第23話 王都へ
魔物が姿を消し、北の森の生態系が戻った事を不信に思った私たちは森の調査を行うけど、結局原因は分からないまま、ティナムの街の付近の魔物の増加現象は一旦の解決となった。 ティナムでの問題も解決し、王都へと戻る事になった姫様たち。そして同時に、問題解決によって私が姫様たちに協力する理由もなくなったんだけど、姫様の提案で、私も王都へと行く事になった。
2日後の朝。駐屯地の入り口付近では王都へと戻る姫様を見送るために大勢の兵士の人たちが集まっていた。
そして馬車の傍で向かい合う姫様と司令官。
「それでは姫様。お帰りの際はお気をつけて」
「はい。お世話になりました」
敬礼姿の司令官に、姫様はゆっくりと答礼を返す。そして司令官は手を下げると、次いで私の方へと向き直った。
「ミコト殿。貴殿にも大変世話になった。貴殿のおかげでドラゴンは退けられ、街も守られた。駐屯地の代表者として、改めて礼を言いたい。ありがとう」
司令官はそう言って深々と私に頭を下げた。
「いえ。私はただ、殿下の力になりたいって思って協力しただけですから。それに、また何かあったら連絡を下さい。パワードスーツですっ飛んできますから」
「そうですか。そう言っていただけると、本当に心強い」
私の言葉に、司令官は安堵の笑みを浮かべながら頷いた。
やがて笑みを浮かべていた司令官は、表情を引き締め姿勢を正した。すると後ろにいた他の人たちもそれに倣う。
「総員ッ、我がティナムの街のため尽力してくれたお二人に、敬礼っ!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
ババッという音を響かせながら、皆が敬礼をしている。おぉ、何と言うか、圧巻の光景だなぁ。って、隣を見ていると姫様が答礼しているっ!?わ、私も咄嗟に同じように答礼をする。
「では、ミコトさん」
「あ、はいっ!」
姫様が静かに手を下げると、司令官たちも手を下げる。そして私は姫様に誘われるがまま、同じ馬車へと乗り込んだ。
そして私たちは兵士の人たちに見送られながら、駐屯地。そしてティナムの街を後にした。
ガタガタと少し揺れながらも街道を走る馬車。そしてその周囲を守る鎧姿のリオンさん達が乗る騎馬。
そして馬車の中で向かい合った姿勢で座る私と姫様。
「王都か~。どんなところなんだろう」
馬車の中でやる事も無く、私は窓の外を見つめながらポツリと呟いた。
「ミコトさんは、我が国の王都を訪れるのは初めてですか?」
「あ、はいっ」
私の言葉に反応して問いかけてくる姫様に、私はすぐに姿勢を正しながら答えた。
「正直、初めてだから凄い緊張してるって言うか。えっと、王都に付いたら私はどうすれば?」
「そうですね。ミコトさんには私たちと共に王城へと入城してもらいます」
「えっ!?」
王城に入るって、マジでっ!?
「そ、それ大丈夫なんですかっ!?私みたいな平民が王城に入るなんて、想像できないって言うかっ」
「問題ありません。不法侵入などではありませんから、特にこれと言って気負う必要などありませんよ」
「そ、そうですかぁ」
と、笑顔で言われてもなぁ。いきなり王城って。イメージ沸かないなぁ。うぅ、マナーとか色々気を付けないといけないよね?そう思うとやっぱり緊張しちゃうなぁ。
難しいことを考えていたからか、どうやら私の顔は自然と強張っていたようで。
「ごめんなさい、ミコトさん」
「へっ?」
唐突に聞こえた姫様の謝罪。なんで?と思った次の瞬間には『あっ!?もしかして顔に出てたっ!?』と私は思い、慌てたっ。どうしようっ!?と。
「い、いやっ!大丈夫ですよ姫様っ!これは私が勝手に緊張してるだけって言うかっ!」
「そう、なのですか?……ですが、もとはと言えば私が誘った事ですし。……それに、本当の事を言うとこれは私の『我儘』の結果なんです」
「え?」
唐突に聞こえた『我儘』という単語に私は首を傾げた。
「我儘って、どういう事、ですか?」
その言葉の意味が気になってしまい、思わず疑問符が漏れた。
「……本当は私自身が望んでいるんです。『もっと、ミコトさんに傍に居て欲しい』、と」
「……ふぇっ!?」
少し顔を赤らめた姫様の、まさかの言葉に思わず変な声が出たし、何か頬が熱くなってきたんだけどっ!?
