第47話

『ここは、アンケとるしかねえな』


「あんけ? なにそれ」


アンケート、初めてコメントに募るけど大丈夫かな。

たしか、コメント機能に4択までのアンケートがとれるはず。


『みんな、これ見える?』


そう言って、私はフォーマットを用意した。

そこには固定メッセージで『隻眼のモールについていく』『隻眼のモールをギルドに突き出す』という文字が表示された。ここでみんなが投票できるというわけだ。


「それで、なにしてるの?」


『見てくれてる人に、投票集めてんの。それで私の行動を決める。正直、私はこの世界の人間じゃないしどっちの言葉に整合性があるかなんてわかんない。だから、みんながより面白そうと思う方につく』


「他人の評価でしか自分の道を選べねえ奴に、俺は負けたってわけか。とんだお笑いだぜ」


モールは皮肉な笑みをうかべて笑うも、私は特に気にしない。

こっちもモールに笑みで返すと、彼は目をそらし始めた。

しばらくすると、アンケート結果が出たときのお知らせ音声が鳴った。


『お、結果でた。なになに......。お、よかったね。あんたについていく方に傾いたよ』


「茶番が済んだならどっちでも構いやしない。なら、さっさとついて来い」


そう言って、彼はしっぽを見せた。私たちも彼の後を追った。

数十キロ歩いていくと、村はずれの一軒家が見えた。もしかして、これが彼のアジト?


「これが君の家?」


モールの家の中は、質素で盗賊しているとはいえないくらい貧乏そうなものだった。

きょとんとしていると、彼は手招きしてドアをそそくさと閉める。


「アジト、って言った方がいいか? まあいい。適当にしてくれ」


『それで、あんたが手配書に載ってるわけを教えてくれる?』


「まあ、座りな嬢ちゃん。日は長い」


そう言うと、彼は丸椅子に座り始めた。

そして、その隣に適当に並んでいる椅子を指さした。


『嬢ちゃんじゃなくて、ダンジョンビキニアーマー配信無双』


クタクタになっていたので、少し不満だったけど彼の言う通りに座った。

イェラも警戒しつつもその椅子に座った。


「なんだそら、変わった名前だな。覚えれねえ、却下だ」


『却下ってなによ......。そ・れ・で・私の質問、答えてくれる?』


「俺が指名手配されてんのは、邪龍の配下と交戦したからだ。あのギルドは、すでに邪龍の手先だらけだぜ」


『その、邪龍って』


「待った」


モールは私の顔の前に手を伸ばして、私の質問を妨げた。


『なに?』


「嬢ちゃんばかり質問すんじゃねえ。今度は俺からだ。嬢ちゃんはどこから来た?」


これ、質問に答えないと私の質問に答えてくれないタイプだろうな......。


『......日本、だけど。それがなに?』


「日本か。アニメしか取り柄がない島国だったか?」


『どこ情報よ。てか、島国ってよく知ってるわね』


「それで、その浮いてるのはドローンだっけか。そんで、その向こう側にはお前を見てる傍観者ってやつか」


『傍観者じゃなくて、視聴者。私の大事なファンなんだけど?』


【ころころころね】『そうだ、そうだ!』

【ドエロ将校】『よういうた。』

【紅蓮の刃】『言えたじゃねえか......』


「んなこたどうでもいい。それで、そいつらと交信はできてるんだよな? おーい!  聞いてるかぁ? オレの事見えてるか?」


隻眼のモールは自分の顔をずいとドローンのカメラに近づけた。

さらにはドローンを小突いたり、噛みくだこうと口を開けようとした。


【ジョニー・チップ】『ぎゃああああ!!!』

【ふるいにかける】『食べないでください~~!!』

【ドエロ将校】『新しい性癖に目覚めた。ありがとう』

【紅蓮の刃】『こいつ、性に従順すぎるだろ』


『見えてるし、聞こえてるみたいよ......。コメント見てみる?』


そう言って私は左腕に着けてあった機器を取り外して机に置いた。おかれた機器は、映写機のような役割に変形して、コメントを映し出した。もちろん、そのコメントは私のイヤホンに聞こえてるものだ。


「おお! すごい! やあ、ニンゲン達~!」


「よし、聞こえてるなら話は早い。お前達、ネクロマンサーって単語に覚えないか?」


『ネクロマンサー?』


「ああ、邪龍の正体だよ」


え、なに? ネクロマンサー?

それって、前の管理人の? 彼って倒したはずじゃ......。


【元冒険者】『ファッ!?』

【酒バンバスピス】『ほえ?』

【ころころころね】『はい? 誰?』

【ドエロ将校】『以前の管理人の名前だっけ? 最も、噂程度のものだけど』


『大規模な記憶操作される前の管理人よね。でも、あいつがなんでここにいんのよ』


「それが、お前がここに来ていて帰ることのできない理由と繋がっていると俺は踏んでいる。だからお嬢ちゃんには俺が必要だってことも、わかるだろう?」


『確かに......。あくまで、それが本当ならって話だけどね。その話が本当って証拠、あるんでしょ? 探偵さん』


「残念ながら、確固たる証拠はない。だから、ここからは俺達は共同事業と行こうじゃないか。交渉成立か?」


『わかった。ここまで来たなら、あなたに賭けてみる。その目に、ウソは無さそうだし』


モールの手を握ろうとした瞬間、ドアが激しく叩かれる音がした。その後、ドアはぶち破られてしまった。土煙の中から、騎兵の恰好をした竜が3体入り込んできた。


「動くな、盗賊! 主様の反逆の罪で拘束する! そして、そこの一般竜と異世界人! 君たちも共謀の可能性がある。大人しくしてもらうぞ!」


『え、なになに??』


「うわあ!? け、警察? 僕たち何も悪い事してません! あと、この人も悪い事してないです! みんなも邪龍のことは知ってるはずだ! 彼が全部の黒幕なんだ! 話を聞いて!!」


「うるさい! 翼をもがれたいか!! それに、お前は勘違いをしている! 我々の主は、その邪龍様『ネグロニカ』様ご本人であると!」


「なんだって?」


私は、その言葉を聞いて爪を私の首に立てて威嚇する騎兵竜の腕を引っ張った。

そして自分の持っていた短剣を彼女の首元に当てる。


『相手を投降させるなら、まず武器を捨てさせなきゃ』


「人間の分際で! 我ら竜に勝てると思うな!!」


騎兵竜はそのまま翼で地面を打つと、私ごと浮き上がっていきそのまま形成が逆転した。


「武器の回収? そんなもの、不要だ。それ以上の力が我々にはあるからな。わかったら、私達の言うことを聞いてもらおうか......」


そう言って、騎兵竜たちは私たちを無理やり起こして荷車に乗せていった。

そして、イェラとモールには目隠しと口輪を、そして私には目隠しが着けられた。










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