第6話 SSSギルド
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-時は現在に戻り……-
「ただいま……」
「あら。帰ったのねシン、お帰り」
僕達が異世界での自宅兼ギルドに戻ると一人の少女が広間の大階段中央に足を組んで出迎える。
「来てたんだ、セリカ」
「今日はお休みよ、暇だったから来てあげたわ。……別に会いたかったわけじゃないから!」
と、言いつつもこの一年間……僕達家族がギルドを創設し、大豪邸と呼べるような自宅をこの国の王様に譲り受けてからはセリカはほぼ毎日のように顔を出してくれている。
「『海底遺跡に眠る神の剣』の調査はどうだった? 首尾良くいったの?」
「うん……調査どころか見つけて持って帰ってきたよ……父さんが何の装備もなしで素潜りで海底一万メートルまで潜って……」
「……相変わらずあんたのお父さん……大木(たいぼく)さんは化物ね……それより、大丈夫? 風の噂で聞いたけど帰り路『封印の古代竜』達に会ったそうじゃない。ティタレントの町が襲撃されたって……」
「うん……思わぬ大イベントに遭遇しちゃったよ……いつも通り難なく皆が片付けたけど…」
「聞かなくてもわかってるわよそんなの。あんたは大丈夫だった?
って聞いたの。古代竜じゃあネームバリューは通じないものね……」
「うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
「べっ! 別に心配なんかしてないわよっ!!
あたしは弱っちいあんたが皆に迷惑かけなかったか心配したのっ!」
セリカはいつも通り冷たい眼差しを僕に向けながら顔を紅く染めた。
そう、一年前からセリカが案じている計策。
その一つが『絶対的な地位を築く事』。
騎士であるセリカが所属しているこの国……『メガパルト王国』、ここを起点として僕達家族は様々な功績をあげた。
最初は魔物の駆除から始まり……ならず者退治、未開地の開拓、危険度の高い遺跡などの調査、要人の護衛……全てにおいて、父さん達はその強さで要望以上の成果をあげた。
僕はというと……何もせずに見ていただけ。
魔物駆除の時も、賊を退治した時も……父さん達の戦闘の中心地にいて怯えながら澄ました顔を装って立っていただけ。
それなのに周囲でそれを見ていた人達は何故か勘違いをして……『きっとあの少年は更なる力を持っているに違いない』……と、僕に注目しはじめる。
そして冒険者ギルド『アース・オブ・ファミリー』を設立。
騎士であるセリカの立ち会い、提案でギルドマスターが僕【キヤマ・シン】であると大々的に国へ発表。
人々の勘違いは加速し……『あの家族よりも強い少年』という評価は各所へ伝わり……僕は絶対的な存在として崇められ恐れられはじめた。
ギルドとして活動を始めてからも父さん達はその絶対的な強さで様々な依頼を力ずくで解決へ導いた。
中には他国の超有名ギルドや国でさえ解決できなかった問題をも圧倒的パワーで一蹴した。
当然……その功績は世界中に伝わり、『アース・オブ・ファミリー』は世界初にして唯一の『SSS(トリプルエス)ギルド』に伸し上がる。
「そして……あんたはそのトップとしての虚像に守られた。今じゃあんた達家族に手を出そうとする命知らずの輩はそうそういない。これがあたしの練った計画よ! どう? 上手くいってるでしょ?」
「……確かに今じゃ僕を見ただけで大柄な山賊の人も逃げ出すほどだけどさ……全部嘘じゃないか……」
「嘘はついてないわよ。みんな勝手に勘違いしてるだけ、最強家族をまとめあげる存在としてあんたを勝手に恐れてるだけ」
「なんか……世界中を騙していて申し訳ない気持ちになってくるよ……それに家族みんなを利用しているみたいだし……」
「あんたは気にしなくていいの、これは全部あたしの発案。それに大木さん達も賛同してくれてるでしょ? 何より弱っちいあんたの命を守る事が大事なんだから……大木さん達がそれを理解してるかどうかは別として」
そう、僕が本当は弱い事を知ってるのは……現状この世界ではセリカしかいない。
家族みんなには全部事情も計画の事も話したんだけど……みんなはたぶんあんま理解していない。
母さんや姉さんなんかは未だにここが海外で引っ越してきただけだって勘違いしてるし……父さんは筋肉を鍛えるのに余念がないし……唯一ファンタジー世界に理解のある中二病の妹だけは話を理解してくれたけどーー
『ふふ……成程……つまりは偉大なる君(あに)の還(かえ)るべき地に我等もその眷族(しもべ)として喚(よ)び出されたという事……やはり我が愛しの君(あに)と我は【前世なる約束】の隷属なる契約にて結ばれし……』
ーーって話を余計にややこしくしてくるし……更には『僕にはまだ顕現されていない絶対的な異能(ちから)がある』と皆に触れ回って信じ込ませるし……。
そのおかげか、そうでないのか……家族は全員僕が弱いって事をまったく信じていない。
いや、強かろうが弱かろうがまったく関係ないといった感じで僕に少しでも危機が及ぼうとすると……すぐに駆けつけてきてやり過ぎなくらいに敵を殲滅する。
おかげでこの一年間、僕が負った傷はかすり傷程度の微々たるものしかなかった。
(普通なら父さん達の戦いの余波で死んじゃうだろうけど……それはこの『ギフトの恩恵(ボーナス)』のおかげかな……)
するとセリカがおもむろに両腕を前に広げ、僕を見つめてきた。
「それよりも……はい」
「……え?」
「え?じゃないわよ! 何回やり取りしたらわかるの!? 基礎能力値を見せるから!」
「あ、そうだったね。はい」
僕はセリカに抱き締められる、見てみるとセリカの耳は真っ赤で身体は震えていた。
一年前ーー初めて会った時は手を繋げば基礎能力値を僕にも見せれたはずなんだけど、何故か今では抱き締めないと出来ないらしい。
「……もぅ……いつまでも鈍感すぎるわね……一年もしてるのに……少しは気づきなさいよ……はい、いいわよ」
僕の視界にはセリカと僕の基礎能力値が表示される。
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◇【セリカ・ルィンミァリル】『LEVEL272』
・種族 ハーフエルフ 年齢 20歳
・クラス『騎士団長』
・HP 25363/25363 MP 1024/1024
・攻撃S 防御A 敏捷S 魔力A 精神A
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「あ、またレベル上がったんだね。おめでとう」
「あたしのことはいいの、それよりあんたは……」
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◇【樹山 森】『LEVEL 2』
・種族 ヒューマン 年齢 16歳
・クラス『2才児』レベル
・HP 92/92 MP 51/51
・攻撃E 防御E 敏捷E 魔力E 精神E
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「……」
「………」
依然として、僕は最弱のままだった。
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