第3話 水の中へ

「うん もう大丈夫でしょ」

「ありがとうございます先生」

骨折も治り退院をすることになったニカイドウ。

ジョギングをしても問題も無くレントゲンを撮っても別段問題はなかった。

一応痛み止めを貰いベッドで規定の時間まで休むことに。


「やあニカイドウ どう?調子は」

「トウマさん おかげさまで元気です」

「そっか 明日から仕事戻ってもらうよ?」

「大丈夫そうです 明日はどんな仕事が?」

「あー・・・まあ明日話すね 結構キツイから今日はご飯豪華だよ」

「やたー!」

「君案外喜び方が若いね」

「まだ27ですよ俺・・・」

「ははは 私より下だと思ってたけどそこまでとはね」

「トウマさんって・・・」

「ん?何か言ったかな?」

「ナニモアリマセン」

「よかった また折る所だった」

「ははは」

笑えないジョークと共にトウマは去っていき規定の時間になりニカイドウは自室へ戻った。その道中にある自販機で飲み物を買い自室でだらだらとしているとトウマがニカイドウの元へまた来てくれた。


「やあニカイドウ ご飯の時間だしいかないかい?」

「あー こんな時間経ってたか 今行きますね」

「うんうん いい返事だね」

準備を終え食堂へ向かうと1人の男がこちらに声をかけてきた。


「よおトウマ聞いたぞ 明日151だろ?お前らどっちがやるんだ?」

「やあサノ もちろんこっちの新人君」

「だろうな 頑張れよ えーと・・・名前何?」

「ニカイドウです トウマさんの同期さんですか?」

「うん サノって言うんだ 私の同期はこいつしか残ってないからね」

「・・・何人いたんです?」

「ん?5人だよ ああ、皆辞めただけだから安心して」

「よかった・・・」

「新人の頃を思い出すなぁトウマ」

「そうだね まあ今からご飯だから私たちは行くよ」

「おう じゃあな」

サノと呼ばれた男はどこかへ行ってしまった。

どうにも明日のSCPは厄介らしく頭が痛くなる。


「あの、明日の151ってなんなんです?」

「あー・・・まあ私たちがいるから死なないよ安心して」

「そうだといいんですが・・・」

「まあ今日はその分めちゃくちゃご飯豪華だから」

「最後の晩餐になりませんように」

「ははは 151ぐらいでそんな事思っちゃだめだよ」

「笑っていいのだろうか・・・」

「まあ食って寝ときな」

「はい・・・」

食堂につきトウマが話を終えると豪華な料理が出てきた。


「うはー 結構豪華ですね」

「まあね 被験者・・・いやなんでもない」

「今被験者って・・・」

「ん?」

「ん?じゃないですよ!」

「まあまあ契約書にも書いてある事だしね」

「はぁ・・・ばあちゃん俺の事守ってくれよ・・・」

「大げさだねぇ~」

席につきいつも以上に味わい深く食べる。

嫌いな物が特別ないためどんなものでも美味しく食べれるというのが幸福であることにニカイドウは気づき一時の幸せな気分を味わった。


「あー美味しい・・・明日が無ければ最高なんだけどなぁ」

「ねぇニカイドウ?」

「はい?」

「そのエビくれない?」

「いいですよ」

「ありがとう!」

どこか子供っぽい笑顔を時折見せるトウマはどう見ても20代後半から30代前半のはずだが、その笑顔からはまだまだ子供のように見えた。

さきほどの発言がどこかひっかかるが一旦は考えるのを辞めご飯を食べ進める。


「あーエビ美味しい」

「エビマヨ食べます?」

「食べる!」

「ははは 子供みたいですね」

「・・・後で〆るか」

「すいませんでした許してください」

「エビマヨくれたら許してあげる」

「どうぞ!」

「よろしい」


(やけに若いというか子供っぽいんだよなぁ)

エビには目がないらしくもしゃもしゃと食べ進めるトウマの姿にはどうしても年齢にそぐわない、まるで中学生か小学生としか思えない。大人特有の物が1つも感じれない所にどこか違和感を感じる。


