第10話 *ガチャガチャセンター 2*




 アリスはちょっと集まりが悪いな。と思うものの、表情には出さない。なにせ、告知なしで昼間の臨時配信だ。視聴者がついただけでも御の字だろう。


「コラボ配信ということで、あずみちゃんのチャンネルでも同じ画面を流してまーす。よければ、これを機にお気に入り登録してあげてね! よろしく! さぁ、ここであずみちゃんに自己紹介してもらいます!」


「えっ! えっ!?」


「ほら、軽くでいいから自己紹介して」


 アリスは、あずみの背中を軽く叩きながらマーチの眼前に押し出した。


「あ、あ。あずみと言います! この世界に来たばかりでよくわからないんですど! いろいろ勉強して頑張りたいと思います。よろしくお願いします!」


 ぺこりと頭を下げる。あずみは恥ずかしいのだろう、顔が真っ赤だった。


『かわいい〜』


『初々しいね〜』


『アリスちゃんは最初から、図太かったよね』


「あ、今のコメントゆんゆんさんだね。図太くて悪かったね! 初期から見ててくれてありがと!」


 コメントに返信しつつ、マーチのカメラをアバターの自販機に寄せる。


「今日はあずみちゃんのアバターを改造しようという配信です。どんなアバターにするのか、まずは自販機を見ていきましょう!」


 そういってアリスは自販機を操作していく。


 自販機には、単品購入からテーマ別一括購入、ランダム購入とカテゴリー分けされている。


 配信で人気があるのはランダム購入だ。いわゆるガチャ購入である。出てきたものを必ず装備してダンジョンに突っ込む。みたいな配信も人気があるが、今回は基本的な外見を決めるためのアバター購入だ。


「今日は、あずみちゃんを初期アバターから脱皮させようと思います!」


『脱皮wwwwww』


『かわいいの選んであげて』


「では、まずはテーマ別のカテゴリから選んでいきたいと思います。あずみちゃんの好みはある?」


「私は、その、地味な奴が……」


「ダメダメ! 地味なんてダメ。アバターは配信者の第一印象! 視聴してもらえるかどうかの最初のステップだよ! 地味だなんてそんなの自分からチャンスを捨てるようなことしちゃダメ」


「は、はい。でも、どうすれば」


「なんか、意見がないようなので僕が決めちゃおうと思います!」


『鬼がいるwwwwww』


『ファーーーー 勝手に選ぶとかwww』


『センスを見せて! アリスちゃん』


「はい。聞いたところによると、あずみちゃんJKなんだよね?」


「JK? ってなんですか」


「あー、まじめだね。女子高生って意味だよー」


『わかい! わかいよ!』


『JK キタコレ!!!!!』


「あ、はい。高校行ってました」


「じゃ、女子高生の制服から選ぼうか。あずみちゃん、慣れている服装の方がよさろう」


「……。おねがいします」


 アリスはカテゴリから制服、女子高生と選んでいく。


「何着か、試着してもらって反応の良かったアバターにしたいと思います!」


『おおお! 見たい!』


『セーラー! セーラー一択!』


『ブレザーもかわいいよね〜』


 アリスは、女子高生の制服一覧からぽんぽんと制服を選んでいく。


 自販機で選ぶと、対象者のアバターが自動的に切り替わる。そして気に入ったものに入金する仕組みだ。


 紺色セーラー服。


 白色セーラー服


 緑色のブレザー


 明るい青い色ブレザーと切り替えながら、視聴者たちのコメントから反応を確かめていく。


 どれも、反応がいい。


 しかし、あずみに似合っているからというよりも女子高生の制服のファッションショーだから盛り上がっているという様子だった。


 うーん。いまいち、インパクトにかけるな。これなら制服は諦めた方がいいだろうか? とアリスが思い始めたころ、選択したのは、リボンが豪華な紺色のブレザー姿だった。


『おおおお! 一番可愛い!』


『リボンが豪華でいいね!』


『赤のチェック柄のスカートかわいい』


 マーチが読み上げるコメント数が跳ね上がる。


「お、みんな、この制服気に入ってくれたかな?」


『可愛い!』


『いいと思う!!』


【ゆんゆんさんが2000ルクス課金しました】


【ゆいぴょんさんが500ルクス課金しました】


【まさひーさんが1500ルクス課金しました】


「みんな、ありがとう! 反応いいからこれにしまーす」


 といって、ありすは購入ボタンを押す。


 自販機の効果音がして、あずみのアバターに紺色の制服が固定された。


『アリスちゃん、購入の足しにして〜』


『小物は〜?』


「投げ銭、ありがとう。小物は次に見ていくねー」


 自分の姿を確認しているあずみにむかって、ありすは「次にいくよー」と声をかける。


「こ、これ、いくら、ですか」


「うーん。基本カテゴリから選んでいるから、高くはないよ。4万ルクスくらいじゃない」


「4万!」


 金額にびっくりしているあずみ。そんな反応にコメントの反応もいい。


『ういういしい〜』


『4万で驚いちゃうのか〜』


『もっとすごいアバターも買えるといいね!』


「はーい、続きいきまーす」


 アリスは自販機を操作してカテゴリを移動する。





***   ***




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