねば価値がないならそれはWEB小説出身かどうかはあまり関係ない話になってしまうだろう。

 クオリティ評価というのはいつだって相対的なものだ。だからこそクオリティ論はファンタジー論などより遥かに慎重に行いたい。そんな与太話だ。


◆第三の小説の本格始動。それは架け橋となるのか◆


 この時代は新文芸(ライト文芸)にも大きな動きがあった。メディアワークス文庫は紹介済だが、14年に創刊100周年となる新潮文庫は暖簾わけとして新潮文庫nexを創刊させている。同じく14年は富士見書房が富士見L文庫を創刊させていて、Lは文芸とライトノベルのダブルミーニングとのことだ。15年創刊の集英社オレンジ文庫に講談社タイガも同じ目的のレーベルだ。

 宝島社の作品は今までライトノベルよりの一般レーベルというふわっとした扱いだったが、新文芸側にカウントされる動きが出てくる。なので、今までは一般文芸枠として紹介していた講談社ノベルズのような作品もここからは新文芸枠として扱いたい(※70)。ここの切り分けは多分に主観的となってしまうが、おおらかに受け止めて頂ければ幸いだ。

 ここに到って新文芸における現代まで続くレーベル戦線が整った感はある。この時代の代表作としては、


「響け! ユーフォニアム/武田綾乃」「櫻子さんの足下には死体が埋まっている/太田紫織」

「絶対城先輩の妖怪学講座/峰守ひろかず」「神様の御用人/浅葉なつ」

「いなくなれ、群青/河野裕」「博多豚骨ラーメンズ/木崎ちあき」

「王女コクランと願いの悪魔/入江君人」「悪魔交渉人/栗原ちひろ」

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする/七月隆文」「君の膵臓をたべたい/住野よる」

「ロード・エルメロイII世の事件簿/三田誠」「宝石商リチャード氏の謎鑑定/辻村七子」

「鎌倉香房メモリーズ/阿部暁子」「紅霞後宮物語/雪村花菜」

「かくりよの宿飯/友麻碧」「アンデッドガール・マーダーファルス/青崎有吾」

「おいしいベランダ。/竹岡葉月」「人狼ゲーム/川上亮」

「これは経費で落ちません!/青木祐子」


 あたりだろうか。「響け! ユーフォニアム」はアニメ化で大きく話題になった吹奏楽青春もので、ライトノベルファン層の人気も獲得した。ファンタジー色の強い作品としては「王女コクランと願いの悪魔」はファンタジア文庫で活躍した作家の新作であり、「ロード・エルメロイII世の事件簿」はTYPE-MOON発の作品として熱狂的ファンを獲得した。

 「君の膵臓をたべたい」と「紅霞後宮物語」は小説家になろう出身だ。後者は新人賞応募受賞後に書籍化した作品だが、小説家になろうから一般文芸や新文芸でデビューするというムーブも多くはないが存在した。

 他にも「冬の巨人」「ひとつ火の粉の雪の中」「こちら、郵政省特別配達課」といった過去ライトノベル作品を再刊行するなど、男子ライトノベル読者層に訴求しようとする動きが見られた。富士見ミリテリー文庫作品や、推理小説界の大家である島田荘司作品なども刊行された。


※70 逆に一般文芸レーベルが刊行しているなろう系異世界召喚・転生ものなどは既にライトノベル紹介枠に組み込んでいます


 「かくりよの宿飯/友麻碧」は作家の経歴込みで特筆したい作品だ。著者は別名義で小説家になろうへ小説を投稿しており、アルファポリスから書籍化もされていた人物だ。こちらは女性人気が高かったようだ。別に異世界転生もの作品も投稿しており、そちらはファンタジア文庫から「メイデーア魔王転生記 -俺たちの魔王はこれからだ-」として刊行された。男性向けなろう系転生ものとしての売り出しだったが大ヒットとは行かなかったようだ。そこまでなら失礼ながらよくある話かもしれない。だが、著者はそれで富士見書房との縁が切れず、富士見L文庫から今の作家名で新作を発表することになる。そして「かくりよの宿飯」はアニメ化もするヒット作となり、女性人気が高い新文芸作家として地位を確立させるに到った。


 なろう系黄金期は青田買いの過熱期とも言われている。投稿開始から書籍化まで1~2年の作家が多く、1年以内も珍しくない。半年以内で商業デビューという事例もある。

 編集が適当に拾ってきて売れれば丸儲け、こけたら縁切り、セカンドキャリアや作家人生のフォローなにそれ? みたいなそういうネガティブイメージを持っている読者も多いだろう。実際にそれに近いスタンスの出版社や編集部は存在したようだ。一方で今紹介したような、商業作家として大成するまで付き合いが継続し、レーベルをまたいで書き下ろしの新作でヒット作を生み出すという事例も多くはないだろうが存在した。

 なろう系やなろう出身作家を語る時は、そういう動きも確かにあったことは認識しておきたい。

 また、この事例だけでどうこうという話ではないが、新文芸は年数を経るごとに男性向け傾向の作品が減り、女性向け傾向のものが増えていく。ライトノベルと一般文芸の間というコンセプトで始まったレーベルの中からは、よりはっきりと少女小説を卒業した大人の女性向けレーベルへと方針転換するところも出てくるようになる。


