第13話 助けて〜

【はるとー、起きてる?】


【りな、俺、今日から出向だよ。昨日急にさ】


【知ってるよ、昨日聞いたし…】


【じゃ、何で?来たの?電車逆方向だよ】


【だからさー、私がはるとを連れてくの!】


【意味解んないよ、何で、りなが】


【みさ、めちゃ無理してるから、私が行くの】


 俺は子供か…一人で行けるっての。何だよ、馬鹿にして。でも、さきさんって苦手だから、りなに来てもらうと有り難いかな。


【じゃ、早すぎるけど、すぐ準備する】


【待ってる、はると、部屋汚いね】


【見るなよ、絶対見るなよ…フリじゃないぞ!】


 あいつ、人の部屋、興味津津で見るからな、普通ベッドの下のとか見ないよな。


【はると、この雑誌まだ持ってる、よほどタイプなんだね。やっぱ似てない?私と…】


【似てないって…しかもタイプとか、図々しいな】


【悪かったねー、タイプでなくて!】


【付き合ってるんだから、好きには違いない!もういいじゃんか、それで。準備するからちょっと黙ってて】


【…解ったよ…】


可哀想かな?でも質問攻めで準備出来ないよ。


母親が、りなを呼んで、


【りなちゃん、朝ごはん食べていかない?良かったら。はるとは…食べてたら間に合わないね】


【はーい、ありがとうございます。いただきます】


りなは、楽しそうに話しながら食べてる。


【りなちゃん、はるとと付き合ってるだって?よろしくね】


【おばさん、言うの忘れてた。ごめんね】


【いいの、いいの、りなちゃんがお嫁さんなら大歓迎。可愛いし、優しい、申し分なし。娘と思ってたからね】


【そんな、可愛くはないよ。それにお嫁さんなんて、そんなんじゃないですよ】


【そんなそんな、謙遜しないの。はるとも昔からりなちゃんのこと可愛いって言ってたよ】


 な、何勝手なこと、黙ってて聞いてりゃ好き勝手言って、そんなこと言ってないじゃん。


【りな、俺もう行けるよ】


【解った、すぐ行く】


【りなちゃん、はるとよろしくね】


【はーい、ごちそうさまでした】


 大慌てで、りなが走ってきて、玄関へ。そんなに慌てなくても間に合うと思うけどな。


【はると、おまたせー、あっ!】


【危ない!】


 りなが足元の新聞の束につまづき、転びそうに、慌ててキャッチ。抱きかかえるように…


【りな、大丈夫?】


【うん、ありがとう、はると】


 母が飛び出してきて、二人を見てニヤニヤして、

ふーんと何かを察した表情で、


【朝からラブラブですねー、お二人さん】


【何でこんなとこに新聞の…りなが転びそうだったぞ。危ないなー、もう】


【わたしが足元見てなかったから…おばさん、これ出してくるね】


【りなちゃん、ごめんねー、はるとをよろしくね。あのさーはると!、女の子にそんな重いの持たさないで、はるとが持って出してきて】


【解ったよ、りな、行こう】


………………………………………………………………………なんで、りな、ニヤけて……………………


【どうかした?りな】


【はるとに抱きしめられた…ふふっ】


【なんだよ、それ。転ばないようにしただけ…】


【そういうのが嬉しいの!!!】


【………それなら、良かったね……解らないけど】


【はると、やっぱ男だね。筋肉ついてるね】


【そんなこと考えてたの?へんなの…】


【ドキッとしちゃった…不覚にもね】


【りな、それおかしいぞ。人に言うなよ】


 それから二人して、満員電車で、さきさんの職場に、というのか研究所に到着。


【りな、さきさんってきつい感じだから、ちょっと苦手なんだよな、俺】


【そう?きれいな人だとは聞いてたけど…】


【きれいな人には違いないけどね…この待ってる時間もプレッシャー…ダメ出しいろいろ言われるよ】


【そんな、何もまだしてないじゃん、マイナス思考…みさ、昨日から必死になってるからさ。助けると思って】


【解ったよ…早く戻れるように頑張れるよ。みさみたいに優しいといいんだけどさ…】


【………】


【どうした?りな、何かあった?】


【………】


【あっ、さきさんと会うので、緊張してるんだな、解るよ。たぶん会ったらきついの解るよ。きれいなのに勿体ないよね】


【………はると…えーと…】


【何?聞こえない。どうしたのさっきから】


………………………………………………………?


【は〜る〜と〜、きれいできついお姉さん登場!】


 ウゲッ!!、さきさんいつの間に。聞かれちゃった!

初日からやっちまった〜りな、フォロー頼む。


【はると、よろしくお願いしまーす。では】


 おいてかないで〜、ヤバい、とても仕事出来る雰囲気でないよ。助けて〜


【じゃ、きれいできついお姉さんについてきて!】


【ごめんなさい、そういう意味では無いんです】


【私のこときれいって思ってくれてるんでしょ?ならいいけどさ。きついは余計です】


【はい、反省いたしまする】


【何、その変な言葉…笑える】


 少しは和んだかな?もう、発言は控えよう…どこで誰が聞いてるか解らない。それにしても、りな、ふざけるなよ!教えろよな。あいつ。アイコンタクトなど方法あっただろうに。


【さっきの子、彼女?可愛いね。あんた意外とモテるんだね?みさも可愛いからね】


【二人共、さきさんほどではないです…】


【そんなお世辞いらない!この職場に可愛い子たくさんいるから、浮気しないようにね。私ほどじゃないけど】


【さきさん、凄く素敵ですもんね!】


【だからさ、いらないってそういうの!それにさっきから脚、見ながら話すなっての!】


【あっ、そんなつもりでは、すみません…】


【私、美脚だから仕方ないけどね、ふふっ】











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る