第9話 戦いの記憶

「はぁ・・・はぁ・・・」

怪物のうめき声と破壊音は鳴りやまず悲鳴が鳴っている。

援助などは来そうにもなく手ごまも無くあるのはそこそこの武器だけ。

そこそこの武器でやるにはあまりにも歯が立たなそうな敵だがアドレナリンが闘争心をむき出しにする。


「よお化物 これならどうだ」


1日前

「じゃあね・・・明日死なないようにね」


「?・・・どうしたんですか?トウマさん」

「いや うん なんもない」

「?・・・まあ お疲れ様です戻りますね」

「うん」

絶対何か明日あるな~などと考え部屋に戻って何があるのか考えるニカイドウ。


(また実験だろうなぁ・・・死ぬ系だろうなぁ・・・はぁ・・・)


安易に物を考えれる時点でまだ余裕がある証拠であった。

もぐもぐとエネルギー補給用の食事に切り替え明日を最高のパフォーマンスで迎えるために早めの睡眠をとることにした。

寝つきは悪くなくグッスリ眠った。


ー居住区角にてー

「博士全員、Bランク職員以上は順に退避願います」

静かにバレないように居住区画から出ていく。

そこにはトウマの姿があったが、ニカイドウの部屋の方を一瞬見て居住区角から退避を終えた。


「銃器の配置は終えたか?」

「はい ミニガン アサルトライフルなど銃火器や、効果は薄いと思われますがナイフや閃光手榴弾なども部屋の前に配備済みです」

「なんとかやってくれることを願うが・・・まあ仕方がない」

「はい では我々もそろそろ行きましょう 後4時間程度です」

「だな 最後のリストチェックも終えたし行くぞ」

「はい」


ーーー

ーー


ジリリリリ

●記録開始● 2024/2/18 03:00~

SCP-076戦

被験者:Dクラス全職員

ガバッとニカイドウが起き上がる部屋の前までのアラームの意味を思い出して冷や汗を滝のように流す。

「SCPが出てきたのか?」


急いで服を着替え廊下に出ると見慣れない銃火器などが置いてある。

アサルトライフル、手榴弾、色違いの手榴弾、ナイフ、替えのマガジン3個


(こうなることは予知されていた・・・?)


警報と赤いランプが入り乱れている緊急事態のフロアを銃を構えながら歩く。

「たぶんこれで撃てるはずだ・・・試しに一発・・・」


バンッ!