 他の動きもざっと見てしまおう。WEB小説というのは日本だけのムーブメントではない。中国では14年より「異常生物見聞録」という作品投稿がはじまっており、将来的にアニメ化に到る。韓国でも16年より「俺だけレベルアップな件」という、なろう系と親和性が高い作品の投稿がはじまっていた。


 80年代からSFや海外ファンタジー、あるいは推理小説などを愛好する層によく知られた出版社として東京創元社があるのだが、自社60周年記念事業として15年より創元ファンタジイ新人賞を主催している。こちらの第一回受賞作である「魔導の系譜」は本格的なファンタジー小説として注目された。角川文庫からは「わが家は祇園の拝み屋さん」がヒット作となった。


 海外からの動きも紹介しておこう。15年にアメリカで刊行された「ドラゴンの塔」は16年に静山社より翻訳版が刊行され、エピックでヒロイックな海外ファンタジーファンを喜ばせた。児童文学からは「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」を挙げておきたい。


 なろう系を主役とするライトノベル的ムーブメントは、23年まで大きく形を変えることはなく続くことになる。現在の小説ファンやファンタジーファンが『なろう系が~』と語る時は、その多くがこの時代に構築されたものを指しているだろう。

 そしてゲーム業界でもソシャゲという新勢力を中心に似たような事象が起きる。なろう系黄金期は、視線を変えればソシャゲがエンタメの主役として確定した時代でもあるのだ。


◆美少女擬人化戦線、最大戦速◆


・2013~14年のコンピュータRPGとソシャゲ戦線

「神様と運命革命のパラドクス/日本一ソフトウェア」「魔女と百騎兵/日本一ソフトウェア」

「フェアリーフェンサー エフ/コンパイルハート」「~聖魔導物語~/コンパイルハート」

「ドラゴンズクラウン/アトラス」「デモンゲイズ/角川ゲームス」

「エクステトラ/フリュー」「巡界のクレイシア/ケムコ」

「星霜のアマゾネス/アークシステムワークス」「モンスターストライク/ミクシィ」

「艦隊これくしょん -艦これ-/角川ゲームス・C2プレパラート」「千年戦争アイギス/DMM」

「チェインクロニクル/セガ」「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ/コロプラ」

「ディバインゲート/ガンホー」「神獄のヴァルハラゲート/グラニ」

「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル/ブシロード」「鬼斬/サイバーステップ」

「ブレイブ フロンティア/エイリム」「魔導巧殻 ~闇の月女神は導国で詠う~/エウシュリー」

「魔法少女リィ -淫魔の試練場-/ルナソフト」「超ヒロイン戦記/バンダイナムコゲームス」

「禁忌のマグナ/マーベラス」「NAtURAL DOCtRINE/角川ゲームス」

「限界凸記 モエロクロニクル/コンパイルハート」「魔都紅色幽撃隊/アークシステムワークス」

「チャイルド オブ ライト/ユービーアイソフト」「剣の街の異邦人/エクスペリエンス」

「シャドウ・オブ・モルドール/ワーナー エンターテイメント ジャパン」

「ハースストーン/ブリザード・エンターテイメント」「グランブルーファンタジー/Cygames」

「白猫プロジェクト/コロプラ」「城姫クエスト/GREE」

「消滅都市/Wright Flyer Studios」「かんぱに☆ガールズ/DMM」

「御城プロジェクト/ DMM」「V.D. -バニッシュメント・デイ-/DMM」


・2015~16年のコンピュータRPGとソシャゲ戦線

「ゼノブレイド/任天堂」「幻影異聞録♯FE/任天堂」

「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城/スクウェア・エニックス」

「インペリアル サガ/スクウェア・エニックス」「Bloodborne/SCE」

「東亰ザナドゥ/日本ファルコム」「レイギガント/バンダイナムコ」

「アイドリッシュセブン/バンダイナムコ」「よるのないくに/コーエーテクモゲームス」

「魔壊神トリリオン/コンパイルハート」「ウィッチャー3 ワイルドハント/スパイク・チュンソフト」

「イグジストアーカイヴ -The Other Side of the Sky-/スパイク・チュンソフト」

「グランキングダム/スパイク・チュンソフト」「オメガラビリンス/ディースリー・パブリッシャー」

「モン娘☆は~れむ/フリュー」「レジェンド オブ レガシー/フリュー」

「UNDERTALE/トビー・フォックス」「ナイトアンドドラゴン/Shinjiro Nakagawa」

「刀剣乱舞/DMM・ニトロプラス」「Fate/Grand Order/アニプレックス」

「プリンセスコネクト!/サイバーエージェント・Cygames」「リトル ノア/Blaze Games」

「バトルガール ハイスクール/コロプラ」「ファントム オブ キル/Fuji&gumi Games」

「幻獣契約クリプトラクト/バンク・オブ・イノベーション」

「ゴシックは魔法乙女?さっさと契約しなさい!?/ケイブ」

「ブレイブソード×ブレイズソウル/グリモア」「トーラムオンライン/アソビモ」

「神のラプソディ/エウシュリー」「グリムノーツ/スクウェア・エニックス」

「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ/スクウェア・エニックス」

「神獄塔 メアリスケルター/コンパイルハート」「クロバラノワルキューレ/コンパイルハート」

「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団/日本一ソフトウェア」「The Banner Saga/Versus Evil」

