第15話 Xとは誰なのか?




 大の仲良し3人組理生と朝陽と恵麻だったが、朝陽は以前から恵麻が好きだった。だから常日頃から恵麻ちゃんと急接近したいと願っていた。


 そんな時にいつも一緒に帰る理生がたまたまいなかったので、これ幸いに学校の帰りに朝陽が恵麻に告白したのだった。


「恵麻ちゃん……その~恵麻ちゃん……僕……僕……最初恵麻ちゃんを見た時から恵麻ちゃんの事……だから…付き合って下さい」


 ある日の事だ。3人いつも一緒に帰る校舎の門の前で理生が時間になっても来ない2人に苛立ちを感じ、教室に様子を見に行った。


 だが……教室はもぬけの殻。不思議に思い今度はあの2人が大好きな場所で、裏手に有るうさぎや鶏が居る飼育小屋に行ってみた。


(あれ~?今人影が見えた気がしたが?)そう思いうさぎ小屋に飛び込もうとした瞬間、奥の方で朝陽と恵麻の影が重なった。薄暗くてはっきりは見えないが、場所を少し移動してみた。

(アッ!やっぱり朝陽と恵麻だ!何々……?俺様に隠れて真昼間からこんな所で……抜け抜けとキスなんかしやがって、許せネ—!なんだよ—抜け駆けかよ。全く酷い話、俺だけ仲間はじきかよ。俺様を舐めんじゃネエ—!)


 喧嘩の発端は朝陽と恵麻が急接近した事によって、3人の関係は壊れてしまった。こうして…3人の関係は改善されるどころか、悪化の一途を辿って行った。


 理生はイケメンでクールなクラスを裏で仕切っている影のリ-ダ-的存在、一方の朝陽は秀才で皆の信頼を一身に集めている優等生タイプ。


「オイ!皆朝陽の暴挙を許せるか?クラスのアイドル的存在を、それも俺とあいつら3人は大親友だった訳だ。それを……よくも抜け抜けと真昼間から。只じゃ済ませねえからな—!オイ!お前ら!朝陽をボコボコにして痛い目に遭わせてやろうじゃないか!」


 3人の友情は収拾が付かない状態に追い込まれた。それと言うのも恵麻の推測では、理生は朝陽に特別な感情「LIKE」ではなく「LOVE」の感情が有ると見抜いていた。だが、恵麻は理生が好きなので理生の異常な愛が噓であって欲しいと思い。一縷の望みをかけてカマをかけた。


 それは……好きでも無い朝陽と恵麻が特別の関係になれば、嫉妬するか?どうか?を見抜く為に好きでも無い朝陽を利用して、朝陽とキスをしたのだった。案の定理生は嫉妬に狂い朝陽を、河原に追い詰めボコボコにした。


 恵麻は朝陽には気の毒だが、理生の気持ちが分かって一安心している。だが、それは大きな過ちかも知れない。大好きな朝陽が正常な愛にのめり込む恐怖から朝陽を痛めつけた可能性がある。

 


 そして…あの夜岡崎市のモーテル「シャチ」で首なし死体で発見された木下満と同じ「シャチ」に理生は行っていた可能性がある。それは……理生は恋人代行サ―ビス「ローズ」のお客様とあの日岡崎市で会う事になっていた。実は…理生がこのレンタル彼氏に登録したのは、野郎達の中の1人からの紹介だった。だから…この中の誰かが、あの夜首なし死体で発見された岡崎市のモーテル「シャチ」で、木下満と会っていた可能性がある。そして…理生にもその可能性はある。


 だから……理生の友達の中に犯人がいる事も十分に考えられる。中には19歳の少年もいる。19歳なら無免許とは限らない。だから車を奪って運転していたのは、その19歳の少年という事も十分に考えられる。それでは何故2年も浪人してまで星信学園高校に入学する必要があったのか?


 実は…両親の強い意志で、有名大学にも多く合格しているこの学校に2浪してまで入れたのだった。だから車の免許を持っていた可能性は高い。朝陽は咄嗟の事で暴走したので無免許で運転したが。



 「フフフ!チョット可哀想な事をしたけど……だって……私……朝陽より……クールで知的でイケメンな理生がタイプだったの。でも……やっと……やっと……理生の真実……それは……私の事好きという事が分かったわ」

 恵麻も恐ろしい女の子、この後どうなって行くのか?