「よし・・・何かあっても最低限は守れるな」

その音を聞きつけたのか何人かの集団の足音が聞こえる。


「お前らこの騒ぎが何か分かってるか?」

「全く分からん 武器を持って確かめてる所だ」

「さっきから博士やツナギ以外の職員を見ない・・・これは取り残されてるぞ」

「だろうな・・・恐らく何かが来るから殺せってとこだろう 注意して歩くぞ」

「少し離れて歩こう 1人5mずつぐらいな」

「ああ・・・そうだな それがいい」

4人で列を作り周囲を警戒しながら歩く。


「なあ連携を取りやすいように名前を教えてくれ 俺はニカイドウだ」

「俺はトミザワだ」

「俺はナカニシ」

「俺はタカダ」

「俺は無いんだがこの中で銃器の経験があるやつは?」

「「「・・・」」」

「だよな しょうがない」

「なあ 敵が現れたら横一列になって集中砲火しよう そうすれば流れ弾はないだろ?」

「そうだな あとは手榴弾の類は言ってから投げよう そうすれば隠れられる」

4人とも最低限のルールを敷くことによりとりあえずの統率はできた。


広いメインフロアにたどり着くまでに機関銃のようなものが設置してある個所を三か所見つけ何かあったらこれで何とかしようということになった。

メインフロアにたどりつくと40人程度の武装した職員がいた。


「お前らこれは何なのか分かるか?」

「全く分からん とりあえず皆メインフロアに集まったんだ お前らで最後じゃないか?」

「にしても」


ドンッ


「・・・来るぞ!構えろ!」


二回目のドンッと言う音は聞こえない変わりに壁が紙のように引き裂かれた。

禍々しい刺青に痩せた体、鉄の棒のように見える得物。

空気に圧倒され静かな足音を全員が構えながら聞いていた。


ふいに一番前にいた職員の元に詰め寄った。

瞬きなどしておらず一瞬で詰め寄られた。

軽く鉄の棒を振ると職員の頭がはじけ飛んだ。

何が起こったか分からないと言った様子で職員たちは冷や汗を流す。

無言のままSCPが首を動かす。


「全員退避!通路奥でやり過ごすぞ!」

トミザワが大声を張り上げると散り散りに逃げるも何人か捕まり殺される。

ニカイドウとトミザワ、後何人かが射線を考えずマガジン一個を打ち続けるも鉄の棒で落とされてしまった。


「はぁ・・・おいあんな化物殺せんのかよ」

「ニカイドウ どこかでこの10人弱のフル火力をぶち込むか他がやってくれるのを祈るだけだ」

「・・・とりあえず作戦を考える前に武装をチェックしよう」

「いや 監視カメラのある部屋に急ごう どこかにあるはずだ」

「分かった 落ち着いて息を殺していくぞ」


ーチェック中 他部隊ー

「撃て!撃て!」

「畜生!銃が効いてねえ!前列から手榴弾投げろ!」

「機関銃ぶっぱなせ!早くしろ!」

「効いてるぞ!このまま押し切・・・え?」

確かに通路の半分程度までは何とか押せていた。

だが半分までこられたタイミングでいきなり前列の5人が殺され残り4名に。


「撃t」

言い切る前に鉄の棒で殺された。


ーーー

ーー


「不味いな・・・完全に不意打ちで行くしかない」

「なあトミザワ 他の部隊の位置を把握してそこを挟み撃ちしないか?」

「馬鹿か?俺らまでハチの巣だぞ?」

「いいか?そのレベルのリスクは背負わなきゃ生き残れん」

「まあ今考えれる策はそうか・・・」

「おい もう一部隊も今やられたぞ 残りは俺らともう一部隊だ」

「残り一部隊が交戦中に急ぐぞ 皆到着と同時に手榴弾だ」

全員覚悟を決めるものの恐怖の度合いは強い。

当たり前と言えば当たり前で監視カメラの映像見ていれば相手をする敵がどれだけ馬鹿げた相手か嫌でもわかるからだ。

30m程度は1秒もかからず動き鉄の棒で銃を叩き落とし間合いに入ったら即死。

ゲームや漫画でもこんな敵はいなかったと一部の人間は思う。


「始まったぞ!足音を消して急ぐぞ!」



「もっと撃て!頭だ!リロード中のものは手榴弾を!」


「今だ!投げろ!」

他部隊の掛け声と共にニカイドウの班も手榴弾を投げる。


「よし・・・さすがに死んだだろ」

人間の手がこちらまで飛んできており他部隊の人間は手榴弾で死んでしまったようだ。


「・・・嘘だろ・・・逃げるぞ!」

ボロボロのSCPがこちらを睨み距離を詰めてくる。

広いメインホールでニカイドウの部隊10人が戦うことになった。