「そんなに私が好きなの?」

「え!?いやいや全くタイプじゃn」

「え?なに?そこまで言う馬鹿いないよね?」

「いません 嘘です」

「だよね」

「で?何考えてたの?」

「いやぁ 明日どうやったら生き延びれるんだろうって」

「またか まあ大丈夫危ないけど死なないよ」

「祈るか」

「そうだね ははは」

雑談をしながら食事を終え挨拶をして自室に戻る。

風呂や歯磨きを行いぶっきらぼうなニカイドウは最低限を行い眠りについた。


「やあ おはよう」

「おはようございますトウマさん」

「うん じゃあ実験室に向かおうか」

「あれ?ご飯は?」

「あー 今日は食べない方がいいよ」

「わ、わかりました」

「死んで解剖されるときに内蔵ぐちゃぐちゃにされるから胃に何かあると困るんだよね ごめんね?これも規則でさ」

「わ、わかりました」

「でもほら こういうパウチの奴ならいいからさ」

「いただきます・・・って味がしないな」

「まあね ウチ特製って奴」

「味気ないけどいいか・・・」

つかつかと向かうと研究棟とある場所の実験室-3についた。

確実に何かやらされるなあと分かっていたものの嫌な気分になる。


「「お疲れ様です」」

「やあトウマくん 君は・・・今日の被験者かな?」

「ニカイドウです」

「そうそうニカイドウくんだね」

「こちら・・・あー・・・まあ博士とでも呼んでくれ」

「お名前は?」

「もう記録されててね まあ色々あって言えないんだ」

「な、なるほど」

もう記録は始まっていると考えるに空間が危ないのか?などと勘繰るニカイドウ


「ではニカイドウくん やってもらう事を言うがいいかな?」

「は、はい」

「今から君はあの部屋に入って絵があるからそれを24時間見てもらう」

「え?見るだけ?」

「そう だが危険だからね 部屋に入ったら固定させてもらうよ?」

「は、はい」

「ああ 通気性もいいし寝なければボーっとしてていいから」

「わ、わかりました」

「足は固定するけど手と口は固定しないから何かあったらそれをそのまま言ってくれ 

そうすればこちらからは聞こえるしすぐに対処する」

「はぁ・・・」

「大丈夫 危険だがちゃんと悲鳴をあげれば助かる」

「わ、わかりました」

「じゃあ始めよう 器具が中にあるからそれをつけてくれ 紙がある」



ー実験開始から1時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

これといった変化なし 飽きているのか欠伸などを多発

手、指などを規則的に動かし暇をつぶしているようだ

「これなんなんですか?」「なにもありませんよ」などと発言

レベル4職員トウマ、■■博士共々現時点で危険度は無いと判断

監視を6時間ごとに変え2人は適宜休憩する



ー実験開始から6時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

以前変化は無し ときおり咳をするが健康状態に問題は見られない

思考力が無くなってきたのか呆けた顔をしている

「問題ありませんよー」「終わったら教えてくださーい」などと発言

以前レベル4職員トウマ、■■博士共々計測器などを使うも空間自体に変化は無し

監視の交代という事で一時目を離すも大した変化は起きず


ー実験開始から12時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

咳が多発、苦しそうな表情が多くなる

思考力は苦痛により回復

「なんか苦しいです」「いつ終わるんですか」などと発言

計測機で肺などを計測、水に浸っているのか?肺水腫を確認元の状態では見られなかったため、SCP-151の影響だと想定される

監視がいつでも動けるよう入口付近で待機


ー実験開始から18時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

咳が更に多発、苦しむ

苦痛により徐々に思考が悪化

「おぼれてるみたいだ」「早く出してくれ」などと発言

まだ喋れるため続行

肺水腫が多数見られる、ほかにも水に浸される後が多数見られる。

限界まで様子を見る。


ー実験開始から21時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

声が発せなくなるほどの苦痛が見られる、咳はごく稀。

「早く出せ」と発言、発言回数は極めて少ない。

バイタルともに不安定、肺は溺死した遺体に似たものになっている。

まだ喋れるため続行


ー実験開始から23時間ー

被験者:ニカイドウ(職員)

ばたばたと暴れ出す

「出せ」としきりに連呼

計測器からの信号が限界に近いためもうしばらくで死亡

職員トウマからの提案で実験は終了

監視がニカイドウを引きずり連れ出し実験終了


ー実験終了ー

SCP-151には、人の事を24時間程度かけて溺死させるという事が今回の実験で再度立証された。今回の被験者は23時間40分行ったがもう少しで死亡が見込めた。おそらくではあるが、24時間ピッタリで溺死させるという事ができる物だと思われる。

以前の実験では死亡してしまったが今回は死亡せず実験を終えれたことを祝い本実験を終了する。SCP-151にはカバーをつけて厳重に管理を行う。



「げほっ!あ・・・がはぁ!」

「あー・・・こんな事いうのもあれだけど死ななくてよかったね」

「ふ、ふざけるな!」

「まあくじ引きで決まってるからさ 恨まないでよ」

「くそ・・・」

「まあ本当は博士殺す予定だったんだけど助かったからよかったでしょ?」

「うぅ・・・もう嫌だ・・・」

「あー・・・後3年は最低でも契約があるから厳しいよ?」

「げほっげほっ・・・もう嫌ですからね・・・」

「うーん・・・厳しいと思うけど伝えとくね」

「や、休ませてください」

「いやいや 今から医務室だよ」

「早めにお願いします・・・」


担架でニカイドウは医務室へ運ばれた。


「いやー博士すいません」

「まあ君の頼みだからね 君の相方はいつも死んでしまうからしょうがない」

「まあ私も殺してもよかったんですが 情が湧いちゃって」

「まあいいデータも取れたし 良かったよ」

「次は選ばれない事を願えと言っておきます」

「分かった ではね ご協力感謝する」

「はい 金はいつものとこですか?」

「ああ いつものところで頼む」

「まいどありー」

トウマはとある部屋へ行き金を受け取りニカイドウの所へ


「やあニカイドウ 少しは元気出た?」

「本当に死ぬかと・・・」

「だから殺さないって あとお金あげる」

「え?」

「被験者にはお金出るんだ 死ぬともっと出るけどね とりあえず30万」

「え?・・・ああ、やって良かった」

「次は左腕無くして300万ぐらい稼ぐ?」

「遠慮しておきます」

「ははは よかったよかった さっきみたいに怒ってたらどうしようかと」

「まあさっきはすいません 俺も冷静じゃなかったんで」

「いやいいよ 博士は殺す気満々だったけど私が止めて正解だったよ」

「怖いなぁ」

「ま 次は死ぬとかそういうのは言ってあげるから覚悟だけはしといてね」

「は、はい」

「マニュアル通りやれば基本しなないし実験も基本死なないように配慮されてるからさ 安心はできないけど命は大丈夫だから たぶん・・・」

「嫌になってきた・・・」

ニカイドウは3回目にしてようやくこの仕事の恐ろしさを思い知りつぐつぐここが嫌になっていた。

2日休暇が出るようでその間暇を潰しながら平和を堪能した。


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