第25話 隆史殺害

 


 事件の起きたあの夜の狂ったように暑かった蒸し暑い夜に、一体何が有ったと言うのか?


 凛音ちゃん改め理生と流星が最初に出会ったったお寺の境内。

 東海地方の今年の梅雨は平年より8日も早い梅雨入りだった。最初に会ったのは梅雨入りして間もなくの6月5日だった。あれからこの2人にはどのような事が起こって行ったのか?


 流星は、勉強の傍ら一目ぼれした凛音ちゃんの事が、頭から離れられなくなってしまった。


 そして…友達と出掛けたカラオケボックスで、偶然にも凛音ちゃんと巡り合った。あの後カラオケボックスに戻り野郎達とカラオケで盛り上がっていた丁度その時、スラリと長身のカモシカのような足の長い、スタイル抜群のモデルのような女の子が、流星の部屋の前を通り過ぎた。それは凛音ちゃんに変装した理生だった。


 だが…夢中になったのは流星だけでは無かった。連れの友達も興味津々。こうして車に乗り込んだ2人の後を、急いで外に出て連れの1人がタクシ―を拾ってくれていたので咄嗟に話し合い料金は1人が残って払う事になり、3人の内2人が慌ててタクシーで凛音の跡を追いかけた。


 こうしてやっとの事、凛音ちゃんと中年の男との秘密密会場所を、突き止めることが出来た2人だった。そして…何という偶然か、3人共に凛音ちゃんが好きになり、思い思いに凛音ちゃんを追い掛け回していたが、流星の連れ2人はあっさりとフラれて諦めていた。実は…フラれた2人は酷い目に遭っていた。


「もう……あなた誰?気持ち悪いでしょう。今度付け回したら警察に訴えてやる!」

 

 魅力のない2人はしつこく付け回した結果、各々別々に同じ言葉でこんな酷い仕打ちを受けて、スッカリ意気消沈して諦めていた。ただ、流星だけはデ-トまで持ち込むことが出来て、付き合い出していた。


 3人は各々自分が凛音ちゃんをものにしようと、つけ回している事実を話さなかった。それは……3人が同じ思い凛音ちゃんに夢中だという事を、各々が表情や態度で知っていたからだ。こうして流星と凛音ちゃんとの交際は誰にも知られずに続いていた。


    ***


 流星は凛音ちゃんが男である事に気づき一気に冷めてしまった。だが、愛情は冷めたが好都合な事に、理生は未だ流星に夢中どころか、冷たくされればされるほど不安に苛まれ、流星の恋の奴隷となってしまい、愛を繋ぎ止める為だったらどんな事でもして愛を繋ぎ止めようと思う境地に達してしまった。


 あの日2人は久しぶりにショッピングモ-ルのス○バでお茶をして、その後薄暗くなった近くの公園で、いつものように愛の行為キスとペッティングをした。愛は噓ではない事を証明して流星は話し出した。


「俺の母が結婚を餌に男に騙されて、最近はなけなしのお金まで男に貢いでいる有り様なんだ。母が可哀想で見ていられない。最近では母は男が会ってくれないと分ると、デ-ト代を自分が出す始末なんだ。そのお金の為に俺が学校に行っている間に、男を引っ張り込んで売春まがいな事をしているんだ。見ていられないんだ……」


「その男酷過ぎでしょう。卑劣!最低!」


「それが……凛音ちゃんの高校の男子で勝君のお父さんなんだ。勝君と俺、大の仲良しだったけど……こんな大人の事情で最近連絡取りあっていないんだ。俺マジにあのスケベ野郎殺したい!」


 実は…凛音で理生は、以前勝君の事が好きで感情を抑えることが出来なくて「友達以上💛💛💛LOVE。付き合いたい」などとメッセージを送って恋愛感情を告白したところ、勝君は同級生である友人たちが見ているLINEグループに、「理生がゲイであることを隠しておくのもうムリだ。ごめん」と投稿し、理生が同性愛者であることを第三者に暴露した。このLINEには同級生10名ほどが参加していたとされ、結果的に既に知っていた3人を除く、7人に対して理生が同性愛者であることが暴露されてしまった。


 この事件で理生は勝君を恨んでいた。そこに来て愛する流星からまたしても勝君の父の、ゲス行動を聞き怒りを通り越して、あの時の勝君に対しての復讐心と、流星を繋ぎ止める唯一の方法を思い付いた。


「流星私ね……良い方法思い付いたの?私が……あなたの希望……あのゲス男を殺してあげる代わりに、私の頼みも聞いて欲しいの。それはね……あなたも私の願いを叶えてくれる事」


「その願い事って何だい?」


「それはね……フフフ……このまま……フフフ……凛音と付き合うだけで良いの」



    ***


 桐谷先生が殺害されたあの日は、桐谷先生が夜の見回りに出掛けると「この学校の男子生徒2人が使われていない倉庫で、裸で抱き合っていた」という話なのだが、その光景を見た学校の帰りに先生は殺害されてしまった。


 それでは抱き合っていたのは誰と誰だったのか?