「トミザワ!機関銃持ってくるぞ!」

「頼んだ!死ね化物!」

頭を狙っても外れるのは明白のため胴体と足を集中的に狙わせ閃光手榴弾を合間に使い時間を稼ぐも20秒に1人ずつ死んでいく。

残り6人。


「はぁ・・・はぁ・・・」

怪物のうめき声と破壊音は鳴りやまず悲鳴が鳴っている。

援助などは来そうにもなく手ごまも無くあるのはそこそこの武器だけ。

そこそこの武器でやるにはあまりにも歯が立たなそうな敵だがアドレナリンが闘争心をむき出しにする。


「よお化物 これならどうだ」


「あ、あああああああああ」

叫びながら機関銃を持ち突進していく。閃光手榴弾で目が少しの間だけ眩んだSCPは防御できずフルで食らってしまう。

手榴弾でボロボロだった体が次々と欠けていく。

SCPはうつ伏せに倒れるも防御姿勢を崩さない。


「お前らも撃て!トミザワ!機関銃持って来い!」

倒れたSCPにひたすら弾をぶち込む。


カチッカチッ


「はぁ・・・はぁ・・・死ね!とっとと死ね!」

弾が斬れナイフで全身をずたずたに斬っていく。


「殺したか・・・?」

体をうつ伏せから仰向けにすると笑顔で死んでいた。


「笑顔・・・?馬鹿にしやがって・・・まあ終わったか」

「終わったな・・・」

「あぁ・・・」


「あー・・・トウマさんになんか奢ってもらお 割にあわん」

「お前Dクラスなのにパートナーがいる珍しいタイプなんだな?」

「は?俺がDクラス?」

「は・・・?そりゃそうだろ?オレンジのツナギはそうだろ?」

「いやいや俺がそんなわけないじゃん」

「ちょっと待て お前逆に今までどんな仕事してきた?」

「SCPのテストとか清掃とか・・・」

「あー・・・お前アレか記憶処理受けてるタイプか すまん 聞かなかった事にしといてくれ」

「おい どういう事だ」

「まあアレだ お前は記憶処理を受けた元死刑囚だ おかしいと思わなかったか?ツナギ着て死ぬ寸前の実験やらされるなんて」

「・・・ちょっと待てよ 頭がおかしくなる その話は聞いてみるからもうやめてくれ」

「わ、分かった まあお疲れ 飲み物転がってた奴だけど飲めよ」

「ああ・・・」

(俺がDクラス・・・?借金が膨らんでここに来ただけだぞ?何がどうなってる?)


ジジッ・・・SCPの収容を確認 職員は自室で待機


「終わりのチャイムだ」

「ああ・・・まあお疲れ」


記録終了

42名中6名生存

ミニガンで銃殺によるSCPー076の無力化


ー翌朝ー

「トウマお疲れ よく生き残ったね」

「割に合わない・・・」

「ははは 良かった良かった 今日は奢りだよ」

「じゃなきゃやってられませんよ!」

「かっこよかったよ!流石男の子!」

「見てたんなら指示くださいよ!」

「あはは無理無理」


「で・・・1つ聞きたい事が」

「あー・・・昨日聞いちゃったんだって?自分がDクラスだって」

「はい」

「まあうん 君は戦場カメラマンなんだ本当はね」

「は?それがどうしてこんなとこに?死刑囚になるんです?」

「うーんとね 君写真撮りたいがあまり自分で銃持っていろんな国の兵士色々殺しちゃっててね 最終的に戦場で快楽殺人やるクズになっちゃったんだって」

「・・・信じたくないなぁ」

「あー でも今回で君Cクラス!良かったね!戦闘一杯!」

「うへー・・・」

「どうする?記憶処理無くしても別にいいよ?」

「あー・・・無くしてください」

「じゃあはい」


「!?」


元々の記憶が流れ混んでくる。

確実にやってはいけないはずだが記憶の流入により徐々に善悪の判断が狂っていく。


「あー・・・なるほどね 俺すごいことしてたな」

「お ニカイドウどう?私も殺したい?」

「いえ ここで作られた人格が結構まともにしてくれたみたいです」

「おー 偉い偉い」

「でもアレだな・・・かなり銃の使い方とか戦闘方法のレベルは上がったかも」

「ははは 人にはやらないように」

「うーん もっと壮大な話かと思ったけどSCPに接してるせいかどうでもよくなってきたなぁ」

「そうそう まあ気にせずご飯に行こう Cクラスを祝ってね」

「はーい」

記憶が戻り安心できることは無くこれから更なる戦いがあると思うと頭の痛くなるニカイドウであった。

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