(いくつもの)サーガの終わり


 あらすじはキャッチコピー通り、洞窟から世界を見続けたとある竜の一生です。
 
 あらすじを分解すると竜の一生という大きな物語の枠の中に小鬼の一族が疫病で滅びるまでの歴史や人間の豪族が王族として栄え、竜と決別するまでの歴史が内部に組み込まれています。
 
 私の理解だと、小鬼の一族の終わり、人間の国が竜と決別、竜の生涯の終わり、という形で何らかの物語を終わりを多重に繰り返すことで歴史の流れを感じさせたいという作者の意図が感じられます。

 そして小鬼が死にたえる、竜と決別する、竜が死ぬことにより、誰も語られた物語を思い出さない、語らないというところに無常さを感じますが、それが最終的に無になったとしてもそれまでの過程において何らかの意味と価値を持っていたことまでは否定できないという風に見えるところが宮塚氏と趣味が合わないと思いました。
 趣味は合わないのですが、物語構造としての巧みさを評価しないことは自分にはできないので☆3評価になります。

 これからも宮塚氏のご活躍をお祈り致します。