第22話/負けヒロインと僕が脳内当てゲームをした時
エイルに言わなければいけない事は何か、突如として始まった脳内当てゲームに対し楯が真っ先に取った行動とは。
ソファーに座る彼女の隣に座り、その華奢な肩を抱きしめて金髪を指で弄び。
「――筋トレはもう十分だ、そろそろ僕のお姫様の髪を梳こうかと思うんだけど……どうだい?」
「えっ、ホント! いやー、どうしてもって言われたら断れないわねぇ、はよはよ櫛もってきて姫の髪を綺麗にするのよ!!」
「ははー! ところでヒントなんかは……」
「んー? 聞こえないわねぇ、姫は我が王子が甘やかせてくれたらもしかしたら…………」
「おお姫! この楯王子が思う存分甘やかそうぞ! 食べる時はあーんで、お風呂では体を洗い、トイレもお世話を誓う!!」
「欲望だだ漏れしてない王子様?? お風呂とトイレはダーメっ」
案の定指摘され、楯は悔しそうな顔。
しかし彼女の金髪を梳く手つきは優しく、エイルはうっとりとした顔をした。
「くっ、…………じゃ、じゃあせめて着替えのお手伝いを……、僕にご褒美をくださいませ!!」
「もー、アンタがアタシを甘やかすんでしょーが!! なし崩しでエッチな方向に持って行こうとするんじゃないわよ!」
「ならせめてヒント!! ノーヒント脳内当てゲームは難易度高いって!!」
そう言いつつ、彼は彼女の髪にキスの雨を降らせた。
エイルはまんざらでもない顔をし、フフンと胸を強調するように腕組みをする。
今日の彼女の部屋着はオフショルで、斜め上から見る楯はとても眼福であったが同時に生殺しで。
「…………えっち、そんなにアタシの胸が好きなの? 触りたい? でもだーめっ、あの言葉を言ってくれなきゃだめー、しかもただ言うだけでもだーーめっ!」
「ははぁ、ヒントだね? つまり心を込めて何かを言う…………その白い肌、大きな胸を揉みしだきたい!! 鷲掴みさせてよ!!」
「胸元にキスマーク付けるだけなら、でも首筋とか見える所はダメ、隠すのって結構面倒なのよ?」
「うぐッ、生殺し……したいけどしたら僕が苦しくなるやつだッッッ!! なんもかんも君が魅力的すぎるのが悪い!! 目を詰むっても声がッッッ、触らなくても手に柔らかでしっとりとしてすべすべの肌が! おっぱいやお尻の柔らかさだって!!」
「ふふっ、アタシにほんと夢中ねぇ、かーっ、アタシって悪女だわー、一人の男を骨の髄まで夢中にさせちゃった悪女だわー!」
「いやマジで生殺しは悪女の所行では?? 僕の股間が爆発するのも時間の問題だよ??」
「暴発したら早漏って言ってあげる」
「くっ、ちょっと言われてみたい自分が恨めしい!!」
悔しそうな楯を見て、エイルは組んだ腕を上下に動かし自慢の巨乳をぷるぷると揺らす。
揺れる度に彼の視線は首ごと動き、彼女に背筋がぞくぞくするような快楽を。
男を手玉にとる快楽を与え、もはや気分は有頂天。
「ほれほれ、ほれほれー、触りたいでしょー、でもだーめ、アンタはどれだけ惨めにお願いしても触っちゃダメーー。ま、アタシだって鬼じゃないわ、もう一押しあれば色々と考えてあげてもいい」
「マジか!!」
「じゃあアンタの膝に座るから櫛を置きなさいよ」
「オッケー! …………あれ??」
「はー、このカッタイ胸板がイイのよねー、すりすり、すりすり」
「…………ねぇ、なんでこっち向いて座ったの? どうして胸を押しつけながら太股指先でつつーってしたり顔をすりすりするんだい?」
「それはねー、アンタの思考を邪魔してアタシはイチャイチャ欲が満たされる一石二鳥だからよっ」
「ガッッッデム!!」
不味い、これは非常に不味い、本当に手玉に取られている。
こんなに好き好きビームを出されて、誘惑されているというのに生殺しで脳内当てゲーム。
ヒントは今のところ、心を込めて何かを言うという事だけで。
(うおおおおおおおおっ!! おっぱいの感触!! なまじ感触を知ってるからこそ耐え難い!! 胸にエイルの顔があるから髪のいい匂いとかも!! か、考えろ!! なにかある筈だ!!)
