第10話 あなたを調査する(陸奥志津香視点)
空照高校、通称デレ高までの距離をコウと歩く。
他愛もない話しをしたりして通学するこの時間が好きだ。
出来ることなら、毎日でも一緒が良いんだけど、バスケも上手くなりたい。
だから、朝練をサボるなんてことはしない。
今日みたいな朝練がない日はとても貴重な日。
蒼との通学時間は、常にデレさせるチャンスと意識はしているけど、本日も、蒼との朝の通学時間が楽しすぎて、デレさせるのを忘れちゃった。
♢
楽しい時間が過ぎて、二年八組の教室に入る。
ここが私と蒼のクラス。
進級して二ヶ月が経過した。
すっかりクラスの仲も良くなってきている。
あの、神に感謝の祈りを捧げた日からもう二ヶ月経過したのかとしみじみ思う。
一年の頃は蒼と違うクラスだった。
そこで、色々と同じクラスになれる方法を試行錯誤してみた。
バスケ部の先輩から「選択授業とか被るとクラスが一緒になりやすいよね」なんて情報を嗅ぎつけ、蒼の選択授業をリサーチ。
出来る限り蒼と同じにした。
結果は最高のものとなる。
見事、二年は同じクラスになることに成功した。
二年は学校のイベントが盛り沢山。そんなイベントを蒼と共に過ごせるなんて、本気で神に感謝の祈りを捧げたよ。
クラス表を見た時、蒼がガッツポーズしてたから、私と同じ気持ちなのかなって思って、
「もしかして、私と一緒になれて嬉しい?」
って聞いたら、
「おう!」
って普通に答えてきやがるの、めっちゃ尊かったわ。あやうく尊くて溶けそうになったよね。
「じゃあね。蒼」
「ああ」
流石に席まで近くとはいかないみたい。
蒼の席は廊下側の真ん中の席。
私は真ん中の一番後ろの席なので、結構離れちゃった。
席まで近くとなると上手く行き過ぎて逆に怖いから、これくらいが丁度良い。うん。
──はぁ。隣の席ならもっとお話しできるのに……。
って、だめだめ。これ以上は欲張りってもん。
同じクラスになれただけで神ってるレベルだから、これ以上は贅沢だよね。
自分の席に座って、チラリと蒼の方を見る。
相変わらず一人でクールに座る姿は、写真で収めたいくらいに映えている。
写メったろかな。
「おはおは〜。志津香」
「おは〜。志津香」
席に座って鞄を机の横のフックにかけると同時に、同じ部活仲間の
千佳は長い髪をポニーテールにした、いつも元気な女の子。
友梨はミディアムボブカットの、いつも気怠げにしている女の子。
「おはよう。千佳。友梨」
普通に朝の挨拶を返すと、千佳が人懐っこい笑みで私の前にしゃがみ込み、犬みたいな顔で聞いてくる。
「今日も彼ピとラブラブ登校?」
「彼氏じゃないっての」
いつものやり取りに少し呆れながら答える。
いつになったら彼氏ではなく、旦那とか婿とかといじってくれるのやら。
「彼氏じゃないか……。でも志津香。さっさと付き合わないと誰かに取られるんじゃないか?」
友梨の言葉に、ピキッと顔をしかめてしまう。
「取られる?」
「考えても見ろ。あのクールな水原が他の女にモテないわけないだろ」
友梨の言葉に千佳が思い出したかのように天井を見ながら言った。
「そういえば水原くん、この前七組の子に告──ひっ!」
言葉の途中に千佳は悲鳴を上げた。
「志津香! 顔! かーおっ! 怖いって」
「おっとっと」
友梨が、どぅどぅと優しく肩を叩いてくるので表情を戻す。
「噂だよ、噂。そんな噂があったとか、なかったとかってだけだよ」
「でも、火のないところに煙は立たないっていうだろ。うかうかしてると他の女に取られるぞ」
友梨の忠告に千佳も乗っかる。
「そうだよ志津香。サクッと告って、パッと付き合って、ドガッと青春しちゃいなよ!」
「しかしだ千佳。そうなると私達は用済み。志津香と遊べなくなるぞ」
「うええ!? それは嫌だあ! 志津香! 遊ぼうね!? ね!?」
泣き出しそうな千佳と友梨を真っ直ぐ見て言ってやる。
「私が千佳と友梨を捨てるはずないでしょ」
そういうと「かっけぇ」なんて返してくれた。
しかし、ふむ……。
視線を蒼の方へと向ける。
あんにゃろ………。私という最高の女がいながら、他の女に告られてるのかよ。
告られるのは良いよ? 別に良い。あんだけカッコよかったら告られて当然。
だけど、それを私に隠してるってのがなんだか無性に腹が立つ。
あー、でも、席に座って本読んでる蒼、めっちゃかっこいい……。なんの本読んでんの? 知りたーい。
って、甘い姿に騙されるな志津香!
これは、あいつを調査しないとダメだよね。
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