VRゲーム

 ゲームは好きかしら? スマホゲーム、テレビゲーム、携帯ゲーム。自分がゲームの中にいる感覚になれるVRゲームとか好きかしら。ジャンルは? ホラーゲームはお好き? 私はホラーゲームが大好きなの。VRのホーラーゲームは最高に面白いわよ。そのゲームがちゃんとしたゲームならね。


 わたしの話を聞いてくれるかしら。わたしもよくゲームをするわ。ネットで配信されているゲームを買ってよく遊ぶのよ。私はいつものようにゲームをしようとしたとき、パソコンのデスクトップに見慣れないゲームが勝手に入っていたわ。アイコンは暗い森みたいだったかしら。怪しいと思って消そうとしたんだけど、ミスしたのかそのゲームを開いてしまったの。


 パソコンの画面がゲームで埋まったわ。見たところスタート画面は普通のだったの。怪しいウイルスには見えなかったわ。どうやらそのゲームはVR対応だったみたいで、ちょっとやってみようと思ったの。準備が完了したらニューゲームを押したわ。するとすぐに始まったの。


 暗い森の中に廃墟があったの。どうやらこの廃墟を探索するホラーゲームみたい。チュートリアルのウィンドウが出てきて『ゴールを目指してください』と出てきたわ。わたしは廃墟に入ったの。まぁ、簡単に言うと迷路だったわ。お化け屋敷に似ているかしら。私はそのまま何事もなく出口に出られたの。次のステージに進んだわ。ステージ2ね。最初の廃墟とは違ったけど、同様に迷路だったわ。


 わたしはこのゲームがホラーゲームに分類されていることが謎だと思ったの。確かに雰囲気はホラーぽいけど、特に怖い要素もなかったから。でもその心配はステージ3でなくなったわ。またウィンドウが出てきたわ。『ここから敵のでるエリアです。倒せません。見つからないようにしてください』って。わたしはやっとホラーらしくなったとわくわくしたわ。


 今度の廃墟は病院みたいだったわ。敵が出てくるとわかったからか、胸がドキドキしていたの。暗い病院の中を進んだわ。でもね、なにか不思議な感覚に陥ったの。わたし、本当に歩いているのよ。コツコツと靴で歩く感覚が足に伝わってくるの。わたしは部屋でゲームをしているはずなのに。もちろん部屋の中で靴は履かないわ。わたしは壁に手を当てたの。自分の手でざらざらと壁をなぞっている感触があるのよ。その時思ったわ。わたし、ゲームの中にいるんだって。でも頭につけたVRゴーグルの感覚だけは残っていたの。視界もゲーム画面のままよ。外したらどうなるのか。戻ってこれるのか。もしかしたらゲームの中に取り残されてしまうのではないかと思ったわ。


 そんなことを考えているときよ。ペタペタと足音が聞こえてきたの。背後から近づいてくるの。わたしは敵のことを思い出したわ。見つからないようにしなければと思って、病院の個室のドアを静かに開けて入ったわ。気づかれなかったみたいで、ペタペタと言う足音は一定のリズムのままだったの。どうして好奇心には勝てないのでしょうね。わたしは敵の姿を見てみたいと思ってしまったの。ペタペタと言う音がドアの前を通り過ぎた後、ドアを薄く開けて外の廊下を覗いたのよ。


 敵の姿はどんなだったと思う? モヤモヤした人影だったわ。影が廊下をうろついているの。拍子抜けよね。もっと恐ろしい化け物を想像していたのに。遠くに行ったからもう大丈夫とドアを開けて部屋を出たとき、ドアの閉まる音を響かせてしまったわ。遠くで聞こえてたペタペタと言う足音が止まったかと思うと、ものすごい速さで足音を立てながらこちらに近づいてきたわ。わたしは慌てて逃げたわ。でも向こうの方が早かったの。私は掴まってしまって、画面いっぱいに黒いもやが広がったわ。


 普通はここでゲームオーバの画面でも入るはずよね。でもずっと黒いまま。突然体に痛みを覚えたの、体をナイフでズサズサと刺されているような感覚よ。あまりの痛さで死ぬんじゃないかと思ったわ。わたしは意を決して頭のVRゴーグルをはずそうと手をかけたわ。でもその手は何者かに押さえられてしまったの。その間にも体の痛みは続いたわ。ずっと刺されている感覚があるの。わたしは暴れながらなんとかVRゴーグルを外すことに成功したの。


 外した後の世界は、私の部屋だった。あんなに痛かった体もなんともなかったわ。パソコンはスタート画面に戻っていたの。わたしはもう一度VRゴーグルを装着すると、またステージ1からになっていたの。あれから何度か挑戦しているけど、どうしてもステージ3がクリアできないわ。掴まれて刺される。その繰り返しよ。あのゲームのエンディングが気になってしょうがない。あと、あのまま刺され続けたらどうなるのかもね。


 わたしにはこのゲームをクリアする力がないみたい。ねえ、あなたならできそうな気がするわ。ねえ、今度家に来てよ。一緒に遊びましょう。エンディングを一緒に見ましょうよ。

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