第2話 『存在』

 どうやらこの森はとても広いようだ。僕は森に入る前にそう思った。つまり、ここを探検しきるのは無理だということだ。それでも、ある程度はこの森について把握しておきたい。


 森に辿り着くまで3時間も歩いたから、喉が渇いたな……。よし、まずは川を探そう。ついでに食料もとれたらいいな。あと、休める場所も探そう。

 そう考えながら歩く。


 それから十数分経った。僕の目の前には休むのにちょうど良さそうな洞穴がある。

 ここで一旦休むか。この洞穴は僕が暮らしていた病室の約2倍ほどの大きさがあり、寝そべってもスペースに余裕がある。ただ、地面が硬いのでこのまま寝ると身体を痛めてしまいそうだ。


「枯葉を集めるか」


 結局、まだ休めそうにない。

 それから数分後。十分な量の枯葉が集まった。やっと休めるぞ……!

 すぐに僕は枯葉のベッドに横たわった。


「思ったより快適だな」


 これならすぐに寝れそうだ。僕はこれからどうするのかを考えながら、微睡の中に沈んでいった。




「う……。今は何時だ……?」


 ここに時計はないが、ついそんなことを口走ってしまう。あと、少し眠たい。ただ、時間がもったいないため起きる。

 喉が……。これはやばい。早急に川を探さなければ。そう思ったので洞穴の外に出る。

 喉が乾いただけでなくお腹も空いたな。お腹が空いたので食料を調達しつつ川を探そうと思った。


「この植物は何だ……?」


 しかし、ここら辺には僕が知らない植物ばかり生えているので、迂闊に食べることができない。

 困ったな。川がある場所も見当がつかない。


 あれ? はなぜ川を探しているんだ? 頭がこんがらがってきた。一旦、状況を整理しよう。


 は川を探している。その理由は、水が飲みたいから。水が飲みたい理由は……生きたいから?


 は生きたいのか? このが?何の価値もないのに生きようなんて烏滸おこがましいぞ。

  は存在意義も存在価値もないし、何かをしたい、成し遂げたい、という夢もない。つまり、は空っぽだ。そんなが存在していいのか? はこのまま生きていても何かを成し遂げることなく果てていくのだろう。いっそここで死んでしまおうか。


 そんな考えが頭に浮かぶ。

 いや、僕はそれでも生き続けなければならないんだ。こんな空っぽな僕でも、生まれてきたからには生きる義務がある。ここで死んでしまったら父親と母親に顔向けできない。まあ、物理的に合わせる顔がないんだけどな。


 というか何故こんなことをだけなのに考えているんだ?ああ、また疑問が生まれた。これではキリがない。

 僕は思考を遮断した。

 改めて川を探そう。僕は森の奥に足を踏み入れる。


 それから三十分ほど歩いたが、結局川は見つからなかった。

 ……もしかして、この森には川がないのか?

 嫌な想像が頭をよぎる。広大な森なのにそんなことはないと思うが、確証がないので言い切れない。

 川がない場合はどうすればいいのか。これからどうするべきか考えながら歩いていた。その時、不意にせせらぎの音がしたような気がした。


「この音は……もしかして近くに川があるのか!」


 僕はその可能性に賭けることにした。このまま真っ直ぐに歩いて行こう。

 さらに奥に進んでいくと、音がしなくなった。


「音がしないな……。こっちの方向ではないのか」


 今きた道をそのまま引き返し、初めに音がした地点に辿り着いた。それから、音が大きくなる方向を探っていく。

 そのようにしてから数分が経ち、音が大きくなっていく方向を見つけた。

 僕はその方向へ真っ直ぐと歩いていく。進んでいくにつれて音が大きくなるのがはっきりと感じられた。


 それから1、2分ほど歩いただろうか。唐突に、僕が待ち望んでいた光景が視界に収まる。

 僕の視界の先には、綺麗で澄んだ小川があった。




――――――――――――――――――

 

 「サバイバルしてる!」と思った方がいらっしゃると思いますが、そろそろファンタジーになっていくと思います。

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