「Pokémon GO/ナイアンティック・ポケモン」

「Shadowverse/Cygames」「誰ガ為のアルケミスト/FgG」

「オルタナティブガールズ/サイバーエージェント」「FLOWER KNIGHT GIRL/DMM」

「神姫PROJECT/DMM」「セブンナイツ/ネットマーブルジャパン」


※一部メーカー名の省略・統合などあり


 リストから省略されている人気シリーズものはこの時代も安定して新作を出しているが、RPGに起き始めていた変化としてはアクションRPG主役時代への移行だろうか。「ゼルダの伝説」の初代をRPGとするかの議論は置いておくとしても、「ハイドライド」など、初期にはアクション系が強かったRPGは黄金期にドラクエ型とも呼ばれるようになるスタイルを定着させ、それは海外ではJRPGなどとも呼称された。その流れと勢いもすっかり落ち着いたところで、MMOの台頭、オープンワールドの発明などを経て、RPGの主流は再びアクションに戻りつつあった。

 「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」はシリーズ初のアクションRPGであり、スクウェア・エニックスとドラクエ開発陣もトレンドと向き合っていることを感じさせる。また、「ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ」という、「Minecraft」を大いに参考にしたと見られているタイトルも出している(※71)。


※71 この作品が出る前にMinecraftで動くスクウェア・エニックス未許諾のドラゴンクエストMODが出ていたなどもあるはある。MODというのはゲームの動作やビジュアルなどを改変させるデータやプログラムのことで、非公認・非公式も多い


 「Bloodborne」は「DARK SOULS」のフロム・ソフトウェアも開発に参加したダークファンタジーなアクションRPGであり、世界的なヒット作となる。

 「ウィッチャー3 ワイルドハント」は初代を紹介してないことも含めて少し説明が必要なタイトルだ。原作は86年発表のファンタジー小説であり、ならばライトノベル前夜の80年代海外ファンタジーブームの枠で取り上げるべき作品ではとなるのだが、日本語翻訳版が刊行されるのは2010年代に入ってからであり日本での認知は古いとは言えないところがある。世界的に高い評価を得てシリーズ代表作ともなった3作目から国内で知られるようになったと言える作品だろう。


 「スカイリム」は既に紹介したが、10年代のコンピュータゲームは海外産ゲームが大きく台頭してきて主役交代を狙っていた転換期でもあり、FPSの発明とそこからのムーブメントなどはもっと前の時代からあったとしても、ファミコンやスーパーファミコン時代にはニッチでマニアックな枠ともされていた『洋ゲー』が、メインストリームになりつつある時代でもあった。

 「UNDERTALE」はJRPG愛に溢れた海外産インディーズRPGという作品だ(日本語版発売は17年)。これまでも同人作品・フリーゲーム・Steamの台頭は紹介してきたが、メジャーと同等あるいはそれ以上にヒットするインディーズ世界という認識が芽生えるきっかけの1つともなる。


 そして、国内ゲームで最も勢いがあったのはソシャゲだ。ガラケーからスマホへの移行が急速に進む社会情勢の中、PCブラウザゲームとスマホ対応ソシャゲから、ソシャゲ黄金期の主役とでもいうべきタイトルが現れてくる。「艦隊これくしょん -艦これ-」「モンスターストライク」「グランブルーファンタジー」「刀剣乱舞」「Fate/Grand Order」が今回の特筆枠となる。


 「艦隊これくしょん -艦これ-」(以下:艦これ)は角川ゲームスとC2プレパラートが開発し、13年より運営されているPC-ブラウザ型ソシャゲだ。DMMでプレイ可能となる。16年にスマホアプリ版もリリースされた(※72)。さらに同年には家庭用ゲーム版の「艦これ改」や、TCGアーケード版などと展開された。

 現実の歴史に存在する戦艦などを美少女として擬人化した作品であり、社会現象と言ってよい大ブームとなり、ブラウザ型ソシャゲの代表格、擬人化ソシャゲブームの火付け役となった。ゲームプラットフォームとしてのDMMの名を高めた作品でもある。

 女体化という概念なら「戦国乙女」「恋姫†無双」「織田信奈の野望」だけでなく、江戸時代の「傾城水滸伝」や昭和末期の「幕末純情伝」など、前例が多くあるジャンルではある。史実上の兵器を美少女擬人化した「萌え萌え2次大戦(略)」も紹介済だが、「艦これ」の登場と大ヒットにより、新たなジャンルとしての認識と定着が過去にない勢いで行われ、そのフォロワーや模倣とされるソシャゲが大量に登場することになる。

 それはシステム面の模倣、美少女擬人化部分の模倣、戦艦の美少女化ものとしてのフォロワーと多岐に渡っていく。


 艦隊擬人化枠のフォロワー作品としては海外発の「戦艦少女R」や「Battleship Girl -鋼鉄少女-」が挙げられるだろう。ただし後者は09年発表のイラストを元に11年に漫画化された作品が原作であり「艦これ」より古い。「鋼鉄少女」が「艦これ」開発に影響を与え、その「艦これ」をリスペクトしたのが「鋼鉄少女」のソシャゲ版という話はある。