「そそそ、それって、ど、どういう意味でしょうかっ!?」
「意味、ですか。そうですね。……ただ、言葉通りです。これまで何度も私を守ってくれたミコトさんが、とても頼もしくて。強くて。カッコよくて。まるで、おとぎ話に出てくる姫を助ける騎士様のようで。だからこそ、傍に居てほしかった。私を支えてほしかった。という事です」
「な、成程っ!そういうことですかぁっ!」
で、出来るだけ冷静で居ようと思ったけど無理っ!顔は赤くなるし声は上ずっちゃうっ!って言うか姫様の顔も、少し赤く、まるで恋焦がれる少女のような表情をしているようなっ!?そ、そんなはずないよねっ!私たち女同士だしっ!
とか考えていると。
「ごめんなさい、ミコトさん。私の我儘に付き合わせてしまって。ミコトさんにだって、やりたい事はありますよね」
姫様は、申し訳なさそうに目を伏せ、頭を下げている。
「いやいや、別に気にしてないので顔を上げてください。別に今すぐ『これがやりたいっ!』って事はありませんでしたし」
実際、別に今何かを急いでやりたい、とかでは無かったからそんなに気にしてない。なのに姫様に頭を下げさせているのがなんか恐れ多かった。
「そう、ですか?そう言っていただけると、助かります」
やがて姫様は少し安心したような表情を浮かべながら頭を上げた。
「い、いえいえ。……あ、それでその、王城に着いたら、その後はどうなるんでしょう?」
「そうですね。まずはお父様や重鎮たちに私の口からティナムの街、並びに北の森で発生した戦闘や目撃された魔物の報告。それにドラゴン出現とその討伐の報告など、色々話す事がありますから、まずは報告を行い、その後にお父様たちにミコトさんを紹介する形となりますね」
「成程」
と、頷いたのだけど、すぐに『ん?』とある疑問が浮かんできた。
「あの、殿下。私たちが王都に着くのってどれくらいになりますかね?」
「え?そう、ですね。馬車での移動ですから、数刻あればたどり着きますね。お昼過ぎごろ、にはたどり着けるかと」
「では今仰っていた報告は、今日中に?」
「えぇ。そのつもりですが、何か?」
きょとん、と小首をかしげている姫様。
「え、え~っとですね。報告とか色々なさっていると、多分今日中に私が国王陛下にお目通りしていただくのは、無理、ですよね?」
「あっ」
私の言葉を聞くと、姫様は文字通り一瞬『そうだっ』と言わんばかりに表情を浮かべた。
「そうですね。お昼ごろにたどり着いたとして、お父様たちを集めて報告などをしていると、終わるのは夕暮れごろになってしまいますし、その後で紹介となると、確かにかなり遅い時間になってしまいますね」
「ですよねぇ。それでその、質問なんですが。もし仮にお目通りが明日以降になったとして、私はその、どこに居れば良いのかなぁ?と思いまして」
今日中に王様と出会う事は無理そうだし、ただそうなると私はどこに滞在すれば良いんだろう、という事を思い出していた。
幸い女神様から頂いたお金は殆ど手を付けてないから、街で宿を取る事くらいは出来るだろうけど。いざとなったら姫様か誰かに、良い宿紹介してもらいたいなぁ。
まぁ一国の王女様に宿を紹介してもらうって中々無い、いや殆どありえないだろうけどさ。なんて思っていると。
「成程。でしたら、王城の客間をお使いください」
「えっ!?」
と、宿を取ることを考えていたら、何とも予想外の言葉がっ!
