アリサの誕生日を祝おう その3


 楽しかったデートはあっという間に終わりを告げ、そして俺は夕食の準備をする。


「よし、今日は腕によりをかけて作るぞ!」





「うわぁ、豪勢ですねぇ!」


 アリサの目の前には揚げたての天ぷらがたくさん。エビ、かぼちゃ、玉ねぎ、ナス、シイタケがラインナップとなっている。


「これはそのまま、いただくのですか?」

「塩でも、天つゆでも、そのままでも。お好きにどうぞ」


 アリサはエビ天に塩をかけて、一口。


「香ばしいサクサクの衣に、ぷりぷりのエビの甘さが口の中いっぱいに広がりますぅ。ううん、幸せ……」

「またまだあるよ。どんどん食べてね」


 アリサは嬉しそうにひょいひょいと野菜を口に運ぶ。


「野菜でヘルシーなのに、こんなにジューシーだなんて……。あぁ、日本食は素晴らしいです……」


 野菜は油を吸って、結構なハイカロリーになっていることは、黙っておいた方がいいのかな……。うーん……。


 というか前から思ってたけど、アリサさんって結構、大食いだよな。よくアレで太らないものだ。


 チラッと彼女の豊満な胸に目がいく。もしかして、胸に栄養がいってんのかな?


「なんでふか? ミナトくん?」

「い、いや、なんでも! うん、野菜美味しいな! うんうん!」

「?」





 2人で天ぷらを平らげた後、俺は冷蔵庫からあるモノは取り出す。


「もしかしてケーキ……ですか?」

「あぁ、手作りショートケーキ。ちょっと頑張って作ってみたんだ」

「私のために?」

「うん、17歳の誕生日おめでとう。アリサさん」

「!」


 そう俺が言った瞬間、アリサはポロポロと涙を流す。


「あ、アリサさん!?」


 俺はオロオロとうろたえる。


「いえ、こんなに盛大に祝ってもらったこと、久しぶりだったので……。つい……。グスッ、本当にありがとうございます、ミナト君」

「こんなに喜んでもらえて、俺も嬉しいよ。アリサさん、ロウソクに火をつけるね!」

「はい!」


 丸いショートケーキにロウソクを17本立て、着火する。ゆらゆらとゆれる灯火ともしびを、アリサは一息で消し飛ばす。


「とっても甘くて、とっても美味しいですね、ミナト君!」

「うん、それならよかった!」


 アリサは幸せそうにケーキを食べている。


「ミナト君と一緒に、食事をとるようなってから、毎日が幸せです!」

「俺もアリサさんと、一緒にいると楽しいよ」


 俺の心からの本心を告げる。あぁ、まるで夢のような日々だ。突然、覚めてしまい、何もかも嘘だったのではないかと不安になるほどに。


「もう私、ミナト君がいないと生きていけないかもしれませんね?」


 アリサがポツリとこぼす。


「──え?」


 俺の思考がフリーズしてしまう。


「冗談……だよね?」

「さて、どうでしょうか?」


 クスクスと笑うアリサ。からかわれたのかな? よし、なら俺も冗談で返してみようかな。


「うん、責任は取るよ、アリサさん」

「ふぇ!?」


 俺が真剣な顔でそう言った途端に、真っ赤な顔に染まるアリサ。


「君が俺なしで生きていけないなら、俺は君をずっと側で支える見せるから……」

「ふぇええええええ!?」


 アリサの頭からボシューと湯気が出た気がした。


「なーんてね!」

「び、びっくりさせないで下さいよ、もう!」

「はは、お互い様だろ?」

「クスクス、そうですね。今度のミナト君の誕生日もこれくらい、盛り上げられたらいいなぁ」


 かくしてアリサの誕生日会は終わりを告げる。一年で一度の祝いの日。そんな大切な日を彼女と共に過ごせたことが、とても嬉しかった。


 願わくば来年も、彼女の誕生日を共に祝えますように。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る