 いずれにせよ、以降の時代はガラケーソシャゲ黄金期に「怪盗ロワイヤル」が果たしたような役割を「艦これ」が担って行くことになる。


※72 角川ゲームスの開発参加は2016年までとされるなど、現在はまた体制が異なる。DMM.comはDMM GAMESの設立、EXNOAへの改名といった変遷があるが、原則DMM表記で進めさせて頂く


 「モンスターストライク」(以下:モンスト)は13年よりミクシィが運営するスマホ用ソシャゲアプリだ(※73)。ファンタジーRPGにしてピンボール風アクションゲームにしてガチャ要素があるソシャゲであり、パズルとピンボールはだいぶ別物としても、「パズドラ」を意識したフォロワー作品とは言われている。

 ミクシィはSNS最初期時代に日本でその概念を普及させたコミュニティツールとして大躍進したが、SNSの開拓者ゆえにゲームに特化するというアプローチは後手組だったとも言われており、ソシャゲ黄金期を迎えた10年代にはけっこうな苦戦を強いられていた。「モンスト」はそういった状況のミクシィを救った救世主作品として、ミクシィがソシャゲ戦線で戦っていく切り札ともなっていく。


 「パズドラ」「モンスト」、そしてソシャゲではないが「LINE:ディズニー ツムツム(14年)」などは、「怪盗ロワイヤル」や「艦これ」を親とするソシャゲムーブメントとはまた異なる、スマホアプリの主役として覇権的地位を築いていく。


※73 一つ前の時代紹介ではガラケーソシャゲとの区別のためiosとAndroidでプレイ可能で~など入れていたが、この時代以降はスマホ用ソシャゲという表現で必要十分として省略させて頂く


 「グランブルーファンタジー」(以下:グラブル)は14年よりCygamesが運営するソシャゲだ。モバゲーのアカウント登録を行ってプレイ可能なゲームであるが、PCブラウザやスマホブラウザからのプレイも可能であり、アプリ版リリースも行っている。16年にはグリーやDMMアカウント登録からのプレイも可能になっている。ブラウザゲー、アプリゲー、特定プラットフォーム専売などの枠を超えた遊び方が出来る、入り口の多様さに対応したソシャゲ時代の象徴的スタイルという表現も出来るだろうか。

 ガチャや複数人同士での対人ランキングバトルといったシステム、キャラクターや世界観など様々な部分で自社先行作である「神撃のバハムート」を継承しており、同ビジュアル同名キャラなども実装された。古戦場という対人イベントは、23年現在もSNSを賑わすトレンドワードとなっている。


 「グラブル」は今のソシャゲの型を作ったという表現をされることもある。古戦場という存在もそこに含まれるだろうが、ガチャ面での現象が大きいだろう。「神撃のバハムート」を継承していると書いたが「アイドルマスター シンデレラガールズ」を母体としている要素も多く、青天井でのガチャ現金投資問題、余りにも強力なキャラクターを実装後弱体化とそれによる返金問題、干支をテーマに取り逃すと復刻は12年後というキャラクターの実装(後に頻繁な復刻ありに変更)、それらを受けてのガチャ天井実装、限定ガチャシステムやサプライズガチャチケットという集金面の洗練など、そういった要素の象徴としても認識されていくことになる。

 課金問題などはMMO時代から存在していたし、「パズドラ」などでも似たような事案は発生していたので、全てがCygames発だとか「グラブル」発だという話ではもちろんないが。

 それはそれとして独自のゲームシステム・世界観・物語への評価も高く、「ファイナルファンタジー」や「バスタード」などのファンタジー黄金期作品をリスペクトしている作品でもあることから、ソシャゲ時代の本格的なファンタジー作品という評価・認知も定着することになる。

 

 「刀剣乱舞」はDMMとニトロプラスが共同で制作し、15年より運営されているPC-ブラウザ型ソシャゲだ。DMMでプレイ可能となる。16年にスマホアプリ版もリリースされた。日本刀を擬人化したゲームであり「艦これ」のフォロワー枠ともされている。実際にシステム面で「艦これ」を参考にしていると思われる要素が多い。だが、重要な差異も存在する。美少女・美女への擬人化ではなく美少年・美青年への擬人化であることだ。

 国家を男子擬人化させて描いた漫画の「ヘタリア Axis Powers(10年)」(※74)や、「文豪ストレイドッグス」などこの方面でも前例はあるのだが、ソシャゲとしての大成功だけはなくアニメ・映画・漫画・小説・舞台など多方面でヒットすることで、女性向け男子擬人化もの最大の成功作とされるまでに到る。題材が歴史上の日本刀であることから、00年代より顔を出すようになっていた歴女という概念やブームもヒットの後押しとして機能したとする研究もある。

 「艦これ」フォロワーにして「艦これ」並みの地位を打ち立てたほぼ唯一の作品という評価をされることもあり、以降に出てくる擬人化もの作品の中には「艦これ」よりも本作を模倣・リスペクト元としているものも見られるようになっていく。


