第15話水族館デート。瑠璃編

屋外ステージの最後部席で僕と瑠璃は隣り合って腰掛けた。

「イルカさん可愛い♡とか言ったらメルヘンっぽく思われる?」

瑠璃は冗談っぽく口を開くと大げさな仕草を取った。

「思わないよ。好みは人それぞれだし」

「やっぱり大人で優しいね」

「そんなことないよ」

そう口にして首を左右に振って応えると瑠璃は再び冗談でも言うように口を開く。

「お兄さんはどんな女性がタイプですか〜?」

インタビューアーの様な仕草で持ってもいない空想上のマイクを右手に構えるとこちらに向けてくる。

「どんなって…今は特に一途な人が良いと思うよ」

「なるほど。傷は完全に癒えてないんだね」

「そうなるのかな。ショックはでかかったよ。目の前で何を言われているのか全く分からなかったから」

「それもそうだよね。わけが分からず、おかしくなったとしても不思議じゃない出来事だし」

その続きの言葉に詰まっていると瑠璃は突っ込んだ質問を繰り返してくる。

「元カノさんにはどの様な報いを受けてほしいですか〜?」

再びインタビューアーの様に空想のマイクを構えた瑠璃に僕は再度言葉に詰まる。

「………」

思うところはある。

きっと痛い目にあってほしいとも心の何処かでは思っているはずだ。

しかしながら相手は十年間一緒に居た相手だ。

出来ればそんな思いはせずに普通に健やかに暮らして欲しい。

僕の本心はこれだろう。

「報いなんて受けなくて良いよ。僕のことは忘れて健やかに暮らして欲しい。かな」

「本当に大人だね。というよりもお人好し?」

「そうかもね。僕に魅力が無かったから吉乃は浮気をしたんだろうし」

「それは違うよ」

「まぁ僕らが想像してもわからないことだけど…」

「そうだね」

そこまで会話をした所でイルカショーは始まり、数人のインストラクターのお姉さんとイルカがショーを繰り広げていく。

イルカショーに目を奪われたまま三十分のデートの時間は過ぎていくと水族館の外に出る。

「ほら。結局、瑠璃が少しだけ長いデート時間になったじゃん」

導が拗ねたような表情を浮かべて文句を垂れていた。

「別に良いじゃない。皆いい思い出になったでしょ?」

鏡子が皆をまとめるように口を開き花音はそれに頷いて応えた。

「それで。この後は街をドライブだっけ?鏡子は何処か当たりを付けてるの?」

瑠璃の問いかけに鏡子は平然とした表情で首を左右に振る。

「なんでよ…自分のデート以外に時間は結構あったでしょ…」

「導とカフェで食事してた」

「勝手過ぎる…皆でお昼じゃなかったの?」

「導がお腹空いて倒れるとか言うから」

「そんなわけ無いでしょ。朝食あんなに食べてたんだから」

「私もそう言ったんだけど…めっちゃ食い下がってきて…」

「もうわかったわ。とりあえずドライブ。何処かで少し豪華なお昼でも買ってホテルに帰るでいい?」

瑠璃はみんなに問いかけて彼女らも意見がないようで頷いていた。

「早く飲みたいかも」

珍しく花音が提案を口にして瑠璃は首を傾げて応える。

「別に良いけど」

「ん。じゃあドライブが終わったら昨日みたいにホテルで飲も?」

「了解。その後はまたビーチ?」

瑠璃は再びみんなに問いかけると鏡子は頷いてはしゃいだように口を開く。

「賛成!賛成!夕方からビーチ!夜は外で飲む!」

鏡子の様子を目にしていた瑠璃は呆れたように嘆息する。

「はぁ〜…鏡子がプラン練って無いから昨日と同じ様なスケジュールになったんですけど?」

「まぁいいじゃない。ここは南の島だよ?ビーチに行ってなんぼだよ」

「昨日と言ってること違くない?地元の人間はそんなに行かないんじゃないの?」

「そうじゃないよ。昼からは行かないって言っただけ。夕方からは涼しいし。行く人は普通に行くよ。特に意中の男性とは良く行くんじゃないかな」

「ふぅ〜ん。それなら目的通りだし良いけど」

そのまま揃って駐車場に向かうと僕らは車に乗り込む。

来た時と同じ座席に腰掛けると瑠璃が運転席に座った。

「じゃあ出発するよ〜」

全員がシートベルトをしたのを確認した瑠璃は車を発進させるのであった。

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