「い、良いんですかっ!?私が王城の一室を借りるなんてっ!?」
「えぇ。構いません。何度も申していますように、ミコトさんは今回のドラゴン討伐、ティナムの街の防衛の立役者。そんなミコトさんを右も左も分からない王都で安全に滞在していただくとなると、王城しかありません。それに王女である私の口利きもあれば、これと言って問題なく許可が下りるでしょうから」
「そ、そうですか」
まさかのお城で部屋借りる事が出来そうっ!?……駐屯地でお世話になり始めた頃は、緊張で寝付けない時もあったけど。何だろう、また同じ事になりそうな予感が私の中であった。
その後も馬車は何事もなく走り続けた。そして小高い丘を越えた時。
「あっ、ミコトさん。見えてきましたよ。我がリルクート王国の王都です」
窓の外に目を向ける姫様。私もそれにつられて視線を窓の外へと向けた。
「おぉ~~~っ!」
窓の外に見えたのは、なだらかな平原地帯の上に立つ、城壁に囲まれた巨大な都市だった。ティナムの街とは比較にならない程に巨大な城壁。それがグルリと王都を囲っていた。そして王都の中央には、煌びやかなお城が見えた。あれが王城かなっ?
私はただ、遠目に見える王都を目を輝かせながら観察していた。物語の中にあるだけじゃない。生のファンタジー世界の、王都。それがもう少しと言う所まで近づいている。
期待と興奮、不安で心臓が高鳴る。そして私は王都をただ見つめていたのだけど。
「ふふっ」
だからこそ私のそんな姿を見てお姫様が小さく笑っているのに、この時の私は気づかなかった。
それから1時間もせずに馬車は王都を囲う城壁の関所まで到着。そして到着すると……。
「お、おいっ!あの馬車の女性はっ!?」
「あっ!?あれはミリエーナ様じゃないかっ!?」
やっぱり王族が乗っている豪華な作りの馬車ってだけあって、道行く人たちは皆振り返り、姫様も笑顔でそれに答えるように窓越しに手を振ったりしている。
関所には王都に入ろうとしていた商人らしい人たちの馬車の列が出来ていたけど、姫様と私を乗せた馬車、リオンさん達の騎馬はその脇を殆ど素通り。一度だけ姫様の様子を、関所の隊長らしい人が確認しただけだった。
ちなみにその時、その隊長は『姫様と一緒に馬車に乗ってるお前は誰?』みたいな顔で私を見つめてきた。
まぁそうだよねぇ。王女の馬車にどこの馬の骨とも知らない輩が乗ってたら訝しむよね普通。どうなるのかなぁ?と思ったけど。
「彼女は私の大切な客人です。御心配には及びません」
「はっ!分かりましたっ!では、失礼しますっ!」
正しく鶴の一声。姫様の言葉を聞くと、隊長らしい人はすぐに引き下がった。
その後、荷物のチェックを商人の馬車が受けている脇を通り、文字通り顔パスで関所を越えて王都内部へ。
「や、やっぱりすごいですね。王族って。関所を殆どチェックも無し、顔を見せただけで通過ですか」
「えぇ。国外から来賓の方が来ている時などは王族もチェックを受けますが、今はそのような事のない平時ですからね。そう言った時ですと王族はこうして素通りの事が多いんです」
「へ~~~」
なんて話をしつつ、私は窓の外に目をやった。今馬車は、関所から入った大通りを進んでいた。大通り、というだけあって人の数や露店の数、店の数、行きかう馬車の数、どれをとってもティナムの街とは比較にならない。
例えるなら、ティナムの街は私の前世日本で言う地方都市。決して人が少ない訳ではないけど、大都市と比べるとやっぱり人の数は少ない。一方この王都は、今まさに比較した大都市そのもの。人の数、密度が地方都市の比じゃない。
露店の主らしい人たちが道行く人に大きな声で声をかけ、お店では店員さんらしい人が忙しなく接客している。道行く人たちも、子供から大人、老人と世代もバラバラ。更に、武装して鎧を纏ってるから冒険者、かな?それらしい人たちも大勢歩いている。
す、すごいっ!まさにファンタジー世界っ!やばいメッチャ興奮するっ!改めて自分が本物のファンタジー世界に転生したんだって実感できるっ!
