夏祭りに行こう その3

 アリサとコハルは、わたあめを食べている。


「ふわふわで、食べると口の中で甘さがぶわぁーと広がりますねー!」

「祭りと言ったらわたあめはかかせないよね!」

「気に入ったなら、よかったよ」


 アリサは、ふわふわのわたあめを俺に差し出す。


「よかったら一口食べませんか? 美味しいですよ?」

「う、うん」


 俺はわたあめの端の方を少し頂く。うん、甘い。


 俺の様子を見て、アリサはにっこりと微笑む。浴衣姿も相まって、普段とは違う雰囲気のアリサにドギマギしてしまう。


「ヒュー、お熱いですなぁ! あっ、あれやろーよー!」


 コハルが指を指した方向には、射的コーナーがあった。大小様々な景品が棚に陳列ちんれつされている。


「どういうゲームなんですか?」


 アリサが小首を傾げる。


「コルクガンでコルクを景品に当てて、落下すればその景品をゲットできるんだよ」

「おー、面白そうですねー!」

「よし! やるぞー!」


 早速コハルが挑戦していた。ピストンレバーをカチッと鳴らし、コルクガンの先端にコルクを装弾して、ショット、ショット、ショット。


「えい! えい!」


 どうやら当てた際に落としやすい、小さめのお菓子を狙っているようだ。


 コハルは的確に景品を射抜き、3つのお菓子をゲットした。


「やったー! 早速、ゴリラのマーチ食べよっと。もぐもぐ、うまー!」


 コハルは幸せそうにお菓子をむさぼっている。


「次は私もやってみます!」


 アリサも続いて挑戦するものの、不慣れなコルクガンに苦戦し、景品になかなかコルクが命中しない。


 狙いはどうやら最上段の、クマのぬいぐるみのようだ。


 しかしさすがと言ったところか、少しずつ調整し、終盤には的に当たるようになった。しかし、ここで規定回数の5回が終わる。


「残念です……」

「なら、俺もしようかな」

「おー、お兄ちゃんうまいからなー。もぐもぐ」

「頑張ってください!」


 2人の声援を受け、俺は射的屋のおじさんに200円を渡す。


 ふっーと息を吐き、精神統一。カッと目を見開き、俺は最上段のクマのぬいぐるみの頭を狙う。コルクは見事に頭部に命中するが──


「あー、やっぱり重いから、揺れるのがせいいっぱいだねー。もぐもぐ」

「やはり、厳しいのでしょうか……」


 そこから俺は凄まじい速度で、次弾を装填そうてんし、ショット。寸分すんぶん違わぬ頭部に命中する。


「おおー! 揺れが大きくなった! これは……」

「もしかしたら……」


 その後も3発、4発、5発と頭部に命中させ、ぬいぐるみの揺れは最大級に。そして──


「落ちたー!」

「落ちましたー! やりましたね、ミナト君。すごい腕ですね! どこかで習ったんですか?」

「ハワイで親父に習ったんだ」

「すごいです!」

「(いや、コルクガンは日本で習いなよ……。ハワイで親父と何やってんの、お兄ちゃん……)」


 射的屋のおじさんが目をいて、驚いている。


「いやー、兄さん良い腕だったぜ。あのテガブツを取ったのはアンタが初めてだよ。ほい、景品」


 俺はおじさんから、大きいクマのぬいぐるみを袋に入れて渡してもらった。


「ありがとうございます。はい、アリサさん」


 俺はアリサにぬいぐるみを渡す。


「へ? くれるんですか?」

「ああ、欲しがってたろ? ゲーセンの時もそうだったけど、俺はゲームが楽しみたかっただけだからさ。ぬいぐるみは欲しかったアリサさんに貰って欲しい」

「ありがとうございます! またミナト君からの大切なプレゼントが増えました! これでベッドに2匹めの仲間が増えした! わーい!」


 にっこにこで、クマのぬいぐるみを抱きしめるアリサ。喜んでいるアリサを見るとこっちも嬉しいな。


「どう見てもバカップルなんだよねぇ……」

「ん? 何か言ったか? コハル」

「別にー? アツアツ過ぎてこっちが溶けそうってだけー。もぐもぐ」

「?」



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