    ***


 一方の理生と同じ星信学園高校の勝君もいわれなき被害に合っていた


 星信学園高校の男子Xが、豊明市の民家の廃墟で見付かった首なし死体Tさんの息子勝君にLINEを介して「友達以上💛💛💛LOVE。付き合いたい」などとメッセージを送って恋愛感情を告白したところ、勝君は「これからも良い友達でいたい」などと応答した。


 友達の戯言と思った男子Xの言動を(友達として付き合いたいのだな)と最初は考えていた。だから…野郎達と一緒にXも誘って、海にもショッピングモ-ルのゲ-ムセンタ―にも山にも登ったりして、束の間の時間を謳歌していた勝君だった。


 そんな時にXとショッピングモ-ルの「屋内アスレチック施設」トンデミで、野郎達と遊んでいた時の事だ。


 トンデミとは様々な遊び方のできる、トランポリンや誰でも気軽に楽しめるクライミングウォール、ハラハラドキドキのロープウォークなど体感型の遊びを世界中から集めた次世代の「屋内アスレチック施設」で、子どもから大人まで、ファミリーやグループみんなで楽しめる「屋内アスレチック施設」だ。


 Xと2人でトランポリンをやっていた時に、Ⅹが後ろから抱きついてパンツの中に手を忍ばせて来た。

「オイ!ふざけるのも大概しろ!」


「いいじゃないか男同士だから…」

 

 これには流石に勝君もチョット行き過ぎではないかと思い始めた。だが、修学旅行で最初は皆あそこをタオルで隠して大浴場に入るが「見せ合おうぜ」という事になり、野郎達と大浴場で入浴した時などは皆で大きさ比べをした事も有った。


 だから…あんなゲイやレズと言った類の人間が、本当に自分の周りに居ようなど想像も出来ない事だった。だから…勝君は差し障りない拒否を続けたが、次第に度を超す行為を取るⅩに、流石の勝君も気味が悪くなりXを避け始めて来た。


 例えば抱き付いて来て暫くすると生温い、こそばゆいものが首筋を伝っているように感じる。それは舌で首筋を舐めているのだった。


「なんだよ?気味の悪い事するなよ」


「ご愛嬌 ご愛嬌フッフッフ」


 そんな時に同級生の謙太君からとんでもない誤解をされた。


「ハッハッハ!お前等ゲイかよ!」


 こんな勘違いをされた勝君は、Ⅹと距離を置くようになって行った。そのⅩとは学校でも幅を利かせているボス的存在。強く出る事も出来ず、受け入れる事も出来ず、やがてⅩの復讐が怖いので、2人の事情を知らない他の同級の友人とも距離を置くようになり、精神的に不安定になり夜眠れなくなっていった勝君。


 それでも…ちょっかいを出してくるⅩに、勝君は同級生である友人たちが見ているLINEグループに、「Ⅹがゲイであることを隠しておくのもうムリだ。ごめん」と投稿し、Ⅹが同性愛者であることを第三者に暴露した。このLINEには同級生10名ほどが参加していたとされ、結果的に既に知っていた3人を除く、7人に対してXが同性愛者であることが暴露されてしまった。


     *** 


 ある日の事だボス的存在のⅩが皆に手招きで集まりの合図を送った。いつもだったらボスのⅩが怖いので一斉に集まって来るのだが、何か……ひそひそ話をして寄ってこない。


「オイ!皆どうしたんだい?」


 隠し事が有るらしく、浮かない表情のクラスメイト達。


「お前等いい加減にしろ!一体何の真似だよ。言って見ろ!」

 するといつもの仲間の1人が、意味有り気な表情で近づいて来て、ひそひそ話で耳打ちした。


「あのね!皆に聞かれたら不味いので小さい声で話すけど、アッ!やはりここじゃ不味いので、サッカー部の部活の時話すから……その時に……」


 こうして授業が終わりサッカー部に向かったⅩだったが、するとさっきの友達が、校舎の木の陰にⅩを引っ張って行き話し出した。


「実はね!……こんな事……こんな事……言いたくないけどⅩが気の毒で見て居られなくてねぇ。実は…勝君がLINEで君の事ゲイだって暴露しちゃったんだよ。だから皆警戒して避けているんだよ」


「勝なんてこと・・・なんてこと・・・言うんだよ‼許せネ—!」


 こんな事件が有って間もなく勝君の父Tさんは、首なし死体で豊明市の廃墟から変わり果てた姿で発見された。


 やはり未だ「LGBT」に対して偏見が有り受け入れられない為、隠していたのに暴露された腹いせに復讐心で、勝君の父親Tさんは殺害されたのかも知れない。

 それでも…可笑しい話だ。ゲイは勝君だったのではないのか?


 勝君の父親でTさんが無残な姿で発見されたので、両刑事銀さんと田淵が早速亡くなったTさんの家に聞き込みに行った時に勝君の母親が言っていた言葉。


「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭それが……それが……どうも……「LGBT」という言葉をご存知ですか?実は…県内でも有数の進学校に通っている勝ですが、うちの息子は子供の頃から少しなよなよした子供だったのですが、ある日……類は友を呼ぶとはよく言ったもので、どうも……同級生の子供の中に「LGBT」の生徒が交じっていたのです。ウウウウッウゥゥ(ノД`)シクシク…そして…そして…似た者同士仲良くしていたのです。だが……うちの子が謙太君にウウウウッその秘密を打ち明けたらしいのです。それで…それで…バラされた相手が暴れ出したのです」


 という事は勝君は、なよなよはしているが、「LGBT」の特性は有していないという事だ。


 この「LGBT」と噂されているXは一体誰なのか?益々分らなくなってきた。



  








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