※74 初出は06年の個人WEBサイト掲載作品でもある


「Fate/Grand Order」(以下:FGO)はTYPE-MOONによる「Fateシリーズ」の1つであり、15年よりアニプレックスが運営するスマホ用ソシャゲアプリだ。既に多くの熱狂的ファンを獲得している奈須きのこワールドとでもいうべき世界観と物語に加え、歴史上の人物が女体化したりする要素もそちら側のジャンル愛好家に刺さった。その人気は凄まじく、ソシャゲ黄金期は桁違いの売り上げが乱舞したゲーム業界の売り上げ概念崩壊期だったことも手伝って、最も売れた「Fateシリーズ」とも言われている。23年時点でもソシャゲ人気トップ争いの常連だ(※75)。

 マルチメディアに強いアニプレックスによる「Fateシリーズ」としての多方面展開でも大活躍しているが、「FGO」そのものを母体にそこから派生した作品も多い。

 「FGO」から「Fateシリーズ」を知った層、さらにTYPE-MOONを知った層というものも形成されていき、ソシャゲの代表格にしてオタクエンタメ的ファンタジー作品のトップ知名度というような枠へとその人気は広がっていくことになる。


※75 シリーズファンは従来のFateシリーズとFGOは全く異なるものという考え方の者も多い。またFGOのシナリオの全てを奈須きのこが書いているわけではい


 「パズドラ」と「モンスト」、「艦これ」、「グラブル」、「刀剣乱舞」、そして「FGO」は同じソシャゲでも愛好層がそれぞれ異なるゲームとして共存にして競争が成立し、それぞれがソシャゲ黄金期を象徴する作品となっていく(※76)。

 黄金期構築には「アイドルマスターシリーズ」を筆頭とするアイドルもの作品に、「チェインクロニクル」、「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」なども大きく貢献したと言われているが、ここでまたしれっと特筆枠に乗せてないDMM作品を2つ語りたい。「千年戦争アイギス」と「V.D. -バニッシュメント・デイ-」だ。


※76 本記事では原則スルー枠になっているスポーツゲームジャンルである「プロ野球スピリッツA」などもあります。また基本的にどこに顔を出しても大活躍する「ドラゴンボール」などは、ソシャゲ版のヒットタイトルを普通に出していたりとか


 「千年戦争アイギス」は13年よりDMMが運営しているPC-ブラウザ型ソシャゲだ。R-18ゲームとしてスタートし、一般版は後から追加された。15年にスマホアプリ版もリリースしている。ジャンルとしてはタワーディフェンスをベースにRPG要素を独自アレンジしたものであり、PC-R18ゲームの「ランスシリーズ」や、ファミコンSRPGの「ファイアーエムブレム」といったファンタジー黄金期作品へのリスペクトが強い作品と言われている。対象となる作品は大きく異なりながらも、「グラブル」と似ているアプローチと言えるかもしれない。

 ライトノベルを含むファンタジー黄金期を愛した層への訴求力が高く、ドットゲーを売りにしていることからスーパーファミコンドット黄金期愛好層のファン獲得にも成功している。23年時点でも運営が継続している、DMMを代表するファンタジー作品だ。ファミ通文庫からノベライズ、電撃コミックスからコミカライズも出ており、ソシャゲ界の本格的ファンタジーという本記事の視線的には「グラブル」と並べて語る価値があると考えているため紹介させて頂く。

 完全に特筆枠と同じ扱いになっているが、それでも前述の特筆枠と同じ影響力と言うのは……さすがにえこひいきの極みか。


 「V.D. -バニッシュメント・デイ-」はまた少し違う視線から紹介したい作品だ。DMM発のソシャゲだが、特筆枠と比較して同等の知名度・影響力とは言えない「千年戦争アイギス」と比較してもさらに知名度がある作品とは言えないだろう。

 この作品はソシャゲにおけるストーリー完結と更新停止と過疎とサービス終了というテーマの象徴に成り得ると私は考えている。

 「フロントミッション」「ファイナルファンタジー」関係者である土田俊郎や、「ストリートファイターII」「キングダムハーツ」「ファイナルファンタジー」関係者である下村陽子が関わった作品であり、システム的には「艦これ」フォロワーものに位置したが、物語に力を入れているソシャゲとしてマイナーながらコアファンを獲得していた。

 打ち切りではない最後まで描き切る形でメインストーリーを完結させており、それは当時のソシャゲとしてはかなり稀有な判断であったが、それで同時にサービス終了ということもなく、対人イベント開催などによる運営は継続された。だが、物語完結後にシナリオ系イベント更新がなくなったことでわかりやすくユーザーが減少し、過疎状態を経てサービス終了に到っている。


 「ドラゴンクエスト」とファンタジーと物語という視点でゲームを見て行く旅において、ソシャゲの完結しない物語問題は既に軽く触れた。23年時点では物語が円満完結しているソシャゲも増えた。だが、そうでない作品の方がやはり多い。ソシャゲ黄金期に、物語に力を入れるコンセプトでスタートし、有言実行した結果ソシャゲとしての更新が出来なくなり消滅したゲームが存在したことは、それ自体を示唆的な1つの『物語』として記憶しておきたいと思っている。

 

 ソシャゲ界の象徴的な動きとしてリブートにも触れておきたい。「御城プロジェクト」と「プリンセスコネクト!」はそれぞれ大成功したと言うのは厳しいかもしれない形でサービス終了した作品だ。だが「御城プロジェクト:RE ~CASTLE DEFENSE~」「プリンセスコネクト!Re:Dive」というタイトルで再リリースを行い、どちらも23年時点で継続中のヒット作となった。

