第45話 魔界?
ダンジョンという場所には不思議なルールがある。
誰かに言われたわけでも、提示されたわけでもないけど、多くの研究者により、十年間の研究で判明されたのは、パーティールールというものが存在する。
これは一体の魔物をパーティーで倒すという概念だ。
もしパーティーじゃない場合、魔物を倒した際にダンジョンが決めた独自なルールによる判定で
これはダンジョンが定めた特殊ルールなので、我々人類がどうこうできるものではない。
パーティーとして認識した場合、最大六人までパーティー判定される。
七人以上の場合、そもそも人数過多になってしまい、
例えば、金属スライムを倒した際に、俺と咲がパーティーとして認識していなかったので、経験値を俺一人で独り占めしている。
そしてもう一つのルールがある。
経験値度外視で――――ドロップ品を狙う場合がある。それこそ二十人や三十人、百人と何人でも一緒になって倒してもいいのかという部分だが、実はここにもルールがある。
倒した魔物が何かをドロップするには――――十二人まで関わっているかどうかとなっている。
「いや~楽しいな~!」
「久しぶりに気持ちいいな!!」
『こんなに賑わってる配信初めてなんだけどwww』
無数のコメントが流れて、探索者たちが後方から魔法を放つ。
俺とレナ、冬ちゃんはそれらを眺めながら
「壮大な光景だね~」
「魔法ってすごいんだね……」
「そうね。アウラちゃんも楽しそう~」
「$#%“$~!」
探索者たちと混ざって、一緒に魔法を撃ち続けるアウラも満面の笑みだ。
現在やっているのは、先日内部が変わったダンジョンの瘴気を減らすために、遠距離能力を持つ探索者を多く集めて、現れる魔物を殲滅している。
俺や盾役の探索者たちが防衛をしつつ、人数を多くすることで魔物をどんどん出現させていく。
そして――――たまに現れる巨大魔物。それでようやく俺達の出番だ。
どうやら巨大魔物の鱗は頑丈で一定以上のダメージを与えないと、そもそもダメージが与えられない。
集まった探索者たちの魔法はまったく効かなかった。
『デカいのまた出た!!』
『英雄殿頑張れ~!』
『レナちゃん可愛いよ~!』
いや、それ戦い関係なくない!?
『冬様あああああ! 出番すでよおおおお!』
「ふん。知ってるわ。黙りなさい」
『ぶひ!』
…………。
きっと俺には分からない何かがあるのかもな。
「みんな頑張って!」
「「「あいよ~!」」」
咲の声とともに俺達全員に一斉に補助魔法が掛かる。
彼女もレベルが上昇し、
ただ、四重掛けでも、その効果は人によって違うため、俺は速度のみ、レナと冬ちゃんは防御と攻撃力の二重掛けのみにしている。四重にすると効果は薄くなるので、単体の方が性能は上だ。
そのおかげもあって、今の俺は昔とは比べられないくらい速く動ける。
巨大魔物に攻撃を加えながら振り下ろされる攻撃をギリギリで避ける。
『あいかわらず避けるのうめぇ~』
『英雄殿って避ける必要ないのによく避けるよな~』
『レナちゃんいっけぇ~!』
巨大魔物の後方に凄まじい斬撃が空中に広がっていく。
目に見えるほどの強烈な斬撃とともに巨大魔物の黒い血液も吹き飛び、悲痛な叫びを上げる。
『英雄パーティーかっけぇ~!』
まだパーティー名は決めていないけど、リスナーたちから【英雄パーティー】と呼ばれるようになった。
いまだに英雄と呼ばれていることに慣れないけど、いまさら何か決めることもできず、そのままにしている。
俺はともかくレナも冬ちゃんも咲もリサも、最近はコメントでよく褒められるし、これもいいかもな。
巨大魔物が倒れて消えていく。
世界に広がっていた瘴気がみるみる減っていく。
目に見えていた瘴気もほとんど見えなくなった。
『魔界が普通になってきたな~』
魔界。
内部が変わってから名前は付けていなかったんだけど、配信を始めると瞬く間に【魔界】という言葉が広がり始めた。
でもその言葉がしっくりくるなとも思う。
「本当に遠くまで見えるようになりましたね~先輩」
「そうだな。リサのドローンまで見えるくらいだしな」
「先輩って意外と視力いいんですね」
「そうかな?」
「ええ。そもそも動体視力もいいですよね。レナ先輩とか私の動きを目で追えてますし」
「そうみたいだな。他の探索者さんは見えないみたいだしな」
「そうですね~これでもスピードには自信があったんですけどね~」
冬ちゃんの速さは俺の周りでも随一なのは間違いない。
目で追うのがやっとで、もし冬ちゃんと手合わせすることになったら、絶対に勝てる気がしない。そもそも攻撃が当てられないから。
――――その時。
魔界と呼んでいる世界が揺れ始めた。
「地震!?」
大きな音が響き始めて世界が――――
『おお~これが転換か~』
『転換キタァァァァ~!』
『すげぇ! ダンジョンが入れ替わるなんて面白すぎやろww』
『映画より映画してて草www』
瘴気による霧が消えた世界の空間がうねうねと変わっていく。俺達の体に変化はなく、世界が変わっていく。
地面も変わるけど立っている感覚は変わらない。
世界は段々と洞窟に変わり、いつものダンジョンに戻った。
「ダンジョンに戻った!」
異例なことにコメントは大盛り上がり。参加していた探索者たちも多く盛り上がった。
ただ、あの世界と、アウラがいた魔族がいた城と、似たようで何かが違うけど違いが分からないのにも大きな違和感を覚えているが、それを悩んでも仕方がないなと思う。
その後、探索者と軍人さんたちとで打ち上げとなり、俺は人生初めての飲み会に参加した。
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