第2話 祭りを振り返る
「疲れたー!」
お祭りを満喫して帰ってきた俺は、家に無事に帰ってきた。
大事に抱えていた荷物をそっと床に降ろした後、盛大に布団の上に倒れ込む。
「けど、楽しかったなぁ」
部屋の天井を見上げながら、秋葉原での出来事を思い返す。
今日は本当に楽しかった。
ポケットから携帯を取り出して撮ってきた写真を眺めながら、今日あった事を振り返りつつ、独り言を呟く。
独り暮らしだし、今日の出来事の感想を言い合える相手なんていないから、独り言が出てしまうのは仕方がないだろう。咎める人なんていないし、気にしない。
「まさか露店にレッドドラゴンが売ってるなんて、しかもテイムマーク付き。実物なんて初めて見たから、本当に感動したなぁ。値段、めっちゃ高かったけど」
レッドドラゴンはダンジョンにしか棲んでいない
値段が高過ぎるので購入はできなかったが写真だけでもと、カードの実物を撮らせてもらった。
写真を眺めているだけでも、見つけた時の興奮が蘇ってくる。
レッドドラゴンはガチャでもダンジョンでも偶に手に入るみたいだけれど、ガチャではレアリティが高くて中々出てこない。そしてダンジョンでは手強くて、倒すのが難しい。
だから滅多にお目にかかれない貴重なカード。
実物を見れただけだとしても、本当に良かった。
「Sランクか。それがテイムできるなんて、購入できる人が羨まし過ぎる」
カードはSSSランクが最高。
そこから順に、SS→S→AAA→AA→A→B→C→D→E→Fランクと価値や希少性が下がっていく。
最低がFランク。
レッドドラゴンは上から三番目のSランク。だから強さも相当なのものだろう。
それがテイム。使役できる様になったなら、さらにダンジョンも奥深くへと進めるのは間違いなしだ。
だけどテイムには条件がある。
レッドドラゴンの条件はどんなだろうと、写真を拡大してカードの説明欄を読んでみた。
【召喚
【召喚維持 毎時MP50消費】
【モンスター睡眠時のみ 毎時MP10消費】
「条件きっつぅ」
俺の今の
「流石、Sランクなだけはある」
俺は携帯をスワイプし、サッと次の写真を見る。
「これも。まさか見れるとは思ってなかった。綺麗だったなぁ」
次の写真に写っていたモノ。
それは魔剣。
魔剣とは所持者がMPを消費する事なく魔法が使える様になる、武器の一種。
今回、俺が秋葉原で見つけた魔剣は炎剣クリムゾン。AAランク。
炎剣は名前の通り、所持者を火魔法使いたい放題にさせてくれる剣。
制限付きで上級までの魔法迄しか使えないとか、他の属性魔法が使用できなくなるとかの欠点があるけれど。それでも凄い剣だ。
きっと制限さえなかったら、Sランク以上は確実の代物。
写真だとその素晴らしさは数段劣ってしまっているが、実物は真紅の剣の絵がとても綺麗だった。
カードの状態からでもその美麗さと迫力が伝わってきて、瞼の裏に焼き付いた様に忘れられない。
俺は写真を見つつ、頭の中にある炎剣クリムゾンを思い出す。
「綺麗だったなぁ」
次々に写真を見ていくと、今日の秋葉原のレアカードがどんどん出てくる。
束縛の魔眼。
対象を見つめて念じるだけで、相手を拘束できる融合型の
万能コピーS。
カード状態のSランクのモノなら、何でもコピーができてしまうカード。
五年延命草。
食べれば寿命が五年伸びる草。俺が見つけたカードの説明欄には【不味い】と書いてあったから、【美味しい】もあるかもしれない。それと確か、何か別のモノと組み合わせると寿命が十年伸びるモノになるとか何とか。確か、何かで見た記憶がある。
短距離転移魔法。
短距離に転移、瞬間移動できる魔法を習得できる。見つけたカードは説明欄に【範囲 10メートル】と書いてあった。MPの消費はあってもそれ程消費はしないから、10メートルだけでも凄く便利だと思う。
それから100坪のダンジョン土地権や、身代わり人形等々。
Aランク以上の代物ばかり。
値段は高くてどれも俺に購入は無理だったけれど、普段はお目にすらかからないモノばかりだったから、見れただけでも本当に嬉しいし楽しかった。
これからのダンジョン探索のやる気が、ガチャを回して手に入れてやるぞという気持ちが湧いてくる。励みになる。
流石にSSランクやSSSランクのモノは出店や露店では見当たらないとは思っていたから、その通りだったけれど特にショックとかはない。
そういうモノは高級店やSNS、オークションとかでした見た事がないからそんなものだろう。
さて、そろそろ夜も遅くなってきた。
写真を見た事で再びテンションが上がり元気になってきた事で、休憩した事で、疲れた身体ももう少しは動かせそうになってきた。
それに―――。
チラリと目に入れた先程置いた荷物。
中には俺が回してきた、神様のガチャの未開封パックが100パック入っている。
1パックの中にカードが一枚だけ入っているから、百枚分。
本日の最後のお楽しみとして開封は家でしようと考えて、一つも開封せずに持ち帰ってきた。
本当はテレビカメラがいたから恥ずかしいなとか、インタビューされたくないなとか、開封してなければ早々に立ち去ってくれるかなとか、考えた結果なんだけど。
ひとまず開封式を行う前に身を清めておこうと思い、先に風呂を済ませてしまおう。
特に意味なんてないだろうけど、気持ちの問題だ。
お楽しみは寝る前まで取っておく。
俺は風呂に入ってもまだ、今日の楽しかった事を思い出す。そんな中。ふと、疑問が頭を過り口から出た。
「結局、神様の入れた特別なモノって何だったんだろう」
神様のガチャを回した人達は数え切れない程いた。でも誰も、コレだ!という雰囲気は出していなかったし。テレビやネットニュースにも、俺が知る限りではなっていない。
自分の様に開封しないで帰った人もいるだろうし、まだ神様のガチャの中の可能性だってあるか。
相当希少なんだろう。
いつか誰かが出すだろうと思いつつ、思考は直ぐにまた、今日の思い出へと戻っていった。
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