第13話 ダンジョン地図
「こんばんはー」
「こんばんは。集さん、今日はどうされましたか?」
俺と姫はダンジョンギルド練馬支部に到着し、売買受付のカウンターに来た。
カウンターにいたのは、名札を確認したところ、秋瀬さんという人。顔見知りの佐藤さんは見当たらない。
秋瀬さんとは殆ど接点がないはずなのに、どうして俺の名前が知られているんだろう。家から一番近くてよく利用してて見かけるから、憶えてくれたのだろうか。
ダンジョンギルドなんて何人も利用しているっていうのに個人個人を憶えているなんて、ギルドの職員さん達って凄いんだな。
喋ったり関わったりしないと名前を憶えられない俺からしてみたら、本当に凄いと思う。
「えーっと。カードを売りたくてですね。ただ、結構量が多くて。後、専門のギルドに持ち込めば少しは高く売れるのは解っているんですけど、量が多くて。
「かしこまりました。それではお荷物の方、お預かりしますね」
「はい」
ドンっ!
俺と姫は持っていた鞄四つ分、売買カウンターの上に置く。
優しく置いたつもりだったけれど重量があったため、思いの外大きい音がしてしまった。
「す、すいません!ちょっと重かったみたいで」
誤解されない様に、俺は慌てて鳴らしてしまった音について謝る。決して、態度が悪い訳じゃない。
「大丈夫ですよ」
秋瀬さんに笑われてしまった。
優しそうな人で良かった。
「結構、いや、かなりありますね」
「はい。申し訳ないです」
秋瀬さんは鞄を開けて、軽く中身を確認する。
「お時間いただきたいので。こちらの番号札をお持ちになって、お待ちください。終わりましたら番号札から音が鳴りますので、そうしたらカウンターにきていただきたいです」
「解りました。けど、時間。大丈夫ですか?閉館時間過ぎる様でしたら、また明日にでも伺いますけど」
「大丈夫です。もうそんなに他の利用者の方は居ませんし、手の空いてる者達で一気にやっちゃいますから」
頼もしい。
正直、明日また来るのは手間だったので助かる。
「では、お願いします」
「はい」
「あっ!それと、買いたい物があるんですけど。収納系カードって、今あります?」
「こないだの100周年イベントもあって、何人も売りにきた方がいらっしゃっいましたから、今なら結構ありますよ。どれをご用意します?」
「さっきのカードの売れた金額で考えたいので、ひとまず、今ある在庫の種類とか個数だけ。教えてもらえたら助かります。待ってる間に、どうするか考えておきますんで」
「解りました」
秋瀬さんから現在ダンジョンギルド練馬支部に置いてある、収納系カードの種類と在庫数がリストアップされた紙を受け取る。
収納系カードとは。見た目に反して中に大量に物を収納できる家具や装飾品、装備品とかのこと。
何故かガチャからしか、カードは出現確認されていない。ダンジョンの宝箱やモンスターを討伐した時のドロップ品からは、見つかった事がない。
ガチャだけの限定カードの様だけど、縛りはそれだけ。ガチャからはまぁまぁ見かける、比較的出やすい方のカードだと思う。
俺がこないだ100周年記念で回してきたガチャ分のカードには、収納系が1枚も出なかったけど。
一般のご家庭から探索者、様々な人達に需要があり過ぎるので店で品薄の傾向。
ガチャを回して手に入れたとしても、自分の欲しいタイプが出るとは限らないので、売買の動きは激しい。
渡されたリストを見ると秋瀬さんの言う通り、100周年記念のおかげだろう。様々なタイプの収納系カードが、結構載っていた。
良かった。俺は旅に使えそうなタイプのカードを選んでいく。
10分程、リストと睨めっこして買うカードを決める。
後は売れたカードの金額次第で。何パターンか考えた内の、どれかにするだけだ。
ふと気がつくと。隣で一緒にリストを見ていたはずの姫の姿がいつの間にか、壁に掛かっているダンジョン地図の前に移動していた。
ダンジョン地図【日本・記録型】、Sランク。
【日本にあるダンジョンの位置を全て記載した地図。カード化状態を解除した時点での位置のみ】
確か、佐藤さんが。ダンジョンギルド練馬支部の業務が称えられて、本部から送られてきたモノだとかなんとか言っていた。
日本限定ではあるけれど、カード状態を解除したのは最近のはずだから。ほぼ最新の状況で、ダンジョンの位置を知る事ができる凄く便利な地図。
Sランクというだけはある。
あれが飾られた時には、暫く眺めていた記憶が蘇る。
「これ、凄いよな」
姫にこのダンジョン地図の凄さが解るとは思えないけれど、俺は自分の感想を述べた。
材質は紙。だけどアプリのマップ表示みたいに、拡大・縮小ができたりする。見たい場所がピンポイントで解る。
やっぱり便利だ。
俺はダンジョン地図を操作しながら、利便性を再認識。
「!」
俺が地図を操作した事で、姫の目が大きく見開いた。
「こっち。ここ。ここ、大きくして」
「あ、ああ。何だ。気に入ったのか?」
俺は操作を軽く説明しながら、言われた場所をアップにする。
それからは姫は自分で、いろいろな場所を拡大表示していく。
「ここ。ここに行こう」
「そこ……か。そこは、今の俺じゃあ無理だな」
姫が連れていって欲しそうにしたのはダンジョンの中でも最難関とされている、
ワールドダンジョンの探索基準は、ステータスがオールA以上。若しくは、特殊なスキルや魔法を持っていなければ難しいとされている。
俺のステータスでは、行ったとしても死ぬだけだろう。
それにそんな場所で姫を守りながら探索するなんて、もっと無理。おいて行くにしても姫が連れていけと言うのだから、おいては行けないだろう。
「いつか。行ける様になったら、連れていくよ」
「むー」
俺の言葉に納得できない姫が、頬を膨らませる。
「強くないと、無理なんだって。急に、何でそんな場所に行きたくなったんだ?」
「凄くいっぱい、光ってる」
「光ってる?」
俺はダンジョン地図に向き直り、しっかりと確認する。けれど何も、どこも、光ってなんかいない。
姫の反応から嘘は言っていないと思う。
それに姫は、ごく最近。似た様な反応を示した時があった。
聞いておいた方が良いだろう。
「
「感じてる感覚は違うけど。でも。多分、一緒だと思う」
その言葉に、今度は俺が目を見開く。
慌てて秋瀬さんのいるカウンターからボールペンを借りてきて、渡されたリストの裏面、白紙部分に、姫が光を感じているダンジョンの場所を書き記していった。
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