 アニメや漫画では打ち切りになった作品が復活した「ドラゴンクエスト 勇者アベル伝説」や「ライジングインパクト」などの事例はあったが、ソシャゲ界ではこのRe戦略というべきものに挑む作品も増えだしてくる。再リリース後も短命に終わってしまう事例も当然出てくるわけだが。


 「Pokémon GO」は位置情報を活用したスマホアプリソシャゲだ。スマホ所有者が実際にいる場所とゲーム内容が連動しており、観光地や特定のスポットでは特別なポケモンが出現したりなどの要素がヒットし、世界的なブームとなった。位置情報ソシャゲとしては「ステーションメモリーズ!」が電車移動を活用したものとして駅メモという通称で固定ファンを生み出していたが、「Pokémon GO」のヒットによりジャンルとしての認知が急速に進むことになる。

 他に、デジタルカードバトルものとして世界的人気作となった「ハースストーン」が出てきている。その「ハースストーン」をリスペクトして生まれたと言われているのが「Shadowverse」だ。


 その他のゲームを見ていこう。

 「サムライディフェンダー」「ガイストクラッシャー」「KILLER IS DEAD」「SOUL SACRIFICE」「サイコブレイク」「ウォッチドッグス」「タイタンフォール」「D4: Dark Dreams Don't Die」「魔神少女 -Chronicle 2D ACT-」「幕末Rock」「サノバウィッチ」「The Order:1886」「夜廻」「殺戮の天使」「Stellaris」「人喰いの大鷲トリコ」「オーバーウォッチ」「被虐のノエル」といったところだろうか。

 

 洋ゲーの台頭を軽く触れたが、ゾンビによる終末を迎えた世界で生きる「ウォーキング・デッド」、クオリティと没入感で世界を驚かせた「The Last of Us」、フランス発スクウェア・エニックス提供の時間ものアドベンチャーである「ライフ イズ ストレンジ」、サバイバルホラー対戦ものの「Dead by Daylight」などの存在が、日本でも洋ゲーが主役となっていく流れの中で存在感を発揮している。

 国産では任天堂の新規IPとして出た対戦アクションの「スプラトゥーン」が大ヒット作となった。

 そういえば「オーバーウォッチ」は拾ったのに「モータルコンバット」や「マーヴル VS. カプコン クラッシュ オブ スーパーヒーローズ」あたりは取り上げていない気がする。「私立ジャスティス学園」とかも。取捨選択で胃が痛い。


 予告はしていたが、まあやっぱりファンタジーRPGを主役にゲームを見るというアプローチは崩壊した感がある。それでもこのスタンスを維持しつつ、23年までたどり着きたい所存だ。


◆アニメ化で跳ねる現象と、連載が人気でなければアニメ化されない現象◆


・13~14年漫画

「ワールドトリガー」「UQ HOLDER!」「双星の陰陽師」「実は私は」「小林さんちのメイドラゴン」「不機嫌なモノノケ庵」「アルテ」「クジラの子らは砂上に歌う」「黒伯爵は星を愛でる」「ブラッディ+メアリー」「ぼくのとなりに暗黒破壊神がいます。」「魔法使いの嫁」「白暮のクロニクル」「ハクメイとミコチ」「くまみこ」「ReLIFE」「王室教師ハイネ」「薔薇王の葬列」「群青戦記」「デビルズライン」「キリングバイツ」「僕のヒーローアカデミア」「サイケまたしても」「現代魔女図鑑」「少女終末旅行」「トモダチゲーム」「架刑のアリス」「勇者が死んだ!」「かつて神だった獣たちへ」「聖骸の魔女」「群青のマグメル」「ダンジョン飯」「武装少女マキャヴェリズム」「剣の王国」「魔女の下僕と魔王のツノ」「まちカドまぞく」「不機嫌なモノノケ庵」「ランド」「コレットは死ぬことにした」「恨み来、恋、恨み恋。」「神さまの怨結び」「ギガンティックガール」「天空侵犯」「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」「ノー・ガンズ・ライフ」「リィンカーネーションの花弁」


・15~16年漫画

「ブラッククローバー」「左門くんはサモナー」「炎炎ノ消防隊」「ソマリと森の神様」「吸血鬼すぐ死ぬ」「とつくにの少女」「グレイプニル」「贄姫と獣の王」「初恋ゾンビ」「妖怪の飼育員さん」「プラチナエンド」「このはな綺譚」「戦×恋」「宇宙戦艦ティラミス」「EX-ARM エクスアーム」「海王ダンテ」「魔法少女特殊戦あすか」「魔法少女なんてもういいですから。」「鬼滅の刃」「約束のネバーランド」「ゆらぎ荘の幽奈さん」「彼方のアストラ」「双亡亭壊すべし」「BEASTARS」「金の国 水の国」「空挺ドラゴンズ」「とんがり帽子のアトリエ」「魔王城でおやすみ」「異種族レビュアーズ」「ヴァニタスの手記」「悪魔のメムメムちゃん」「終末のハーレム」「人狼機ウィンヴルガ」「魔女と野獣」「迷宮ブラックカンパニー」「不滅のあなたへ」「無能なナナ」