「おぉ~~~~!」
そして興奮から、私は自然と声が漏れてしまっていた。
「ふふっ、随分熱心に王都を見ておられますね、ミコトさん」
「はっ!?し、失礼しましたっ!」
姫様に声を掛けられ、私はハッとなって姿勢を正した。うぅ、これじゃまるで田舎から都会に出てきた田舎娘って感じだよぉ。恥ずかしいぃ。恥ずかしくて顔が熱いぃ。
「いえいえ。そのようにはしゃぐミコトさんを見られて、私も楽しいですから」
「ふぇっ!?う、うぅっ!」
み、見られてたぁっ!いい歳してはしゃいでる姿見られたぁっ!恥ずかしいぃっ!
と、私が羞恥心で悶えている間に馬車は王都の中を進んでいく。そして、ついに馬車は王城を囲う城壁の前へとたどり着いた。城壁から王城へは跳ね橋があって、これを下ろしてもらえないと城に入れないみたい。そして城壁の傍の詰所から確認のために兵士の人たちが数人やってきて、姫様の姿を確認しリオンさん達と少し話をして、詰所へと戻って行った。
それからしばらくすると、跳ね橋が動き出した。ガラガラと大きな鎖が音を立てながら動き、橋が下りてくる。そして橋が降りきると、馬車とリオンさん達の乗った騎馬は王城の敷地内へと進んでいった。
「お~~~っ!」
私は窓から見え、そして見上げる程に大きな本物のお城を前に、またしても姫様がそばに居る事を忘れて興奮していたっ。でもやっぱ凄いっ!お城なんて前世じゃディズ〇ーランドのシン〇レラ城くらいしか見た事無いんだよねぇっ!
やがて馬車は王城の入り口付近まで近づくけど、何とそこでは兵士と思われる人たちが紺色の軍装姿でビシッと横一列に整列していたっ!?まさか姫様のお出迎えっ!?いや王女なら当たり前かっ!
などと私が驚いていると、馬車はその傍で止まる。すぐさま近くに馬を止めたリオンさんが近づいてきて、馬車の扉を開けた。
「さぁ、姫様」
「えぇ。ありがとうリオン」
姫様はリオンさんの手を取り、馬車を降りた。ってこれ私も降りて大丈夫なのかな?私は少し姫様から感覚を開けて、おっかなびっくり馬車より降りた。
「「「「おかえりなさいませっ!マリーショア殿下ッ!!!」」」」
お、おぉっ!なんか急に兵士の人たちがビシッと敬礼を決めながら大きな声を上げているっ!若干、いやかなりビビったんですけど私っ!?
しかし姫様はリオンさんや他の護衛騎士の人たちを伴い、慣れた様子で兵士の人たちの間を進んでいく。こ、これ私付いて行って大丈夫?ヤバいちょっと怖いしメッチャ不安っ!あぁ、何かお腹痛くなってきたかも。
「ミコトさん?どうしました?」
と、私がしり込みしていると、姫様が振り返って声をかけてくれた。
「あ、え、えと、こ、これって私、進んでも、大丈夫、ですか?」
「えぇ。構いませんよ。さぁ、こちらへ」
「は、はい」
笑顔で促してくれる姫様だけど、うぅ、周囲の屈強な男性の皆さんの視線がなんとなく痛い。結局私は姫様の後ろに隠れるようにして、姫様の後に続いた。お城の入り口から入ってすぐの所、エントランス、で良いのかな?その時点で既に豪華だった。天井からは大きなシャンデリアが垂れ下がり、白く輝く大理石の柱やタイルも相まって、どこか神聖な、或いは神秘的な美しさを醸し出していた。
「「「「おかえりなさいませ、姫様」」」」
と、入って早々再びお出迎えっ!しかも今度はメイドさん達だよっ!?やっぱ王族とか王城って、凄いんだなぁ。こんないろんな人たちに出迎えてもらえるなんて。
文字通り、住む世界が違っていた。そして今の私は、前世だったら訪れる事など無かっただろう本物のお城に足を踏み入れている。
『ゴクリッ』
その緊張から自然と固唾をのんでしまう。そして周囲をキョロキョロと見回していると。
「あぁ姫様ッ!お戻りになられましたかっ!」
不意に声がしてそちらに視線を向けた。見ると正面の階段から燕尾服姿の、1人の初老の男性が小走りでやってきた。執事さん、かな?
