第3話 星をあげる

「この星、受け取ってくれる?」

 光る星を持った両手を差し出してその子はそう言った。


 この世界では、生まれた時から一人一人に星があり、星を片手に掴んで生まれてくる。色は様々で形はあってないようなものだ。最初は赤ん坊の掌サイズだった星は、その人間が成長するにつれて一緒に大きくなっていく。

 

 この世界では、自分の星のカケラを好きな人に渡して受け取ってもらえると両思いの証になると言われている。


「……ごめん、受け取れない」

 差し出された相手は、とても苦しそうに、悲しそうにそう答えた。


「うん、知ってた。ありがとうちゃんと言ってくれて」

 断られたその子は、悲しむ様子もなく笑顔で言った。


 すると、両手に持っていた星のカケラが弾け飛び、その子の体も光出した。どんどん粒子のようになってサラサラと風に靡いて消えていく。


 その様子を見て、断った相手は涙を流している。

「ごめん、本当に。ごめん」


「いいの、私が選んだことだから。ずっとこの気持ちを抱えたまま生きていく方が辛いもの」


 ありがとうね、そう言ってその子は光の粒になって消えていった。


 断った相手は、その場に崩れ落ちて泣きじゃくる。

「だから、嫌なんだこの世界は……誰も、好きになりたくないし好かれたくない。こんな辛い思いをしなくてもただただ誰かを好きになったり好いてもらえるような世界に行きたいよ」


 この世界では、自分の星のカケラを好きな人に渡して受け取ってもらえると両思いの証になると言われている。

 そして、断られると星に戻って最後は消滅するのだ。


 それが悲しいことなのか幸せなことなのかは、星に戻って消えていった本人にしかわからない。







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