 まずは「鬼滅の刃」だろう。少年ジャンプの和風伝奇系バトル漫画枠だが、アニメ化をきっかけに原作とアニメのどちらも大注目される相乗効果を生み出し、10年代エンタメの主役とも言える社会現象にまで到った。

 遅効性SFというキャッチコピーを与えられ、少年ジャンプにありそうでなかった作風を築いた「ワールドトリガー」、紙媒体からWEB配信へと形態を切り替えることになったコミックブレイドがそのタイミングで輩出した「魔法使いの嫁」、新潮社が運営するWEB漫画サイト連載で人気を得た「少女終末旅行」、日本でも根強いファン層がいるアメリカン・ヒーローものをリスペクトした「僕のヒーローアカデミア」、ファンタジー短編の名手として知る人ぞ知る作家だった九井諒子の初長編作品となった「ダンジョン飯」、長くモチーフとして愛され続けている吸血鬼ものをそう来るかと弄くり倒してみせた「吸血鬼すぐ死ぬ」などが話題となった。


 ライトノベルでも挑戦の一例を紹介したが、WEB時代は投稿型が全てではなく企業が運営するWEB読書サイトまたはアプリというものが重要度を増して来ており、ヒット作も少なくない数が見られるようになってきている。

 小学館のサンデーは00年代からソク読みサンデー、裏サンデーなどを仕掛けていたが16年にサンデーうぇぶりを設立している。集英社もかなり早い段階からジャンプBOOKストア!、となりのヤングジャンプ、ジャンプLIVEなどと動いており、14年には少年ジャンプ+をオープンさせていた。

 これらは伝統的な紙の出版社ではない企業が進出してきた背景も大きいだろう。韓国発の漫画・小説サイト&アプリであるcomico、SNS大手のLINEによるLINEマンガ、モバゲーで知られるDeNAによるマンガボックスなどは16年時点でそれぞれ人気勢力となっていた(※77)。

 そういった流れの中、プラットフォーム事業としての電子配信と、紙媒体雑誌の電子化などはやはり異なるものであり、出版社によるWEB配信事業はポジティブな挑戦が理由でない事例もあることは触れる必要があるだろう。採算や損益分岐点といったビジネス上の苦戦から、紙からの撤退としてWEB配信に切り替える。小説や漫画を問わず、商業雑誌という世界はそういう事情と向き合う時代にも突入していた。 


 SNS発漫画というジャンルもここで紹介しておきたい。「ワンパンマン」のようなWEB連載漫画はかなり増えており、一例としてはコーヒーなどの飲料品を美少女擬人化させた「カフェちゃんとブレークタイム」が同人WEB連載として人気を得るなどしていたが、イラストや漫画においてはTwitterが強い存在感を発揮しはじめていた。15年より統一されたコンセプトでイラスト投稿を行っていたあるシリーズは16年に「月曜日のたわわ」というタイトルを与えられ、同年WEBアニメ化もした。さらに未来には商業書籍化に到る。23年現在も隆盛なこのムーブメントはこの時代から増え始めていく。


※77 マンガボックスは講談社も関わっている


 歴史大河系からは「応天の門」「達人伝-9万里を風に乗り-」「アンゴルモア 元寇合戦記」「イノサン」「ペリリュー 楽園のゲルニカ」あたりか。私が勝手に名付けたエンターテイメント活劇大河の枠からは「ゴールデンカムイ」が出てきている。

 他に名前を出しておきたいのは「からかい上手の高木さん」「NEW GAME!」「ドメスティックな彼女」「ヲタクに恋は難しい」「ぐらんぶる」「はたらく細胞」「ゆるキャン△」「寄宿学校のジュリエット」「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」「あそびあそばせ」「ダンベル何キロ持てる?」あたりだろうか。


◆アニメは充実・豊作を超えて大量提供時代へ?◆


・13~16年アニメ

「凪のあすから」「ファンタジスタドール」「革命機ヴァルヴレイヴ」「キルラキル」「ビビッドレッド・オペレーション」「翠星のガルガンティア」「幻影ヲ駆ケル太陽」「魔法少女大戦」「クロスアンジュ 天使と竜の輪舞」「天体のメソッド」「妖怪ウォッチ」「アルドノア・ゼロ」「ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル」「結城友奈は勇者である」「M3~ソノ黒キ鋼~」「白銀の意思 アルジェヴォルン」「スペース☆ダンディ」「えとたま」「ユリ熊嵐」「コメット・ルシファー」「甲鉄城のカバネリ」「ハイスクール・フリート」「終末のイゼッタ」「装神少女まとい」「宇宙パトロールルル子」「クラシカロイド」「クロムクロ」「フリップフラッパーズ」「ラクエンロジック」


 人気漫画やライトノベルがアニメ化されるのは風物詩だが、この時代あたりからはメジャー誌とはいえない漫画雑誌からのアニメ化や、WEB小説出身のアニメ化が加速的に増えて行く。ライトノベル界がなろう系青田狩りと揶揄されるように、アニメ界もとりあえずきらら(※78)や、ライトノベルが青田狩りしたなろう系をアニメが青田狩りするなどの揶揄もされてしまう一面を持ちはじめていた。

 そういったタイトルは原作紹介と重複するのであまり載せていないため目立っていないかもしれない。だが、実際にはかなり増えている。もちろん、原作付きアニメ化での名作・成功作も多い。


