第5話 死の淵に立つ少女



気がつくと私は屋敷の縁側えんがわに座っていた

黒髪の女性が私の目の前に立っている。

青白い月明かりに黒髪が照らされて、綺麗だな。と思った。


「今夜は月が綺麗ね」


黒髪の女性がゆったりとした口調で、欠けていない月を見上げながら言った。


「私満月が好きなの、満月って夜の太陽って感じがして素敵じゃない?」


黒髪の女性が月を見上げるのを止め、私を見る。


なぜか女性の顔だけがもやがかかっているかのように見えない。


不思議な感覚だ。


「ありゃりゃ、もう時間みたいだね」


女性の白い手が伸びてきて私の頬を撫でる


「こはく、頑張ってね。私はいつもあなたの事を見守っているわ。」






そこで目が覚めた。夢だった、というのが分かるまで、少しかかった。

頬に水がつたう感覚がする。どうやら私は泣いていたらしい。


それからしばらく特に何をするでもなくぼうっとしていた、徐々に寝ぼけていた頭が冴えてきて自室のベットに寝かされていた事に気がついた。

誰かが私をベットに運んでくれたのだろう、あとでお礼を言わなくては





と、思ったのと同時にぎしっぎしっという床がきしむ音が廊下から微かに聞こえてきた。



───────ぎしっぎシッギシッ


床がきしむ音がどんどん大きくなる


ギシッギシッ...


床がきしむ音が止まった。私の部屋の前で。




私はブランケットを頭まで被り、息をひそめた

まるで、かくれんぼをする子供のように




バンッバンバンッ


誰かがドアを叩いている。




全身の血が冷えわたって、動悸が高まる。恐怖が激しく胸の中で蠕動ぜんどうする



バンッバン......


ドアを叩く音が止まった。ブランケットから少し顔を出し、ドアの方の様子を伺う。

閉まっていたはずのドアが開いていた、だがドアの近くには誰もいない


『なんで、誰もいなっ...』



私は言葉を言い終わることができなかった、首に誰かの手が触れる感覚がしてびっくりしたからだ。



その直後、首がまる感覚がして、体がちゅうに浮いた


『ぐっ...ゔ...はぁっ』


ギリギリと首を絞めつけられる、息を吸ったり吐いたりしようとするが気道が絞められていて、息をすることができない。



─────苦しい。息ができない。



そう思った瞬間、私の首を絞め上げている黒髪で目が充血した女がえた。


その女が人間でないことはすぐにわかった。肌の色がむらさき色だったからだ


「あかり...あかり...あかりぃっ」


「よくも私をあんな目に合わせてくれたなぁ...っ!殺す、殺してやる!」


首をめる力が強くなる。目の前がすーっとくらくなっていく。




──────あぁ、これ死ぬな。


そう思った瞬間、体の中の血液が逆流ぎゃくりゅうするかのような感覚がして体が熱くなった。




私の首を掴んでいた女の肩と腕が


……バキッメキメキメキッ!!


音を立てながら、ねじれた



「あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙!゙!゙」


女が悲痛ひつうな叫び声を上げ、私から手を離した。


『ゲホッゲホッ…ゔ…はぁーっ』


やっと、酸素を肺いっぱいに吸うことができた




女が苦しんでいる今の内に逃げないと、そう思い。立ち上がりドアに向かって歩く。が酸素がまだ脳にしっかりいきとどいていなかったため、ふらつく。


「おのれっ、このクソ女!また私をぉ!殺してやる!」



女の捻れた肩と腕が元通りになる。女の手が私に向かって伸びてくる





「‪”‬ばく”‬」



女の手が私に触れる寸前で止まった。


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