 それはズバリ理生と友樹だった。


 理生は恋の空回りをしている。それは好きな相手にはゲイであるがゆえに相手にされないと言う歯がゆい思いを抱えていた。


(相思相愛になりたい。あんなに勝が好きだった。そして…今度こそ……今度こそ……流星に愛されたい。どうして思い焦がれる男には愛して貰えないんだ……)


「オイ!お前ら今日の所は帰ってくれ。俺友樹んちに行く用事が有るからさ?アバヨ」

 こう言って野郎達と別れた後、桐谷先生が殺害されていた今は使われていない倉庫にやって来た理生と友樹。それはここだったら誰もいないからどんな話も出来るからだ。


「どうしたんだよ今日は皆で勉強する日だったのに?何か……何か……あったのかい?」


「ウウウン……何でもないよ……チョット友樹に頼みがあるんだ。お前……俺の為だったら死ねるって以前から言ってたよな……今もその気持ち変わらないかい?」


「ううん……それはそうだけど……」


「聞いて欲しい事がある……じゃあ言うけど……友樹と今の関係止めるって言ったらどうする?」


「嗚呼……俺死ぬ!」


「……じゃあ……じゃあ……俺の望み叶えてくれ!俺の為だったら……俺を笑いものにした……俺がゲイである事を言いふらした……男分るよな……?」


「分かった勝だろう。アイツだけは……アイツだけは……ゲイの敵だよな!俺らを笑いものにしやがって……理生がゲイだってLINEで暴露しやがって」


「だけど……勝殺したら……俺疑われちゃうから……だから……勝のお父さん殺そうよ!勝を思い知らせてやろう」


「……でも俺……やっぱり……人殺し出来ない!イヤだ!イヤだ!」


「お前今更そんなこと言うのかい?じゃあもう良い……友樹とは絶交!友情関係も、ゲイ関係も清算する。もう絶対に会ってやらない!」


「嗚呼……俺……俺理生の事しか考えられない!捨てないでくれウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭」


「気持ち悪いんだよフン!触らないでくれ!」


 すると友樹が理生の足元にしがみ付いて涙ながらに懇願した。

「理生ウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ俺……俺何でもする!理生の為だったらワァ~~ン😭ワァ~~ン😭理生に捨てられたら……俺は……俺は生きていけないウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ」


 こうして事件の首謀者流星があの日「博多玉露抹茶バウム」名古屋本店の社長室に電話を入れた。それは理生が殺害する準備が整ったと連絡を入れたからだった。

「『母がどうしても別れたい。もう顔も見たくない』そう言っていますが、僕が母を説得します。ですから今日の夜8時に農園に来てください」そう言って理生が指定した場所豊明市の副社長の妻が家族のために栽培している、家の近くにある農園で待ち合わせをした。


 副社長の妻が副社長の大好きな野菜とトマトを栽培するために土地を余分に買っていた農園だった。副社長の自宅は来客が多い割に駐車場が少ないので、農園だったら駐車場が広いのと誰の目に触れる事も無いので、その場所を選んでいた。


 そこは仲が良かった頃、勝とよく来た場所だった。夜に友樹の車に乗せてもらい待ち合わせ場所にやって来た流星と理生は社長に言った。


「車の後ろに付いて来て下さい」やがて廃墟に着いたので廃墟の中に入った。


「オイ!梨華がいないじゃないか?俺は梨華と別れる気などない」


「母を結婚という甘い言葉で騙して……もう何年経ちますか?僕は母の涙を幾度と見ています。本当に結婚する気があるのですか、到底そんな風には思えません」


 その時後ろから来た完全防備の友樹が雨合羽にゴム手袋で現れ、後ろから一気に副社長の頭を金属バットで強打した。

 その時に倒れ込んだ隆史のカバンから母梨華のルビーのイヤリングが、零れ落ちていた


  やがて残酷な首なし死体事件の謎が紐解かれて行く。

















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