第18話 妹の力

 各自事情聴取を受けて俺が最後だったので、終わってリサが待つ病院に向かう。


 呼び方も難しいので、俺達では【アジト】と呼ぶことにしている。


「伊吹くんって多分釈放されてしまうわね」


「うん。警官が何度目か分からないって言ってたからな。でもそれでも大丈夫。俺達には最強の味方が付いているから」


「最強の味方……?」


「行ってみれば分かるよ」


 アジトに着いた。


「お兄ちゃん~お帰り。これ~」


 満面の笑みで出迎えてくれる妹。


 妹は現場にはいなかった・・・・・・・・・ので事情聴取は受けていない。


 テーブルに着くと、妹が俺達に紙を渡してくれる。


「では説明します!」


「お願いします!」


「伊吹議員の黒い噂を全部集めたよ。どれも揉み消された・・・・・・形跡があるものばかり。まず最初に一枚目の事件――――」


「ま、待って! ユウマくん? リサちゃん? どういうこと?」


 レナだけじゃない。咲も冬ちゃんも驚いていた。


 実はこの一件、まだ彼女達には何も説明していない。俺と妹だけの秘密にしていた。


「実は、ダンジョンを出てすぐに怒声が聞こえて、急いでドローンを上に飛ばしたんです。念のため、ずっと撮影していました。その傍ら、レナお姉ちゃんと彼の関係をするに調べたら、伊吹議員と白鳥博士・・について色々知ることができたんです」


「っ!?」


「俺も驚いているよ。妹のスキル・・・・・は知っていたけど、それがまさかここまで凄いとは思わなくて」


 みんなでリサに注目する。


 リサは、長距離は歩けないけど、短距離なら歩けるし、こうして立ったままでも話せたりする。けど、長時間立ちっぱなしは厳しい。


「私もずっとお兄ちゃんのために何かできないかなと考えていたけど……スマホだとどうしても限界があって使えなかったの。今回レナお姉ちゃんが準備してくれたコンピューター搭載型椅子のおかげで私のスキルを存分に使うことができたの」


「リサちゃんの……スキル?」


「うん……! 私のスキル――――【情報管理】というスキルなんだ」


 一見、普通のスキルかのように聞こえるし、いつも病室で行動するしかできない妹が使えるスキルだとは思わなかった。


 というのも、妹本人もどういう時に発動して、どういう風に使うのか見当もつかないと言っていた。


 そこで今回椅子でコンピューターを操作できるようになった時に目覚めたらしい。と、さっき伊吹くんと対峙してたときに教えてもらえた。レナと伊吹くんの関係はそのとき調べたらしい。


「やっと私もお兄ちゃんのために何かができるようになってすごく嬉しいんだ……! だからレナお姉ちゃんにはとても感謝しているし、あの男は許せないの!」


「リサちゃん……」


「伊吹議員の一人息子の事件を全て調べさせてもらったよ。データは全部国のデータにアクセスしたものだから信ぴょう性は間違いないかな!」


「く、国のデータに…………リサちゃんの能力って……」


「レナお姉ちゃんを脅迫した人は許さないんだから……!」


 あぁ……うちの妹が黒いオーラを放ってるよ!?


 意外な姿というか、ずっと一人で寂しい思いをしてきて、ようやく少し開放されたのに、邪魔されて怒っている様子。


 それにリサだって俺達のパーティーメンバーだから、メンバーのことに真剣に怒ったと思う。


 それにいつの間にかリサがみんなを「お姉ちゃん」と呼ぶようになった。咲もそう呼んでいるし、冬ちゃんは「冬ちゃん」と呼んでいて…………初めてできた友達だからこそ大切さを感じているんだと思う。だって…………俺もそうだから。


 だから絶対にこのままにはしない。絶対に――――守るんだ!


 そこで冬ちゃんが手を上げた。


「全部読んだけど、これを暴露できる証拠があれば、確かに伊吹議員を追い込むことはできる。でもそれをするとかなり大変なことになるよ?」


「それも全部想定しているよっ! そのために、これを伊吹議員に提示しようかなと思ってる」


 もう一枚の紙を渡してくれたリサ。そこにはこれからのプランと交渉内容が書かれていた。


「…………探索者ギルドを使うつもりなのね」


「うん。だって――――探索者ギルドもお兄ちゃんをそのつもりで抱えたんでしょう?」


 リサと冬ちゃんが睨み合う。


 え、えっと…………お兄ちゃんはリサ達が何を言っているのかさっぱり理解できないんだが……。


「分かった。おじいちゃんには私から全部伝えておくよ。資料も渡していい?」


「うん」


「じゃあ、ちょっと行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 話がまとまった!?


 冬ちゃんは資料を持って部屋を後にした。


 俺達はそのままリサのプラン通りに動くことにした。




 翌日。


 朝早くに俺達がやってきたのは、昨日の警察署。


 リサの読み通りに一台の車が警察署に止まり、中から降りたのは、伊吹くんのお父さん、伊吹議員だ。


 彼が警察署に入る前に俺が彼の前を塞ぐ。


 当然のようにSP達が俺を抑えようとするが、【金剛支配者】のおかげで一切効かない。


「初めまして。伊吹さん。俺はユウマという探索者です」


「…………息子が騒ぎを起こしたという男か」


「ええ。警察署に入る前に少し話していただけますか? もし拒絶した場合、昨日の映像・・・・・を出します」


 伊吹議員の顔色が少し強張る。


「いいだろう。それなら中で部屋を用意させよう・・・・・・。」


 自分の家かのように中に入る伊吹議員。


 スーツからでも分かるほどに彼の体付きは筋肉質なのが分かる。


 伊吹議員が一番指示されている理由。


 警官上がりで、スキルを悪用する犯罪者を捕まえた功績が大きい人だからだ。

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