「ケリー。ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ、姫様。ご無事にお戻りになられて、本当に何よりです」
ケリー、と呼ばれた執事のような男性は安堵の笑みを漏らしていた。
「おや?」
と、その時ケリーさんと私の視線が交差した。
「あ、こ、こんにちはっ」
場所が場所だったから、咄嗟に、殆ど反射的に挨拶してしまった。
「はい、こんにちわ」
ケリーさんは驚きもせず、すぐに笑みを浮かべながら挨拶を返してくれた。あぁ、良かった。いきなり『なんだお前はっ!?』みたいなこと言われなくて良かったぁ。
「姫様。こちらの女性は?」
ケリーさんは挨拶をすると、すぐに視線を姫様の方へと戻した。
「彼女はハガネヅカ・ミコトさん。私たちがティナムの街へ向かう道中で出会い、そして幾度も助けられた方です。今の彼女は私の客人であり、時間があればお父様たちにもお会いしていただく予定です。今日明日は、城の客間に泊まっていただく事になる予定なので、用意をお願いします」
「かしこまりました。他に、何かご用は?」
「では、ティナムの街での報告をしたいので、お父様と、可能であれば騎士団長や大臣たちを集めてください。かなり重要度の高い案件もありますので」
「ッ。分かりました」
重要度が高い、と聞くとケリーさんは一瞬だけ驚いた表情を浮かべ息を飲んだ。でもすぐに表情を引き締めて頷くと、姫様に一礼をして、近くにいたメイドさんの1人に声を掛けると、どこかへと行ってしまった。
「では、ミコトさん。私たちは一度それぞれの部屋などに行きますので。ここで一旦お別れとなります」
「は、はい」
ここで一旦別行動かぁ。……って、あれっ!?じゃあ私この後どうしたらいいのっ!?ここ右も左も分からないお城の中だよっ!?どうしよっ!?
と、内心パニックになりかけていた時。
「ハガネヅカ様」
「えっ!?は、はいっ!」
いきなり様付けで呼ばれ、戸惑いながら振り返るとそこには先ほどケリーさんから声を掛けられていたメイドさんが。
「先ほどケリー様よりお話を頂きまして、ハガネヅカ様がお使いになれるよう客間の準備をこれよりさせていただきます。それまでの間、王城の一室でお待ちいただきたいのですが、よろしいですか?」
「あ、え、えと、は、はい。大丈夫、です」
「ありがとうございます。では、案内いたしますのでこちらへどうぞ」
「は、は~い」
その後、私は戸惑いながらも案内され、向かったのは王城の一室。そこも豪華な調度品が置かれた、待合室という感じだった。
「では、こちらでしばしお待ちください。客間の準備が出来ましたら、またお呼びに参りますので。それと、この後お茶をお持ちいたしますので、少々お待ちください」
「わ、分かりました」
「では。失礼いたします」
そう言ってメイドさんは一礼すると部屋を後にした。豪華な部屋に残された私一人。
「はぁ~~~」
私は盛大にため息をつきながら、部屋のソファに腰かけた。そして窓の外から見える青空を見ながら、ただ漠然と考え事をしていた。
『これからどうしよ?』と。
この世界に転生して、最初はパワードスーツの力で冒険者でもやるつもりだった。でも世界の現状も知ってしまった。いやまぁ、冒険者として活動してればそう言った魔物の騒動にも自然と関わっていく事になるだろうけど。
でもほんと、これからどうしよ?
「ハァ」
一つの問題、ティナムの街の問題は片付いたけど、私はこれからの事が決められなくて、ただただため息を漏らすのだった。
第23話 END
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