(あー、この汗臭さがクセになるのよねぇ……。相性の良さがあるんだって実感するわぁ)
(わからない……何が正解で何が……くっ、このまま抱きしめちゃダメなのか!! こんなに甘えられるのが辛いなんて!! まずは抱きしめていいかどうかから――――)
(幸せぇ、……でもこのままだと何も進まないわよね、どうやったらコイツから愛の言葉をもう一度聞けるのかしら、それに…………前に言ってた恩とやらも気になるし)
抱きしめたくて手をワキワキさせる楯、エイルは彼の心臓の鼓動の音を聞きながら左手で胸板に“の”の字。
完全に無意識の行動であったが、彼にとっては効果が抜群、可愛くも妖艶な誘惑に他ならない。
べったりくっついたままではダメだ、他の突破口を見つけないといけなくて。
「――――正直に言っていい?」
「なぁにー?」
「もう襲いたくて限界なんだけど」
「それマジな声ねぇ、でもま、アタシもそう言われて易々と体を許すオンナじゃない訳だし?」
「僕にだけ簡単に許してもいいんだよ?」
「焦らした方がアンタの中で価値が上がると思わない?」
「価値が上がると強引にでも手に入れたくなるって思わないかい?」
二人の間にピリっとした空気が流れた、それはエイルにとって非常に不味い流れだ。
闘志が燃え上がると勢いでセックスしてしまうかもしれない、そうしたら愛の言葉をもう一度言って貰うことを快楽で忘れてしまうかもしれなくて。
ならば、ここは少しでも時間を稼ぐべきだ。
「頭なでなでして、いっぱいヨシヨシしてあげるから何とかならない??」
「男がそれで止まるとでも!! 泣くぞ? 泣いちゃうぞ? 土下座して先っぽだけって泣くぞ??」
「それ絶対に最後まで止まらないヤツでしょおバカ!!」
「いいのかい、そんなコト言ってさ……僕がベッドの王子様になるまで後少しだぜ?」
「んー、そしたら体だけが目当てなのねって泣くけど??」
「……」「……」
奇妙な沈黙が流れた、ずるい、それはとてもズルい。
楯にとってエイルの言葉は致命的だ、そしてエイルにとってはそれもイイかもと。
しかし彼はそう言うものの無理強いして抱く趣味はなく、彼女としては目的を果たしたくて。
「妥協案を考えましょう」
「そうだね、僕らは妥協すべきだ」
「ちなみに聞くけど……一発ヌいたら収まる?」
「君が自分の体がもの凄く魅力的なの理解して?? そんでもって、僕が君だけにしかこういうコトを言わないのも理解してどうぞ??」
「くッッッ、存在自体が罪だなんて……アタシはなんて魅力的なオンナなの!!」
楯の言葉はエイルにとってクリティカルヒットであった。
その上、さっきから散々上手いところまでもう一度聞きたい言葉を掠めてる気がする。
あともう一押し、そして飴も与えないといけない。
「そうねぇ……ぼちぼちお昼だし、ご飯食べてからもう一度考える?」
「今のままだと口移しして食べさせるけど、それでもいいなら」
「少しは性欲抑えて??」
「なら少しは体を離してどうぞ?? でも離れたら追いかけたくなるから注意してね!!」
「アンタねぇ……もー、しょーがないヤツなんだからぁ」
全力で求められつつも頑張って自制する楯の姿に、エイルは思わず嬉しくなって笑みをこぼす。
ならば少しでも刺激せぬよう、慎重に、しかして手早く彼の膝の上から退いた。
そして、そろりそろりと彼から離れ。
「…………わかった、お昼にしましょう。ただし! 普通に食べれるなら、…………午後はベッドの上でお楽しみよ!! アンタの好きにしていいわ!!」
「ほう! ほう!!」
「そして……お昼ご飯にはお酒がつくわ!! お酒にあうお昼ご飯を作りなさい!!」
「オッケー! わかった!! うおおおおおおおっ、僕はお昼ご飯を作る、美味しいのを作るんだ!!」
こうして、楯は昼食のメニューを考えるためにスマホ片手に冷蔵庫の中と睨めっこを始めたのだった。
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