 ファンタジーやSFの色の強いオリジナル作品も気を吐いてはいる。「天元突破グレンラガン」を制作したメンバーが独立して生み出した「キルラキル」や、主人公を切り替えて展開されるシリーズプロジェクトの第二弾だったものがプロジェクト全体の主役になるほどにヒットした「結城友奈は勇者である」、色んな意味でぶっとんだ作品と評価された「ユリ熊嵐」、時代劇にしてダークファンタジーにしてスチームパンクである「甲鉄城のカバネリ」などは話題作となった。


 「妖怪ウォッチ」はアニメオリジナルではない作品だ。マルチメディア展開前提の企画として立ち上げられたもので12年に漫画、13年にゲーム、14年にアニメと続いていったのだが、このアニメ放送で社会現象と言ってよい大ブームを引き起こした。全国の幼児や小学生から爆発的人気となり、それは平成最大の妖怪ブーム到来とも言わるものだったためアニメを取り上げさせて頂く。

 他に名前を挙げておきたい作品としては「たまこまーけっと」「Wake Up, Girls!」「残響のテロル」「SHIROBAKO」「おそ松さん」あたりだろうか。


※78 芳文社刊行の雑誌であるまんがタイムきららとその姉妹誌は、美少女系オタクエンタメに特化した漫画雑誌としてきらら系と呼ばれる。けいおん!などが該当


 映画からは、まずジブリ作品として宮崎駿による本気の引退作(※79)である「風立ちぬ(13年)」と、宮崎親子や高畑勲が関わっていない「思い出のマーニー(14年)」が公開された。

 新海誠は「言の葉の庭(13年)」「君の名は。(16年)」と作品公開したが、「君の名は。」は、オリジナルアニメ映画としてはトップクラスの大ヒットおよび社会現象となった。その枠の絶対的王者はずっと「千と千尋の神隠し」であり続けているため、これにより新海誠という映画監督は作風や立ち居地などを超越してポスト宮崎駿といった見方もされるようになっていく。

 他に、「サカサマのパテマ(13年)」「リトルウィッチアカデミア(13年)」「心が叫びたがってるんだ。(15年)」などが公開され、「ガールズ&パンツァー 劇場版(15年)」は映画館としては異例を越えて異常なロングラン現象なども話題となった。「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(16年)」は、「ハリー・ポッター」の新作でもある位置づけとして人気作となる。


 「この世界の片隅に(16年)」は戦争と空襲がテーマなのだが、07年刊行の漫画が原作となる。こちらは世界的な注目と賞賛を受ける作品となった。

 人気アニメ・ゲーム・漫画の実写映画化も多く行われた時代でもあったりする。そこらへんのタイトルを取り上げるかはなかなか悩んだのだが、まあ今回はやめておくことにする。その理由は色々あるということで。

 

※79 引退宣言(引退しない)は一種の風物詩になっていたが、この時はジブリ社長より正式に引退発表があった。その後、17年に引退撤回が発表された


 ファンタジー論がメインテーマであることを忘れないためにも、重要な海外発作品を取り上げよう。「ゲーム・オブ・スローンズ」である。原作が「氷と炎の歌」というファンタジー小説であることは紹介済だが、アメリカで実写ドラマシリーズが制作され、日本向けの放送が開始されたのが13年だ。クオリティの高いファンタジー世界を堪能できる作品として、ファンタジー愛好家層の多くが絶賛する作品となった。

 歴史大河枠からは「ベン・ハー(16年)」を挙げておこう。原作は1880年発表の古典小説でローマ帝国とユダヤ人主人公と、イエス・キリストを描いた作品だ。アメリカでの人気が高く、何度も映像化されている。1959年版が日本でも世界でも知名度があるためちょっとだけ影が薄い方かもしれない。


 なろう系とソシャゲの黄金期、さらにWEB漫画の台頭期としてこの時代を見たわけだが、映画版の「ハリー・ポッター」と「ロード・オブ・ザ・リング」のブームも落ち着いていたところで「ゲーム・オブ・スローンズ」が入ってくるなど、エピックでヒロイックなファンタジーはなんだかんだでしっかり生き残り続けているという印象はある。

 実写創作の表現力・技術力が上がっていることも関係しているのだろうが、西洋風ファンタジーはやはり海外で作られると大変映える。日本人が作る侍や忍者ものが欧米人に刺さるのと同じ理屈ではあるのだろうが。

 一方で、海外オタク界隈ではなろう系全体を『ISEKAI』と呼ぶムーブメントなども起き始めている模様だ。本格的なファンタジーを探し、感じ、見つけ、見失い、また探す旅も遂にここまで来た。残るは17年から23年のみ。さあ旅の終わりへと、その一歩を……踏み出す前にまた私の悪い癖が出る。

 「ロードス島戦記」と「ドラゴンクエスト」をスタート地点にするために必須の前夜として拾っていたアナログゲームのムーブメント。これを完全に放置している。

 ファンタジーに対してとことん向き合おうとする旅なのだから、このままではやはり心残りになるだろう。最後の時代に進む前に、コンピュータRPGとライトノベル誕生以降のアナログゲームの変遷をざっくりとでも確認しておきたい。

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