#Two.弟子


大体100年が過ぎるうちに一度戸籍、住処、仕事を変更している。

その存在は亡き者となり、新しい自分として再び誕生する。

自分の強さ、経験、失ったものを人に話したことも、悟られたりしたこともなかった。

もちろん不老不死も。


ただうなずき、一秒もかからないうちに不意を突いてきたものを下敷きに、上に乗っかるようにしてナイフを地面についた。

「どこの追手だ。」

女性、ロング、推定18歳、素早い戦闘態勢、冷静な目線、すべてを知っているかのような目線。

軽い質疑応答のち、始末する予定だった

弟子にしてください。

その言葉でどれだけ悩まされたことか。

第一、弟子は8000年位前だっただろうか、裏切ったやつは始末した途中で殺しにかかったやつもいた。

不老不死、100年たつ頃には弟子は亡くなってしまう。それを嫌になって8000年の年月。


12026年7月7日午前2時

行きつけのカフェの個室で二人、変な風流れに振り回されたのは大体200年ぶりか。

人と親密にかかわるのですら8000年ぶりだろう。

自分の半径五メートル以内に気づかれずに入られたのは何年ぶりだろうか。

褒美としてカフェを奢る、電話番号、家の住所、ディープパスポートを懇願された。

カフェ、電話番号だけを許し、夜中午前三時45分、一瞬にして風のように去った。

「そんじゃ。」


12026年7月8日土曜日

朝の扉の前にスタンバイしているこの人、朝8時半から11時まで一緒にいる隣の人、休日の時間を消去してこようとしてくる人。

特急コネクト乗車、カフェに到着、椅子に腰かけ、さあ、質疑応答。

「なぜ家がわかった。」

彼女の洞察力、昨日カフェから家に行くときの俊足、マッハ19の移動を目で追い、家の方向探知、そして、速さの残り風を肌で探知、からの家を特定。

弟子として戦闘態勢、一瞬の反射神経、観察力、すべてが完璧である。

年齢の壁を除いて。

そして彼女。

北東の都市クラネス出身、おそらくスパイ、情報局、FBI、左利き、身長推定162.4、靴はくるぶしから先までのブーツ、黒色のスーツⅬサイズ。昨日の様子から視力は4.0、右上へたまに向ける視線、指先のテンポは16分の一、何かしら焦っている模様、違和感のあるネックレス、

クラネス出身とは思えない目の色、コンタクトと見る。10秒間中約4回分の瞬き、頑なに動かない首、動く喉元、常に持っているコーヒーの取手、そして、胸元にはピストルのようなふくらみ。

という感じと見る。

カフェにて、8時間後

夕日をバックに彼女と帰宅。

「ねぇ...」

橋を過ぎたところで止まる彼女は胸元に手を差し入れた。

コンマ0.5秒。一瞬でピストルを手で握りつぶした。

が、火薬が爆発したわけではない、銃弾が落ちたわけでもない。

ただ一つ力が抜けていった。

10000年ぶり人間に一本取られたような気がした。

頭から足にかけて、脳がフラッシュしたような。

口に触れたのは彼女の…

「改めて朝海 遥溜。弟子をよろしくお願いします。」

何かに負けた、でも、

可能性がある。

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